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七十二・優香の過激な愛と甦った鵺

 美香の卒業、十グループの修行の卒業、八百比丘尼の卒業が終わり数日が過ぎた。


 優香と語り明かした朝、霊酒を飲んでいるから風邪は引かなかったが、低体温症になり倒れた、不老不死なのでこれくらいでは死なないが、千尋と優香に介抱してもらい半日で回復していったが、一日寒気が取れず毛布にくるまり一日を過ごした。


「私が勝手に出て行ったせいだから」


 と言って昼間もずっと付いていてくれた。二日目には完全に復活した。復活した私は一日で分厚いステーキ八枚、ガーリックライスを十杯、大きなホールケーキ三つを食べ冷蔵庫を空にしてしまった。

 それでも食べたり無いのでラーメン屋でラーメンと餃子を六人前食べ回転寿司で食べ、クレープを三つとパフェを四つ食べた。


「見てるだけで気持ち悪くなるわ」


 と千尋と健治と千佳が言うので、私は優香の部屋で食べた、優香だけは離れず付き合ってくれた。

 三日目には普通の食生活に戻り、ゆっくり体を休めた。


「優斗ごめんなさい、もう家出はしないわ」

「私が悪かった、すまない」

「結界は千尋が嫌がってないかしら?」

「何も言ってなかったが、何であんなに何十にも結界を張ったんだ?」

「私のコレクションを優斗以外に見せたくないのです」

「私の写真や鱗の事か?」

「そうです私だけの物です、あの結界を破れるのは優斗しかいません、普通の人にはドアすら見えないです」

「そんなに大切にしてるのか?」

「私の宝物ですから、結界を張った私でも結界が解けなくなりました」

「そんなにも私が好きなのか?」

「頭がおかしくなりそうなほど好きです、愛してます、ネットで見れば私はストーカーみたいなものですが、髪の毛一本までも愛おしいほど愛してます、重いですか?」

「いや普通なら重すぎて耐えれない人も多いだろうが、私はそんな優香が好きだ」

「じゃあコレクションが増えても引いたり嫌ったりしませんか?」

「引かないし嫌わない、もう慣れたしな」

「では増やします、ありがとうございます」

「そのかわり、お前の日記を見せてくれ」

「ちょっとだけならいいです」

「後で見せてもらうよ、結界を壊そうか?」

「いえ、私と優斗だけの部屋です、そのままにしておいて下さい」

「わかった、千尋まで入れないのはちゃんと説明してやれよ」

「はい」

「じゃあ、出よう」

「わかりました」


 優香の日記を借りて、部屋から出ると優香は千尋を呼んだ。私も一緒に話を聞いた、千尋も真面目に聞いた、聞き終えると。


「何となくわかってたからいいけど、あなたはそれでもいいの?」

「私は慣れた、千尋が許せるならそのままにしてやってくれないか?」

「私は構わないわ、優香だから認めるけど異常性愛よね、私もこの人を愛しすぎて異常だとは自覚はしてるけどね」

「千尋もそんなに愛してるのに、いいのですか?」

「大丈夫よ、優香が納得できるまで続けていいわ」

「千尋ありがとう」

「今更この人を独り占めしようとは思ってないわ、優香の気が済むまでやりなさい」

「はい」

「この事は三人だけの秘密にしておくわ、あなたも借りた日記を早く返してあげなさい、心を覗いているのと同じだから」

「わかった」

「もうすぐ健治達も来るわ、とにかく優香が幸せなら私は口を挟まないわ、あなたもそれに応えてあげて、それと一応社会的には私が正妻で優香は妾だけど、優香も正妻だと思ってもいいわ」

