夢か現か偽りか
夢か現か偽りか
最近夢を見る。嫌な夢だ。何か狭い部屋にいて、女の人と男の人が泣いているのだ。
「泣かないで」
と言っても聞こえないようで、こちらを見ない。誰もいないときは少しホッとする。泣き顔を見なくて済むから。泣き顔を見るとすごく悲しい気分になるから。それを振り切るように私は目を覚ます。
「また変な夢見ちゃった。この世界には、私しか人間はいないのに……」
お父さんもお母さんも、もういなくなったし、他の人はみんな緑化人間だ皆光合成ができる。
私は起き上がり、友達と遊ぶ約束をしていたのを思い出す。顔を洗い、服を着替え、朝ご飯を食べ、歯を磨き、外に出る。そこには既に友達は来ていた。
「おはよう那美ちゃん。まだ緑化人間にならないの?」
そう、緑化人間には自分のタイミングで成れる。なった後はもう元には戻れないが、なるメリットの方が多いので皆緑化人間になったのだ。
「う~ん、なんかまだいいかな? って思っているんだ」
「そっか! で、今日は何して遊ぶ?」
「う~ん、皆呼んでドッチボールしよう!」
「いいね! そうしよう」
他の子を呼んでドッチボールを始める。けどこれは私が不利だった。皆手を尋常じゃないほど伸ばす。お腹にボールを当てても絡みついて地面に落ちない。けど私は楽しかった。私だけが素早く動いて、ボールをほぼ独占していたからだ。しかし、私が油断していると、頭にボールを当てられてしまった。そして私は……。
「先生! どうにかならないのですか!」
え、私そんな重症なの? ってこれは夢だ。いつもの夢だった。
「もう長くは……」
「那美ちゃんごめんね!」
気が付いたら私は木陰で休んでいた。間違えて顔にぶつけてしまった子が私に謝っている。私は
「大丈夫だよ」
そう答え、立ち上がる。ほかの子も私が立ち上がったのに安堵して、
「本当に何ともない?」
「うん」
「大丈夫?」
「大丈夫だって、皆心配性だな~」
少し変な空気が漂っているのがわかる。何か私に秘密をしている様なそんな感じだ。
「今日はもう解散しようか。じゃあね~」
そう言って私はなぜか逃げ出してしまった。
家に帰り、少し横になっていると眠気が突然襲ってきた。またあの夢見るのかな? 嫌だな……。そう思いながら。
「では、本当によろしいですね?」
「え、ええ」
またこの夢か……。そろそろ見飽きたな~早く終わらないかな~。
「では手術をしますね」
「……はい」
手術? 何をされるんだろう。まあいいやこれは夢だし。私は手術室に運び込まれ、麻酔を打たれたところで目を覚ました。
「な……どうし……の、へ……!」
声が聞こえる。目を覚ますと、私は木陰で寝ていた。……あれ? 私、家で寝たよね、ああ、そうか。やっぱり、そうなんだ。そう思い、周りを見渡すと、友達が皆がいた。
「ど、どうしたの? 皆」
「よかった……。気が付いて。お別れを言いに来たんだ」
「え? どういう事?」
分かっている。本当は分かっている。けど認めたくない。だから聞いてしまう。
「あなたはもうじき死んじゃうんだ。交通事故に遭った後、病院で目を覚まさないで……。私達はあなたの夢だから消えちゃう。だからさようなら」
解っていたはずだどっちが夢なのかどっちが現実なのかも。そこで私は目が覚めた。
「手術は成功です。娘さんはあの機械の中の世界で生き続けます。ですがこれは非公開の実験空間。国の特秘事項です。絶対に口外しないように」
「……はい」
私は木陰で目を覚ます。周りを見渡したが、何もない、誰もいない。けど私は分かるここが作られたデータの世界だと。