11話 天使をナンパする奴はもれなく天誅でOK!!
「さぁ、貴方の報酬はどうするの??」
突然、私の部屋に入るや否や仁王立ちし、腕を組んでいた。
腕を組んでいるせいで、クロの特徴的で凶暴なものの位置が上がり絶望的な目になりながら、私は読みかけの本を閉じた。
「その~ 何というか......」
灯が少し申し訳けない顔をしていた。
「実は......あー その......なんですが......」
「どうしたの? やけに端切れが悪いわね」
「ーーーーださい」
「聴こえないよ?」
「友達の作り方を教えてください!!」
タコが茹で上がったように真っ赤な顔でこちらに向けながら灯が言った。
「友達って......貴方......」
クロがハニワのように口を開け、眼を丸くしながら、数秒フリーズしたと思ったら、うれし泣きしてきた。
「ついに、灯も人の道を歩む決心が出来なのね」
「ちょっと、酷くない!!?!!?」
「だって貴方、学園じゃ基本喋らず、話かけられてもうまく言葉が出ず、どもるじゃない。まぁ、灯が声を発しただけでクラスの男子が歓喜してるらしいし」
確かに......
何故か、話をしただけでクラスの同級生が歓喜し、何故か、休み時間になると他クラスの子が見に来るらしい。
「えぇ、そうですぅ~。 私はエリートぼっちです。コミュ障だぁし、仕方がないじゃない。どういう話をすればいいかわかないしーーでも、私だって皆と話がしたいんですぅ~」
「分かったわ!! 灯の社会復帰の第一歩だしね!」
「いや......そこまで言わなくてもいいんじゃない......」
「今週の日曜日、一緒に外に出るわよ!!」
そう言われ、学園の一個前の駅 近而駅に待ち合わせをした。
駅前近くの広場には、立派な噴水が設置さえており、日曜日ということで、親子連れやカップルなど、多くの人で賑わっていた。
噴水近くの長椅子に座りながら、携帯端末で時間を見つつ、待ち人が来るであろう方向へ視線を向けながら周りの風景を見て時間を潰していた。
平和だな......。
私としてはこの光景は非日常な感覚で、10年いたあの場所が私の日常だった。
研究所から抜けてもソドールの力を回収する怪盗行為をしていたため、ここにいる人達より中々、濃くて異常な生活を送っている。
でぇ、ここに待ち合わせした本人はいつ来るのだろうか......。携帯端末をいじっていると私の方に向かってくる影が迫ってきた。
顔を上げると私より少し年上の二人組の男性が声をかけてきた。
「ねぇー、ねぇー 君、暇?」
二人とも髪を染めていたり、ピアスをしていたりと派手な服装だった。
これって、俗に言うナンパね? 私、初めてされた......。
って、それもそうか 休日は基本家から出ないし、出ても家の周辺位しか歩かないし......。
「ごめんなさい。人を待っているので......」
「まぁまぁ、言わずにさ~ 一緒に遊ぼうよ!!」
中々、強引な人達らしく、腕を掴んできそうになった。
次の瞬間、男の腕を掴む手が見えた。
「ごめんなさいね!! 彼女は私の連れなの」
そこに居たのは眼鏡姿のクロだった。
クロは男の腕を掴みつつ、足を引っかけて転ばせた。間髪いれず、倒れた男の顔面に鋭い蹴りをした。
「まだ、やりますか??」
ニコニコしながら男に質問したクロの背中が少し危険なオーラが出ているみたいだった。
「すみませんでしたぁぁぁ」「ごめんなさいぃぃぃぃ」
男達は震えながら退散していった。
「遅い......どれだけ怖かったかクロに分かる?」
「ごめんごめん!!」
「待ち合わせがしたいって言うから待っていたのに」
「なんかデートぽくない??」
「女同士だけど......」
灯の言う通り、一緒に住んでいる灯とクロが何故、わざわざ待ち合わせをしたのか。
別に一緒に行けばいいんじゃないと思っていたが、クロ曰く「これも訓練の一環ね」らしい。
まず、私に人に慣れさせる所から始めると。
「こんな休日に可愛い子をほっとく男はいないし、貴方もどのように断るか見ていたけど、まだまだ、だったね。あんな、もやしどもより凶暴な奴と日夜過ごしているんだから撃退できると思ったのに」
「ち、違うし......。ちょっと、驚いただけだし......。てか、見てたんなら、もう少し早く来てほしかったんだけど......」
頬を膨らませながらクロに言った。
「さぁ、行くわよ!!」
呆気なく、無視された!?
