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第6話 弱き者と強き者

3000PV突破しました!

「ガハッ!」


 引き飛ばされ、木に衝突した衝撃で肺から強制的に空気が叩き出される。肋骨は何本か持って行っかれたようだし、意識も朦朧としている。HPは1%になり、『足掻き』レベル3(持続三十秒)が発動している。これで先ず三十秒分の余裕ができたと言える。だが、目の前の相手は残り三十秒でどうにかできる相手という訳ではない。

 これが己が慢心の結果・・・・駆け出しの町の付近のフィールドボス、初心者プレイヤーを一方的に狩れるからと高を括っていたのが傲慢だった。ここは()()()()()()()()()()()()だ。つまり、この世界は()()()()()。そして、この箱庭の世界の生物もまた()()()()()。ならば、誰が()()()()()と決めたのだろうか?誰が()()()()()と決めたのだろうか?

 愚かだった、このゲームを発売した企業はこう言っていたではないか。


β(ベータ)テストでは仮想世界の域を敢えて出させませんでした。しかし、この正規版『eternal fairy tale online』の世界は異世界です。即ちあの世界には()()()()()()()()()()()()し、この世界同様常に変化し続ける()()な世界なのです」


 目の前の圧倒的強者はそれを体現している。この様な場所では出てくることなどないであろう場違いな巨体。まずはこの状態から逃れ、一から自分を鍛えなおさなければならない。

 しかし、これから逃れるのは難しいな。俺は相手が足を振り上げるのを冷静に見ていた。


ズドォォォォォォォォォォン!!


―30分前―


「エリアボスは無理でもフィールドボスくらいなら討伐できるだろ」


エリアボスとフィールドボスの違いは縄張りを持っているかいないかである。エリアボスは縄張りを持っていてそのエリアに入ると戦闘になる。ここから一番近い場所にいると思われるのはβテスト時のグリール大森林南部エリアボス『オーガ』だ。対して、フィールドボスはその地域を徘徊する存在で、エリアボスよりも弱いが移動しているため見つけ辛い。このグリール大森林南部のフィールドボスは『ジャイアントボア』だ。ただ、発売から三日―ここでは既に九日経っているがまだどこのエリアボスとフィールドボスは見つかっていないらしい。

 そもそも、南部自体が人気が無い。ホーンラビットは始まりの町の周囲なら何処にでもいるし、ゴブリンに至っては実りが少なすぎる。唯一ボアという経験値稼ぎと資金稼ぎに適しているエネミーがいるが町の南門から出ていけるエリンの森にも出るし。決定的な理由としてこの森の先には人類勢力の町が存在しないのだ。この森を抜ければ山脈に当たり、その先は魔物たちの生活圏だ。しかも敵対種ばかり。


「取り敢えず、森の奥へゴーゴー!」


 移動は勿論、木の枝の上だ。理由としては『軽業』スキルを鍛えるためなのと、一応『隠密』スキルなどを持っているプレイヤーを警戒しているからだ。掲示板を見たが忍者呼ばわりされている奴はいないから、まだ、木の枝の上を生んだり跳ねたりするやつはいないと思う。下忍って職業はあるらしいけど。小人族ならいけるか?・・・まあ、どうでもいいか。


【『軽業』のレベルが上昇しました】

【『俊足』のレベルが上昇しました】


 おっと、『軽業』のついでに『俊足』までレベルアップしたか。これなら見つけるまでにそこそこスキルレベルが上がってるかも。うーん、『隠密』も使いながら移動しよう。


【『忍び足』のレベルが上昇しました】


 おお、『忍び足』も上がったか。そういえば、俺の種族レベルって特性抜きに上がりにくくね?レベルが一未満だった時も全然上がらなかったし。普通、俺くらいのランクの魔物プレイヤーなら自分よりもレベルの高い人類プレイヤーを倒せば、かなりレベルが上がるはずなんだけど。十倍されてても流石に五人倒して一レベルアップってのはなぁ。いくら何でも上がらな過ぎだろ。


「おっ、あいつは」


 森の中を流れる小川で水を飲んでいる現実の猪よりも一回り程大きな体。間違いないあれは『ボア』だ。


ボア Lv6


【『識別』のレベルが上昇しました】


 あー、そういえば全然『識別』使ってなかったわ。『隠密』を使って真上まで移動するか。まだ、浅いから魔物のレベルはこんなもんだよな。情報によるとフィールドの奥地には二桁台のエネミーも出るらしいけど。進化可能レベルになっても強制進化ってわけじゃないから最低ランクのままで強くないけどね。

 ボア君の真上に到着したら、ボア君目掛けて枝を蹴って加速し、落下する。首が間合いに入った瞬間『気斬|袈裟』を使用する。


「ブホォォォォォ!!」


 チッ、一撃じゃあ切り切れなかったか!