「本当にいいのですか?」

「いいわ、これからこの人の妻だと思って行動しなさい、あなたもそう接してあげて、話はこれで終わりよ」

「わかりました」

「わかった、優香よかったな」

「はい、幸せ過ぎて死にそうです」


 二人はキッチンに行った、健治達もやって来た。


「みなさんお早うございます」

「おはよう」

「健治と千佳、今日から優香もあの人の妾じゃなく妻だと思ってあげて」

「何か事情がありそうですね、詳しくは聞きませんがわかりました」

「千佳もわかりました」

「健治って結構いいところあるわね」

「健治はお前らが思ってる以上に優秀だぞ、グループの指導を見せてやればよかったな」

「師匠褒めすぎですよ、師匠の真似をしてるだけです」

「真似だけであれほど人望は集めない、素質がある証拠だ、私にはあそこまで出来ない」

「ありがとうございます、ところでその手帳は何ですか?」

「優香の日記だ」

「いくら妻でも他人の日記は見ちゃ駄目ですよ」

「優香の許可は貰っている」

「それならいいですが」

「優香」

「今のはわかりませんでした、何ですか?」

「散髪してくれないか?」

「はい」

「あなたその長い髪、幽玄くらいまで切ったらどう? 似合いそうよ」

「私もそう思います」

「別にいいが」

「じゃあ切りましょう、千尋どのくらいがいいと思います?」

「そうね、幽玄より少し短めがいいんじゃないかしら」

「わかりました」

「適当にしてくれ、髪型に拘りはない」


 ビニールを敷いて椅子に座り髪が切られていく、千尋がチェックして指示を出す。

 暫くして終わったようだ。


「いいわね、結構短くなって似合ってるわ」

「優斗いい感じですわ」


 手鏡を覗いた、結構短くなったが特に違和感はない、十センチ以上短くなった。


「どうですか?」

「第三の目が隠れなければいい」


 優香は切った髪を集め大事そうに部屋に持って行った、髪まで集める気だ、私はソファーに座った。


「師匠似合ってます、その長さでいいと思います」

「千佳も似合ってると思います」

「四人がそういうなら暫くこれでいこう」


 肩までの中途半端な長さのせいか慣れていないだけなのか、髪が鬱陶しいが頭が軽くなった。


「優香」

「はい」


 おはぎとコーヒーが置かれた、髪の毛まで口に入る。


「千尋髪が短くなっていいが、髪の毛まで食べてしまう」

「慣れてないからよ、次はもう少し短くするから我慢して」

「優斗いいものがあります」


 優香が髪を束ねる黒のヘアゴムを持って来て、櫛で整え後ろで束ねてくれた。


「いい感じだありがとう、束ねるのもコツがいりそうだな」

「私がやります」

「じゃあ慣れるまで頼んだ」


 優香には身の回りの世話をしてもらった方が喜ぶので頼んでおいた。ついでに爪を切ろうと思い爪切りを探したがなかった。


「誰か爪切りを使いっぱなしにしてないか? 見つからないぞ」


 優香が爪切りを持って来た。


「お前が持ってたのか」

「切らせて下さい」

「ああ構わないぞ」

「あなた爪くらい自分で切りなさいよ」

「私が切りたいのです」

「じゃあいいわ」


 手足の爪を切って貰った。


「慣れてるな、ありがとう」

「また切らせて下さい」

「わかった」


 優香は切った爪も部屋に持って行った、爪なんか集めてどうするんだ? と思ったが好きなようにさせた。


「師匠、愛されてますね」

「これは想像以上だ」

「いいじゃないですか」

「健ちゃんも切って欲しいの?」

「いや俺はいい」


 私は優香の日記を読み始めた、私の事ばかり書いている、今日は何回声を掛けられたとか何回抱かれたとか何回キスしたとかだ、後は優斗が大好きとか、愛してるという文字で埋まっている、もっと身の回りのお世話がしたい、もっと尽くしたいが最近多く書かれていて、日を増すごとに内容は過激になっている、ハートマークがたくさん書かれていた。これは人に見せられないなと思い、優香に返した。


