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レッド・クイーンズ ~天織灯のあくまな怪盗生活~  作者: 麻莉
2章 6月 涙の暴雨、天舞う朱は侵界を祓う
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49話 明無心掴手 XIII むかしむかし

クロはミドリの過去を話した。

「ミドリ——緑の悪魔は、悪魔と天使との間に生まれたハーフ。大昔はそれぞれの種族で途方もない争うをしていた。些細なことから種の存続をかけたなど多岐に渡り戦争を行なわれた。それにより相手よりもより強力な力を欲したの。お互いが敵を捕まえその力を己の糧にしていった」


「どっちも生きるために……」


「そんな時にある悪魔が1体の天使と出会ったの……」

 悪魔——バデルはその戦争の前線を任され、部隊を率いる指導者。まだ若かったが非常に優秀な指導者だった。彼のお陰でこちら側の損害はあまりなく彼も大きな戦果を上げて軍の最高責任者に就任した。その地位になってから数年後。彼は森で鍛錬していた時に怪我をしていた者と出会う。


 彼は歩み寄り治療しようとしたが直感的にこの子が自分達が今戦っている天使だと気づいた。

「もしかして……その天使が」


「えぇ、その天使の名はラエス。治癒や浄化に長けた天使」

 彼女は手負い、バデルは剣の鍛錬中だったので剣と所持している。ここで殺すことだってできた。

「でも、バデルは殺すことを選ばずラエスを屋敷で治療することにした」


「そのラエスは治療ができるならすぐに治るんじゃない?」


「いくら治癒に秀でていても1人には限界があるわ」

 その時、行われていた戦争は非常に激化していた。ラエスは後衛から前線に出て戦闘中の味方に援護治癒していた。しかし、治癒や浄化に長け魔力も他の天使より多く保有している彼女でも魔力が尽きてしまい、森に逃げ込みバデルと出会った。


「バデルは使用人にやらせず自らラエスの治療を行なった。傷も治ってすぐにでも屋敷から逃げれるラエスだけどバデルと一緒にいることにした。そして、ミドリ——フィーネが誕生した」



 ラエスの身分を隠しながら3人は生活していたけど幸せだった。でも……2人は殺された」

 その時、悪魔側が劣勢で多くの悪魔が亡くなった。天使側に強力に()()()()()()()が誕生しその影響で戦況が変わる。バデルの領地も攻め込まれてフィーネを守るために2人は戦い、フィーネの前で亡くなった。



「その時にフィーネが悪魔と天使のハーフだと両陣営に知られる事になるけど、私がフィーネを引き取る形で事なきを終えた。時間が経ち、両陣営の戦争が終結」



「これまでの話だとミドリが憎む相手は悪魔と天使じゃない。人間は関係ないよ」


「……ここからよ。戦争が終結したけど、両者とも被害が甚大でね。種の繁栄が困難になった。そこで人間に協力を仰いだ」


 悪魔、天使が人間との契約し対価を頂く。時には人間との子を宿し主を存続させてきた。

 フィーネは人一倍に人間と接することにしていた。

「私にも心を開くことがなくて苦労していた。この人間との契約でフィーネは人間界に行き人間に寄り添う。私達の所にいたくない一心でね。そんな時に1人の巫女さんに出会った」


 巫女装束を着て、お淑やかさだと思い込んでいたけどそれとは真逆で活発なお転婆娘。そんな子から「一緒に暮らして」と契約を受けたフィーネ。初めこそフィーネは彼女に放り回されたけど、段々、フィーネも興味を持って彼女と仲良く暮らすことにした。


 そして、娘は突然死んだ……


 娘がいた村では雨が降ることが少なく作物が育たないことが続いた。日照りで壊滅寸前の村を救うには雨乞いの供物として神に少女を捧げる。その風習により、今回はフィーネが契約した娘が生贄になる場だった。

