六十三・龍人王と龍王の鱗
大首を倒し風神雷神の喧嘩の仲裁をして数日が過ぎた。
その間に商談があり、かなりいい物件を三つ買い取った。優香と約束していたデートにも行き充実した日々だった。優香は遊園地に行きたいと言ったので遊園地でデートした、優香は初めての遊園地で興奮し、いろんな乗り物に興味を示し、かなり楽しんでくれたので、今度は動物園に行こうと誘っておいた。
優香の部屋には私とのツーショットの写真がたくさん並べられていて、一歩間違えればストーカーになりそうな感じだった、私以外誰も優香の部屋に入った事がないので、これは誰も知らないし私も言わなかった、とりあえず優香は一途だと言うことはわかった。
優香は物覚えもよく適応能力も優れているので、現代の普通の女と変わりはない、八百比丘尼という事さえ私でも忘れそうな感じだった。
千尋も私との写真を部屋に並べているが、優香程ではないこれが普通なんだと思う、千尋の男性恐怖症は、以前私の過去の改変の能力で治してやったが、私以外の男には全く興味を示さない、千尋も一途だった。
もう少しで盆休みと千尋の誕生日だ、忙しくなる前に龍神と一目連と大天狗に渡すための日本酒を買った。
「師匠、その酒はどうするんですか?」
「龍神と一目連と大天狗にお中元だ」
「付いて行ってもいいですか? 大天狗にしか会った事がないです」
「構わんぞ、みんなはどうする?」
「私は遠慮するわ」
「私もいいです、気に入られているのは優斗ですから」
「師範私は付いていきます」
「じゃあ今日は暇だから今から行くか」
「はい」
「じゃあ付いて来い、近いとこから回るぞ」
ゲートを抜け大天狗に会いに行った。
「坂井優斗か、噂は聞いているぞかなり力を付けたな、今日はどうした?」
「もうすぐお盆だ、忙しくなる前に少し早いがお中元の酒だ、受け取ってくれ」
「これはありがたい、遠慮なく貰っておこうじゃないか、お前は若いのにしっかりしておるな」
「いや、大したことはない、山を守ってくれてるしな」
「その二人の陰陽師は誰だ?」
「こいつは前に会わせただろう、一番弟子の健治だ、もう一人は二番弟子で健治の嫁の千佳だ」
「わしはお前以外の人間には興味はない」
「まあそう言うな、顔くらい覚えてやってくれ」
「わかった、健治と千佳だな?」
二人が丁寧に挨拶をした。
「じゃあ私達は他にも行くからまた来るよ」
「お前は化け物に知り合いが多いな、また来るといい」
「わかった」
次に青龍の湖に行った。
「青龍、起きてますか」
水面が膨れ上がり青龍が宙に浮いた。
「はぐれ陰陽師の坂井優斗、噂は全部聞いている、最強の能力者だな」
「大したことはないですよ」
「今日はどうした?」
「盆は忙しいから早いけどお中元だ」
「酒か、ありがたく貰っておこう、その二人はお前の弟子か?」
「そうです、健治と千佳です」
二人がまた丁寧に挨拶をした。
「覚えておこう、定められし五人よ」
「知ってたのですか?」
「私を誰だと思っている、これでも龍神の中でも三本の指に入る青龍だぞ」
「それは失礼したな」
「構わん、我は地位には興味などないし、お前には負ける」
「そんな大げさな」
「大げさではない、お前の能力はわかっておる」
「そうですか、では私達は失礼する」
「また来るといい、力を貸してやる」
「ありがとう」
最後に一目連の社に行った。
「一目連よ、いるのか?」
「私はここだ」
後ろに立っていた。
「お前は大した奴だな、噂は聞いている」
「大したことはしていない」
「お前にしか出来ない事だ、で今日はお中元なのか?」
「よくわかったな、盆は忙しいから先に持って来た」
「青龍からさっき聞いたからな酒は頂いておこう、その二人は初めて見るが弟子か?」
「ああ健治と千佳だ」
「そうか覚えておこう」
健治と千佳はまた丁寧に挨拶をした。
「定められし五人が揃ったか、私も風龍神として青龍と同じくいくらでも力を貸そう」
「ありがとう」
「と言ってもお前の方が力は強い、サポートしてやる」
「助かるよ」
「宮司が来そうだ私は社に戻る、また来るといい」
「わかった、私達も帰る」
マンションに戻った。
優香がアイスコーヒーを出してくれた。
「師匠、あんなに凄い龍神様二人と対等に話すなんて凄いですね」
「そうだな」
「しかも三人共、師匠の噂を知ってるなんて驚きました」
「噂は広まるのが早いからな」
「それにあんなに強い龍神様二人が師匠には負けると言ってましたね」
「神の能力を持ってしまったからな、それより健治少し落ち着け興奮するな」
「はい、すいません」
「師範は顔が広いですね、私緊張して挨拶しか出来ませんでした」
「千佳それでいい顔も覚えてもらったしな」
「ありがとうございます」
