何でもできるよ
神は男に言った。
「君は不慮の事故で死んだ。不憫だったので生き返らせてあげよう。ただし元の世界ではなく、別の世界で生きてもらう」
「別の世界? どんな所? 危険はあるの?」
「こちらと違って魔法や魔物が存在する。君がいた世界よりは危険だろうな。だけど安心するといい。君には望んだ能力をひとつ与えてあげよう。そうすれば異世界でも安心して生活できるはずだ」
「じゃあ何でもできるようにしてくれ」
神は男の言う通り何でもできる能力を与え、男を異世界へと送り出した。
だがしばらくすると男は死んで神の元に戻ってきた。
「どうした? 何があった?」
神が尋ねると男は沈痛な面持ちで答えた。
「自殺したんだ」
「それはまた一体どうして? 何か嫌なことがあったのかい?」
神が再度尋ねると、男は神妙に頷いた。
「せっかく何でもできるようになったのに、どうしてもう一度人生を歩まなければならないんだ?」