 崖から落ちた娘を見たフィーネは彼女に歩み寄る。自分が母から受け継いだ治癒の力なら助かると実行したが上手く行かずそのまま娘は息絶えてしまった。


 自分が関わる者全て消える。なら自分は……


 フィーネは部屋から1歩も出なくなった。私が部屋に入ってもお茶を出すだけ。後はただ黙って空を見ていた。

「そして、ルージュに誘われ、今その箱にいる……これがミドリの過去」


「……村は如何なったの?」

 私は恐る恐るクロに聞いた。


「聞かない方が良いよ……」

 クロはその一言しか言わなかった。


 私は自分の両頬を思いっきし叩いた。

「良し!! クロ、もう1回行く」


「……了解!」



 次の日。こんな眩しい光が外を照らしているにも関わらず、私は家に引き篭もっている。別にソロ生活に戻ったわけではない。学園が休校中にミドリと協力するために朝起きてすぐやったけど今回もダメでした。


「……灯、何やってるの?」

 すずちゃんが私の家に入って第一声がそれだった。

 私は皆が来る前に再度、ミドリの世界に入室したが軽くあしらわれる。突破口が見つからずリビングの机で項垂れていたのをすずちゃんが見つけ静かに扉を閉められた。その数分後、綾ちゃんが月音ゆみちゃんが私とすずちゃんの様子を見て入室してきた。


「……そうですか。友達の心を晴らす方法を探していると」

 月音ゆみちゃんに事情を説明する。流石にその友達が悪魔でなんて言えないか。

 因みにみんなが家に来たのは単純に遊びに来た。流石に何日も友達と会えないと気が滅入るということで私が誘った。


「これは私がやらないといけないこと。もう2度と自分のせいで閉じこもっている人を見たくないから」


 その言葉を聞いたすずちゃんが私の背中を強く叩く。

「いきなり何するの、すずちゃん……痛い」


 強く背中を叩かれたことで広がる痛みをかき消すために自分で背中をさすりながらすずちゃんを見ると。

「灯は1人で抱えることが多いのが君の癖。そういう時は周りを頼りなよ。1人で抱えても良いことないし。それに……私達、友達じゃん。時には友達を頼るのも悪いことじゃない」


「ありがとう。愛してる!!」


「いきなり抱きつくな! 暑い」


「そう言わずに抱かせてよ。てか、すずちゃんの髪、いい匂いするね。シャンプーとか変えたの?」


「べ、別にいいでしょう。そんなこと」



「ねぇ、綾ちゃん。天織さん、あれで無自覚なの?」


「そうだよ、こっちの気も知らないで。……如何しようかな」


 私は一旦、すずちゃんに離れ、月音ゆみちゃんに萌香もかさんの様子を聞く。

「あの……月音ゆみちゃん。お姉さん、元気ですか?」


「えっ!? えっと……元気だと思います」


 私達3人は頭の上にクエスチョンマークが飛び交っていた。その中で綾ちゃんが真っ先に声を出した。

「『思います』って萌香もかさん何かあったの?」


 月音ゆみちゃんは両手を左右に動かす。

「その……ここ数週間は朝一番に起きてすぐ家から出て行って、帰りは0時以降なんです。お母さんがお姉ちゃんに質問しても何も話さないし私にも話さないんです……。ただ、剣道やっていた時の目になっていました。格上の選手をどう倒すか試行錯誤して練習していた時の目。私は何度もそれを見てきたので何か新しいことに打ち込んでいると思っています」


「そっか……。不躾ですけど、お姉さんを見てあげてくれませんか。あと、話をしてあげてください」


「あ、はい……?」


 私の言葉の意味が分からず、どう反応した方が良いのか分からない月音ゆみちゃんだった。


 すずちゃんが誰よりも先に席に立ち、私がそれを追いかける。

「ほら、灯の部屋に行くよ」


「待って!! 部屋片付けてないから」


「おぉ!! お宝探しますか!!」


「そんな物ないからね……。聞いてる、すずちゃん」


「……私達も行こう。月音ゆみちゃん」


「うん。それにしても、すごい家だね——天織さんの家」


「家だけじゃなくて、メイドさんや灯ちゃんの叔母がいるけど、どっちも超美人だよ。多分、会ったらため息しかしないよ」


「そんなに!?」

 綾ちゃんと月音ゆみちゃんも私の後を追いかけた。


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