突然外の光が消えた、窓に見たことのない龍神がいた、金色の龍神だ。
青龍よりも更に低く響く声で話す。
「はぐれ陰陽師の坂井優斗よ、入ってもいいか?」
「どうぞ」
龍神の体が小さくなり部屋に入って来た、千尋と優香も私の側に来て座った。
「どちらの龍神様ですか?」
「我は龍王の天龍神だ、二番目に強い青龍と三番目に強い風龍神の一目連から話は聞いていたので顔を見に来た」
「龍王様でしたか、失礼しました」
「構わん、神の力を持った坂井優斗に我も力を貸そう、我だけではなく我が眷属の龍神全てがお前に従おう」
「龍王様もですか?」
「そうだ、坂井優斗の力はすでに我の力を超えている、我らは坂井優斗を主と認め家来になる、力の強い者に従うのは当然の事だ、これからは龍人王と名乗るといい」
「ありがとうございます」
「主よ敬語はいらぬ、普通に話せ」
「わかった、私に従うという事は玉藻前の討伐にも力を貸してくれるのか?」
「そのつもりだ、足手まといにならぬよう手助けをする」
「助かる、龍王はどこに住んでいるのだ?」
「我は天空にいて地上を見守っている」
「そうか、では私が今まで戦って来たのは全部知っているのだな?」
「全て見ていた」
「私はまだ全力を出して戦った事がない」
「見ていたので知っている、定められし五人が揃った今、我ら龍神一族は坂井優斗を主として従うそれを伝えに来ただけだ、我を呼びたければいつでも呼ぶといい、皆に龍神一族が手下になって龍王になった事を伝えるといい、我の力も授けよう、では今日は帰る」
「ちょっと待ってくれ、せっかくだこれを渡しておこう」
「酒か頂いておこう、では帰る」
龍王の姿が消えた。
「あなた、凄いわね龍王までも手下になったわ」
「優斗はこういう運命だったのでしょうね」
「師匠、龍王様が手下って凄いですね」
「師範、早速全国の能力者に伝えてはいかがですか?」
「そうだな」
「優斗、龍王様の鱗が一枚落ちてるわ、龍王様の力を授けるってこの事かしら?」
「どうだろうな? 金色の鱗か凄い力が宿っているな飾っておこうか?」
優香が拾い私に渡した、その瞬間鱗が手から体の中に入ってきた、腕が龍の体に変化していく、徐々に全身も龍の姿になった。
「あなた、龍に変身したわ大丈夫なの?」
「大丈夫だ、凄いパワーだ」
「優斗、戻れますか」
「ああ戻れる」
体が元に戻る、体の中を探ったが鱗はなかった、試しに腕だけ変身してみたら出来た、この手で気功波を撃ったら凄い事になりそうだ、腕を元に戻した。
「早速皆に教えよう」
私は全国の能力者に思念を送った。
『全国の能力者達よ、私ははぐれ陰陽師の坂井優斗だ、先程龍王が現れ、私は龍人王になった、龍神一族も私を主と認め家来になってくれた、私も龍に変身出来るようになった、心強い仲間が増えた。信じる信じないは皆に任せるが本当の事だ、以上だ』
「みんな信じるかしら?」
「信じるか信じないかは皆の自由だ」
『会長、皆さん今田です』
『どうした?』
『さっきのメッセージ受け取りました』
『ああ、本当の事だ』
『我々に会長の龍になった姿を見せてくれませんか?』
『別に構わないが』
『ではいつもの修行場所で待ってます』
「みんな聞いたか?」
「聞いたわ私達も行くわ」
「もうすぐ昼飯だ、ぱっと済ませよう」
ゲートを抜け十グループの前に出た。
「昼飯前だから、少しだけだぞ」
「はい、わかりました」
私は龍の姿になって空に浮かんだ、巨大な龍王と同じくらいの大きさだ、大きさは自由に変えれるみたいだ、縦横無尽に飛び回り、口から炎を吐いてみたら出来た、氷の息も吐けた、気功波も口から撃てた、もういいだろう龍の姿の方が力がでる。
地上に降りて元に戻り、腕だけ龍の姿にして軽く気功波を撃ってみたら山が三つ軽く崩れ去った。
皆が凄いとか流石会長とか言っている。
「これで信じてもらえたか?」
「信じてなかったわけではありません、見せて欲しかっただけです」
「じゃあ飯を食うから私は帰るぞ」
「会長今の映像も皆に伝えていいですか?」
「構わない好きにしろ」
マンションに戻り、昼飯を食った、食後のアイスコーヒーを飲んでると、思念が飛んで来た。
『全国の能力者よ、百鬼極楽の今田だ、先程はぐれ陰陽師の坂井優斗様の龍人王の姿を拝見した、今から映像を送るので見てみるといい、以上だ』
すぐに映像が流れた、数分で終わった。
右腕を龍に変化させ手を眺める、どう見ても龍の腕だ鱗も付いているがおかしい。
「優香、この龍の手に違和感はないか?」
「普通に龍の腕だと思いますが」
「他のみんなはどうだ?」
「師匠、俺も特におかしな点はないと思いますが」
「じゃあ私の気付いた点を言う、龍は三本指だが、私の手は五本指だおかしいと思わないか?」
「確かに五本ですがいいじゃありませんか」