「引きました?」

「いやお前の愛がよくわかった、身の回りの世話がしたいなら好きにしろ、尽くしたいのも自由にしていい」

「ありがとうございます」

「あまり過激にならないようにな」

「はい」


 優香は恥ずかしそうに部屋に持ち帰った。


「優香」

「はい」


 シュークリームとコーヒーが並んだ。

 食べながら宝具に問いかけた。


『優香がまた家出する可能性は?』

『ないわね』

『優香が日記に書いてた事は本当か?』

『ええあなたしか見えてないの、好きなようにさせてあげて、優香の生きがいよ』

『コレクションが増えると言ってたが?』

『増えるけど引かないであげて』

『これからも愛され続けるのか?』

『そうよ、応えてあげて』

『千尋は焼いたりしないのか?』

『大丈夫よ』

『そうか』

『今夜鵺が蘇るわ、頭を調べてみて』

『わかった』


 シュークリームをたくさん食べ落ち着いたのでコーヒーを飲んだ。


「みんな今夜鵺が復活するぞ」

「やはり復活が早まっているんですね」

「そうみたいだ、十グループに任せるが無理なら健治と千佳に任せる、頭部は潰さないようにしてくれ調べたい事がある」

「わかりました」

「十グループに知らせてやってくれ」

「わかりました」


 暫くすると終わったようだ。


「みんなに伝えました」

「ありがとう」

「お茶の時間ですよ」


 コーヒーとロールケーキが出された。

 五人でお茶の時間を楽しんだ。


「コーヒータイムをもっと増やさないか?」

「私はいいわよ」

「私も構いません」

「俺達も賛成です」

「じゃあ午前は十時から、午後はどうしようか?」

「昼食の後に一回増やせばいんじゃない?」

「それで試してみよう」

「あなた髪型をもう一度見せて」


 私はヘアゴムを外した。


「やっぱり似合ってるわ、長髪が似合う男の人ってなかなかいないのよ」

「それならこの長さをキープしよう」

「では私は髪の長さを調整したりキープする術を教えますわ」

「便利な術だな、教えてくれ」

「私にも教えて」

「俺達にもお願いします」


 優香に簡単な術を教わり、私と千尋は長さをキープし、健治と千佳は少し短くした。


「優香ありがとう」

「便利ねありがとう」

「優香さんありがとうございます」

「優香千佳からもありがとう」

「どういたしまして」

「優香は生活関係の術が得意だな」

「長年生きてるとこういう技がないと不便なのです」

「そうかまた何かあれば教えてくれ」

「はい」

「師匠、鵺が出ました」

「わかった見に行こう」


 私達は装束を来て、十グループのいる場所へ行った、確かに鵺だ復活が早すぎる。

 十グループが戦っているのを観察した、なかなかいい連携プレーをしている、脱落する者も少なかったが、鵺が以前より凶暴になっている気がする。


 数人が気功斬を放った上手いこと当たり首と胴体と手足を切断し鵺が地上に落ちた。


「みんなやるじゃないか、見直したぞ」

「会長ありがとうございます」


 私は鵺の頭部を調べた、額に硬い金色の毛が一本刺さっている引き抜くと燃えて消えていった、玉藻前の妖力を少し感じた、これが刺さっていたから復活が早かったのだろう、皆に教えてやった。


「師匠十グループだけじゃなく全国にも教えてあげればどうです?」

「そうだな、早速思念を飛ばそう」


『全国の能力者達よ、私は龍人王はぐれ陰陽師の坂井優斗だ、最近倒した鵺が短期間で復活した、調べたら玉藻前の鋼のような金色の毛が額に刺さっていた、これのせいで復活が早くなったみたいだ、見つけたら抜いておいてくれ、すぐに燃え尽きる、以上だ』


 私は炎で鵺を塵にした。


「みんなこの調子で頑張ってくれ、私達は帰る」

「「ありがとうございます」」


 マンションに戻り着替えてお茶の続きをした、ロールケーキを食べて糖分を補充する。


「優斗、ケーキ類が傷んでしまうからどんどん食べて」

「わかった、今日の夕飯は私はケーキ類を食べる」

「わかりました」

「あなたが倒れるから痛むのが早くなったのよ」

「千尋それは私のせいです、優斗を責めないであげて下さい」

「わかったわ」

「私は毎食ケーキとかでもいいぞ」

「不老不死だし何を食べても構わないわ」

「でも栄養が偏ります、食事もちゃんと食べて下さい」

「わかったが、とりあえず今あるケーキ類がなくなるまで私はケーキでいい」

「わかりました」


 お茶の時間が終わったので宝具に聞いた。


『あの鋼のような金色の毛は玉藻前の体毛で間違いないか?』

『そうよ』

『鵺が凶暴化してるように見えたが?』

『体毛のせいかもしれないわ』

『体毛はどこから飛ばしている?』

『閻王が封印してる殺生石の妖気が体毛に変化したのよ』

『止める方法は?』

『優香の封印の能力が効くかもしれないわ、一時的にだけど』

『どれくらい持つ?』

『わからないわ』

『わかった行ってくる』


 会話を終えた。


「優香お前の封印の能力を使わせてくれ」

「はい構いませんが、何を封印するの?」

「殺生石だ、一時的に抑えられる」

「わかりました」

「じゃあ来てくれ」


 ゲートを抜け全員で殺生石の前に立つ。

 わずかな妖気が体毛を作っている、鉄扇で潰した。


「優香頼む」

「もう終わりました」

「ありがとう、帰ろう」


 マンションに戻った。


「夕飯にしましょう」


 みんなはオムライスで私はミニホールケーキだった、適当に自分で髪を束ねてケーキを食べた、食べ終えヘアゴムを外した。

「ヘアゴムはどこで売ってるんだ?」

「ドラッグストアで売ってるわ」

「買うのに付き合ってくれ」


 みんなでドラッグストアに行くと種類が豊富で、どれがいいのかわからないので優香に任せた。


「優香適当にえらんでくれ、出来ればシンプルで黒じゃない方がいい」

「はい」


 三つ入りのヘアゴムを優香が二つ選んだ、紺色と朱色だ、これでいいと言い買って帰った、どうせ自分では見えないから何でも良かった、一応自分で結べるように束ね方を教えて貰った、簡単だったが優香がやりたそうにしている。


「時間がある時は頼むよ」


 と言っておいた。

 コーヒータイムを楽しみ、ロールケーキも全部食べた。健治と千佳が帰ると三人で風呂に入った、また優香に頭と体を洗ってもらいスッキリして風呂から上がった。


 木の実を食べ、霊酒を飲んだ。

 暫くネットのニュース記事を読み、大きな事件はないのでブラウザを閉じた。

 優香の部屋を見に行くと、二つの瓶に私の切った髪と爪が並べてある。


「こんなの集めてどうするんだ?」

「引かないって言ってくれたので、コレクションです」

「まあいいが他人に見せるなよ、変な人に思われるぞ」

「だから結界を張ったのです」

「自覚はあるんだな?」

「あるけどやめられないのです」

「わかった、私も許可したし好きにしろ」

「はい、これも私の愛です」

「わかった」

「抱っこしてあげます」

「わかった」


 ベッドに入り抱っこしてもらい、胸に顔を埋め目を閉じた、優香の愛は少しズレてるが別に構わない、これも一種の愛だろうと思い眠りに付いた。


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