「だが、これで終わりだ!」


 ボアが怯んでいる隙に素早く納刀してから『気斬抜刀』を発動し、気をフルで使って首に向かって再び斬撃を叩き込んだ。


「ブ・・・・ゴボ・・・・」


【『刀術』のレベルが上昇しました】

【『軽業』のレベルが上昇しました】

【『暗殺術』のレベルが上昇しました】

【『自動HP回復』のレベルが上昇しました】


 ボアは倒れ伏し、痙攣している。それが止まるのをじっと待つ。うーん、リアルだ。本当にリアルだ。早く素材回収するか。あー、解体スキル的なの覚えた方が良いかな?まあ、今は良いか。よし、大体これくらいで素材は良いだろ。


 ギュルルルルルルル!!


「は、腹が減った・・・だと!?」


 隠しステータスに満腹度まであるのか!?いや、リアルを追及しているんだし、そりゃあるわな。だが、飯にするにもここら辺はプレイヤーもまだいるからな。プレイヤーのいないところまで移動してから食べるとしよう。ウサギ肉と猪肉どっちにしようか。まあ、それも移動し終わってから決めることだな

 それから俺はプレイヤーのいない方へ移動していった。ここにいるプレイヤーはあまり奥深くまで来ようとする奴はいないので必然的に森林の奥へと進むことになった。


【『軽業』のレベルが上昇しました】

【『隠密』のレベルが上昇しました】

【『忍び足』のレベルが上昇しました】

【『練気』のレベルが上昇しました】


「ここら辺が良いんじゃないか?」


 この場所は少しだけ森が開けており、小川も流れている。ここなら火を焚いても問題なさそうだ。ただ、問題があるとしたら・・・


「火をつける手段がねぇ」 


 俺は火属性魔法を覚えているわけではないし、火打石も持っていない。根性で火をつけるか。近くの木の細い枝と太い枝を切り、太い枝は板状に細い枝は真っ直ぐな棒になるように加工した。


【ノーマルスキル『木工』をを習得しました】


・木工:木に関する加工に補正を掛ける。この道を究めた者は世界樹の枝さえ加工して見せる。


 こんな簡単でいいのかお前!?まあ、作業は捗るだろうし問題ないけど。水分を飛ばしてないから火は着き辛いだろうけど、根性だ!!『気功』!!


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


ギュルルルルルルルルルル!!!!(棒の回転音)


 煙が立ってきたがここで止めるわけにはいかない。なんたって乾燥した草が無いのだからまだまだ根性だ!!


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


ギュラララララララララララララ!!!!!(棒の回転音)


【『根性』のレベルが上昇しました】

【ノーマルスキル『着火』を習得しました】


・着火:自力で火をつける技能。レベルが上がればどんな状況でも木の棒と板があれば火をつけることが出来る。実は火属性系統の魔法効果を上昇させる。


 ボッと音を立てて木の板が燃えた。よし、あとは小枝をやって火の大きさを大きくして。うん、これくらい火が強ければ肉も焼けるだろ。


「ここはウサギ肉だな」


 ウサギ肉を木の枝で作った串に刺し焼いていく。肉の焼けるいい音を聞きながら周りの警戒を怠らない。何故だか知らないがゴブリンたちもあまりこちらの方に来ていない。まあ、その理由は食べてから考えればいいだろう。俺は焼けた肉に齧り付いた。


「・・・・微妙」


 ウサギ肉の味がする、ダダそれだけだ。そう、料理をおいしくするために必要なものが足りていない。それは調味料だ!だが、今のところ町に入れない俺では手に入れることはできないものだ。


「いつか絶対に調味料を手に入れてやる!!」


 そう決意した時、ものすごい速さでこちらに接近してくる異常なほど大きな気配が『気配察知』の範囲に入った。


「やっべ!」


ズドドドドドドドドドドドドドン


 一直線に抉られている地面、なぎ倒される木々。その泥で濁る水。そして何より


【フィールドボス『グランドボア』に遭遇しました】


 フィールドボスとの遭遇を告げるアナウンスが俺に衝撃を伝えた。『グランドボア』だと!?『ジャイアントボア』じゃないのか!?それにこの威力は情報にあった『ジャイアントボア』何かよりも高い!ジャイアントボアはボアの三倍ほどの大きさがあるのに対し、このグランドボアは目算3.5倍はあり、数々の戦いを切り抜けてきた証のように全身に古傷の跡がある。


グランドボア Lv8


 βテスト時のボスとしてのジャイアントボアのレベルは20、となると信じたくないことだが進化したのか!?でも、何でそんなことが!?・・・いや、今はそんなことよりも攻撃だ!幸い、奴は俺に横腹を向けてる。これなら怯ませることくらいできるはずだ!

 俺は足に三、その他に一の割合で気で全身を強化し、グランドボアに駆け寄り『気斬抜刀』を叩き込む。


「シッ!」


 『気斬抜刀』を発動すると同時に腕への強化の割合を増やし、更には刀の気も圧縮して全力で切りつけた。


「なっ!」


 だが、その皮膚は極めて堅く、刀は途中で止まり傷も浅い。


「ブホオオオオオオオオオオオオ!!!」


「グハッ!」


 それでもグランドボアの癇に障ったのだろう。こちらに素早く頭を向け、驚きのあまり固まっている俺に向かって頭突きを繰り出してきた。それを受け俺の身体は宙を浮き、木を薙ぎ倒しながら吹き飛ぶ。




 そして、物語はこの話の冒頭に戻る。






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