「師匠そうですよ、指は多いほうが扱いやすいと思いますよ」
「そうかまあいいが、さっき部屋で龍になった時と外で龍になった時の変身の大きさの違いも気になる」
「わからないけどいいじゃない」
「私は部屋の大きさで変わるのかとおもいましたけど」
「そうか、宝具に聞いてみる」
『宝具今の話を聞いていたか?』
『聞いてたわ、五本指は元々五本指だから五本なの』
『じゃあ大きさが家の中と外で違うのは何でだ?』
『部屋の大きさによって変わるものなの、気にしない方がいいわ』
『適当だな』
『だって本当の事だもの』
『龍に変身した時に服が破れないのはどうしてだ?』
『服が体の一部になるからよ』
『わかったよ、話は終わりだ』
「宝具に聞いたら優香の言う通りだった」
「そうですか、宝具に聞けてよかったじゃありませんか」
「完全には納得はしてないが、まあいい」
「龍の姿でも第三の目は付いてましたね」
「そうなのか? 気付かなかった」
「俺も見ました」
「って事は龍の姿でも能力が全部使えると言うことだな、それならいい」
また思念が飛んで来た。
『龍人王、坂井優斗よ』
『誰だ?』
『青龍だ、我が主よ龍王が認めた以上我も主として従う』
『ああ頼むよ』
『私は一目連だ風龍神なのは知ってると思うが、私も主と認め従う』
『ありがとう』
『では主、私達からはこれだけだ』
『わかったよろしく頼む』
思念が切れた。
「あなた、青龍に一目連までって凄いわ」
「凄い事だ」
「流石優斗ですね」
「頭が混乱してるよ」
「いいじゃないですか、俺はびっくりしましたが」
「師範は仲間が多いですね」
「私も驚いたが仲間は多い方がいい」
「十五時のおやつにしましょうか?」
「甘い物がたくさん食べたい」
「いいものがあります」
みんなはシュークリームで私はミニホールケーキだった。
「こんなのが作れるなんて器用だな」
「作り方は同じなので簡単です、これなら満足してもらえると思います」
「ありがとういただくよ」
生クリームがたくさん使っていて、美味しかったし量もちょうどいい。
「優香これは私の腹にちょうどいい、美味かった」
「ではまた作っておきます」
「健治、少し修行に付き合ってくれ」
「はい、いいですよ」
「じゃあ、いつもの裏山に行こう」
「はい」
裏山に行くと私は龍に変身した。
「お前の気功波で体を撃ってくれ、手加減はしなくていい、不死の能力があるからな」
「わかりました、行きますよ」
健治が気功波を撃った、鱗に当たると弾き返した、痛みもない。
「もっと続けて撃ってくれ」
「わかりました」
健治の気功波が次々撃ち込まれる、全身で受けたが傷一つ付かない。
「師匠、全力で撃ちましたがどれも通用しません」
「では、剣で斬ってくれ」
「はい」
健治が何度もいろんな場所を斬りつけるが全部効かなかった。
「もういい、頑丈過ぎるな」
「ですね、傷さえ付きませんでした」
「次は紙にして千切ってみてくれ
「はい」
紙の姿に変えられ、健治が破こうとするがこれも効かなかった、私は気合を入れると健治の能力から元に戻った。
「次は燃やしたり凍らせたりしてくれ」
健治が炎を操り私を炎に包んだが、熱くない、効かないので気合で炎を消した、凍らされて氷にもされたが冷たくもない、気合で氷を砕いた。
「師匠、俺の能力がどれも通用しないなんて凄いです」
「凄い体になってしまったな」
近くの小さな山に炎を吐いてみた、木が焼けるだけかと思ったら土ごと溶かしてしまった、茨木童子の地獄の業火より遥かに上回る炎だ、今度は隣の山を凍らせた、尻尾で叩くと崩れ去った。もういいだろう十分だ。
これまで潰してきた山に、潰れた事はなかった事にして山を修復した、これでまた練習場所が元に戻った、やることがなくなった。
変身を解き、元に戻った。
「帰ろう、今日はこれでいい」
「はい」
瞬間移動でマンションに戻った。健治が凄かったとみんなに説明した。
「優斗、もう玉藻前が復活しても十分勝てると思いますわ」
「私もそう思うわ」
「私もそんな気がしてきているが、用心に越したことはない、玉藻前は千年以上前から何千人も殺して来た化け物だ、甘く見ると全滅の可能性もまだ十分にある」
「確かにそうですわね」
夕飯にカレーを食べて、木の実を食べ霊酒を飲み、コーヒータイムを楽しんだ。
話題は龍王の事だった、健治は龍についてネットで調べていたようだが、思ってた程情報が見つからずに断念したようだ。
二回目のミニホールケーキを食べ腹が膨れると満足した。
時間が過ぎ健治達が帰ると、私は優香と風呂に入った。入れ替わりで千尋が風呂から上がると、私は優香の部屋に入り抱いた。
満足したので優香のベッドで横になり、龍王の言葉や変身してパワーが上がった事を思い出しながら眠りに付いた。