腕を引っ張られながら街中に向かった。
そんなこんなで色々あった広場の人ごみの中にカメラをぶら下げながら
ーー2人を見る影が1つ。
駅と街のメインストリートに続くスクランブル交差点を歩いている私達
「今日のクロ、いつもより大分違うね??」
そう、今のクロはいつもの黒髪ではなく金髪の姿をしていた。
しかも、いつもの大人のクロではなく私と同じくらいの見た目に変わっていた。
着ている服もネイビー色のワンピースでシャツとスカートが組み合わせたようなドッキングタイプのワンピース。腰にはスカーフ風のベルトを身に着けており、スカートがひざ丈位の長さしかないため非常にエレガントな雰囲気な魅力を感じさせる。
「そう言う灯こそ似合っているわよ」
「これは、凛子さんに勧められて......」
ロングストレートの髪を揺らし、白のコンパスTにブラウン色のビスチェを重ねて着ており、フレアデニムスカートを履いていることで、大人っぽさと女性らしさが兼ね備えた装いになっている。
「そういえば、なんでここなの??」
「うんー ここはね、学園の生徒が休日でも良くくる場所でね。実は、灯と仲良くなりたいって言う子が多くてね。話しかけたいけど、灯さんみたいな高貴な方に話しかけるなんてそんな畏れ多い・罰当たりでって相談に良く乗るのよね。段々、噂が広まって休日には乗馬したり、ダンスレッスンなどのお嬢様教育を行っていることになっているらしいわよ。で、灯と同年齢に扮している私が仲良くおしゃべりしながら、ショッピングしたり、食事していたら、貴方への変な警戒心が解かれ、話しやすくなる作戦だよ」
灯も普通の女の子だとアピールさせるため。
2人はコーヒーショップで買ったコーヒーを持ちながら、
1時間位、ウィンドウショッピングしていると......
この街の象徴とも言える高層ビルの真下に人ごみが出来ていた。白を基調としており、表面はガラス張りになっており、屋上には巨大なアンテナがそびえ立っていた。
そんなビルをみんなひっきりなしに自分の携帯端末を上に向けて写真を撮っている。
そのビルの外側に上に向かって転がっている物体がいた。
あれって、ソドールよね??
ーーこんな真っ昼間に何をやっているんだか
周りの人がコンサート会場のように声が飛び交う中、小声で会話を続ける。
「貴方はサングラスで認識阻害してから現場に行って、私も後から向かうから」
クロのアドバイス通り、路地裏に向かった私はサングラスを装着し、認識阻害した。
幸運なことにこのパニックになっている人の群衆のおかげで、急に1人がいなくなっても、誰も見向きもしない。
路地裏に着いた私は、今日もバイタルが安定しているので【レッド】に変身した。
赤いコスチュームを纏いながら、【スパイダー】を装填し、起動。
路地裏の建物と建物の間を蜘蛛の糸で上りながらビルに向かった。
この【スパイダー】の糸はトリガーを引き続ければ、長く伸びていき、トリガーを外すと糸が銃口にしまうようになっている。
屋上に到着したレッドが見たのはアルマジロ型のソドールだった。
猫背のような態勢をしており特徴的なウロコ状の硬い鎧が頭部から尻尾、四肢などほぼ全身を覆っている姿をしていた。
「アルマジロって確か、夜行性じゃなかったけ?」
後ろから急に声がしたので、驚きながら振りかったソドールはこちらを見るなり
「なんだ、最近、噂になっている怪盗さんじゃないですか」
「せっかくの休日だったのに、貴方を見てしまった以上、やるべき事しないとね。貴方の成分頂くよ!!」
銃弾を撃って、前に進んでいった。
ソドールは体を丸めて防御態勢に入っていた。撃った銃弾が弾かれ足元近くに被弾した。
アルマジロはスペイン語で”武装した小さいもの”を意味する”armado”から由来されており、その名に相応しい頑丈なウロコを身に付けている。アルマジロの甲羅は銃弾をも跳ね返すとされており、私のクイーンズブラスターASKの銃弾も弾くとなると中々、骨が折る戦いになりそうね。
硬いのは頭からお尻にかけて覆う甲羅だけだと思うのでひるませて防御を解除した所の銃弾の雨を降らせる。
だったら、接近するしかない。あの甲羅の防御力を低下させるには、今はこれしかない。
クィーンズブラスターASKに水青色の弾倉を装填した。
【シャーク】
トリガーを引き、私が右手に持っている裁紅の短剣の刃先から切先にかけて鮫の牙が現れた。
水色の牙に機械的なコーティングが施されており、3本ある牙は等間隔に離れており、つるはしの刃のような長さの見た目になっている。
No.47【シャーク】
武器付与系
3本とも大きな獲物を引きちぎれるほどに尖っており、へりののこぎり状でギザギザしている。歯は切先部分に位置しているのが一番長く、刃先開始部分は一番短い歯となっている。
歯の耐久性はあまりなく、切先の歯がする減ると自然に落ちていき、エスカレート式のように2番目が上に上がり、上がると同時に歯が成長し鋭い歯になる。刃先開始部分も新しい歯が誕生する。歯を抜いて相手目掛けてブーメランのように投げることが出来る。
甲羅の一部分を集中して狙えば、甲羅の防御力が低下し中身が出てくる。そこを撃つ。
狙いは首元の甲羅。釘を打つ感覚で何度も打ち続けていると中身が現れてきた。
「はぁ~ うそだろ!?!?」
「もらった!!」
「勝ちを急ぎすぎたね。怪盗さん」
「ーーえぇ!?」
私のうなじ部分に何かに掴まれている感覚が起こり、持ち上げられながら、宙に浮いていた。
辛うじて動かすことが出来る首を後ろを向くと、骸骨が右腕を伸ばしながら、左手には赤い傘を持っている状態で浮遊していた。




