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第11話 合流

お久しぶりです

 俺は薬草をもしゃもしゃと食べながら木々の枝から枝へと飛んでいた。流石にこれだけではスキルレベルが上がらなくなってきた。仕方がないと言えば仕方がないがラドゥと戦う前に出来るだけスキルレベルを上げておきたかった。三日も俺より先にやっているということは最低でもゲームの世界で一日はラドゥの方が活動している時間は長いはずだ。ゲームで二十四時間分差を付けられているのはあまり宜しいことではない。


 まず、あいつの種族を予測してみよう。ラドゥが活動しているのは恐らく不浄の沼地だ。となれば、その種族はアンデット系である可能性が高い。攻略ウェキによるとアンデット系モンスターは気配感知系スキルとは相性が悪いらしい。ただ、敵感知系スキルとは相性が凄まじく、何処にいるかまる分かりって・・・プレイヤー相手には意味が無いな。確か他の特徴としては、初期スキルとして『生命感知』スキルがセットされてるとか。まあ、設定上生者を妬んでいたり、生に対する執着がすごいってのが多いからあって当たり前のスキルってところかな。

 アンデッド系にしてもスケルトン系統は可能性としては微妙だな。スケルトンはゾンビと違って種族特性『光脆弱(極大)』が付いてるから、不浄の沼地ならともかく幾らグリール大森林が薄暗くても、いるだけでダメージを追うはずだ。というか、あっと言う間に死ぬ。その点ゾンビ系統は日差しに強い。ただし、動きが緩慢だ。それに腐ってるからスケルトン程といかなくても脆い。速度特化の俺にとってはカモみたいな種族だな。ゾンビ系統が良いなぁ。


 む、マップ的にはそろそろだな。どれどれ、気配は・・・無いな。となると、やっぱりアンデットで決まりだな。まだ来てないって線もあるが、彼奴の性格上自分から近いところを選ぶだろうし、それは無いだろう。魔力感知系スキルを手に入れられれば良かったんだが、消費スキルポイントが高いしな。やめておこう。


 そうして移動していると、少し開けた場所に出た。流石に木から降りるのは良くないな。周りを見回してみると古ぼけた全身鎧が右の方の木の根元に寄りかかる様に置かれている・・・全身鎧!?怪しい、怪しすぎる・・・!なんだ?何の意図でこんなものをここに置いたんだ?そもそも、古ぼけ、錆びているとはいえ、鉄製の全身鎧なんてリアルを追求するあまり、このゲームの初期の内では手が届きにくいって聞いたんだけど。しかも、近くにあった鉱山は魔物が住み着いて鉄が手に入りにくくて高騰しているはず。

 一回攻撃してみるか?そうなると、遠距離の攻撃手段が問題になって来るな。石なんて拾ってきてないしなぁ。となると、一回攻撃を当てて離脱する、ヒットアンドアウェイ戦法で行くしかないか?よし、出来るだけ音を立てないように鎧の真上に移動しよう。幸いなのはこの体が異常なまでに軽いことだな。そのおかげでしっかりと太い枝に飛び移れば、枝が揺れることは無い。一応、一旦開けた場所から離れ、大回りするように移動し、鎧の上にたどり着く。


 そこで少しだけ前のめりになり下の様子を確認する。鉄製だと思われる全身鎧は赤錆がいたるところにあり、大小様々な穴が十か所以上空いている。幹に背を預けるような格好の鎧の中は何も入っていないように見える。まあ、こんな状態だと日光を防ぐのには向いていないからな。少し気になるのは露骨に錆びてない鉄製の剣が横においておることだが・・・ん、これ背中に楯まで付いてる。こっちはぼろいな。

 罠の臭いがするが・・・虎穴に入らずんば虎子を得ず。やるしかないな。HP、氣力、問題なし。いける!木の枝から魔下へ落ちるように降下し、氣で手を覆うように刃を作る。それを鎧に振り下ろそうとし―、視界の端からかなりの速度で迫ってくる物体に気が付き、それに向かって『氣功斬』を発動する。


 キンッ!


「っ、クソがっ!」


 金属音が鳴り響き、反動で吹き飛ばされる。空中で体勢を整えて足が地面に触れると同時に跳躍し、木の枝の上に着地する。そして、自分を吹き飛ばした原因を確認する。それはがらんどうの鎧に持たれた長剣だった。中身のないはずの全身鎧は相も変わらずボロボロだが、その空いた穴、関節とバイザーの間からは黒い霧のようなものが漏れている。空の鎧だけで動くその姿はファンタジーの中でも有名なモンスター。


「『彷徨う鎧(リビング・アーマー)』」


〈合ってるって言えば合ってるし、合ってないといえば合ってないって言ったところだな〉


 脳内に直接響くような声、ただし、それは決して聞き覚えのないものではなく、ゲームの戦友のものだった。戦闘態勢を解かずにおんぼろ鎧に尋ねる。


「ラドゥか」


〈ああ、ラドゥだ。種族は『彷徨う錆びた鎧ラスティ・リビング・アーマー』―所謂、リビングアーマーの下位互換だな〉


「そんな種族聞いたこともないし、リビングアーマー系は初期選択種族になかったと記憶しているんだが?」


 そう、リビングアーマー系は初期種族にするには全体的にポテンシャルが高すぎるということで、吸血鬼系などと同様に初期選択種族からは外されているはずだ。


「まあ、ベータテストで頑張ったからな。得点ってやつだ。・・・それで、続けるか?」


 ラドゥを改めて眺め、戦闘態勢を解いて首を振る。そもそも、青紫鬼系統の進化には死なないことが前提としてあるようだし、ここで格上と戦って特殊進化できなくなるリスクを負う覚悟は無い。


「流石に格上の相手と戦うほど死にたがりじゃない」


「本当かよ?」


 なんでそんな視線を受けないといけねーんだよ。・・・心当たりは無くは無いが。確か、これと同じファンタジー系の奴で六人パーティーでフルレイドボスに挑んだよな。いやー、あの時は本当にダメかと思ったわ。

 おい、疑われる理由を思い出したんだからその呆れるような目線止めろよ。仕方ない、話題変えるか。


「・・・ゴッホン、取り敢えず今後の活動方針と活動範囲を決めようぜ」


「まあ、良いけどよ・・・俺的には活動範囲は不浄の沼地が良いな。あそこだと日が出ててもステータス下がらねぇし」


「へえ、下がるのに態々こんなところに集合したのかよ」


「まあ、ステータスが下がったとしてもお前如きに負けるようなヘマはしないからな」


「あ゛ぁ゛ん?」


「ぅんだよ?」


 くだらないガンの飛ばし合い、だが、途中で止めたら負けだ!それにしても、背丈が違うな。ラドゥが170cmくらいに対して俺はその半分程しか身長が無い。まさに子供と大人の睨み合いだ。睨み合いが続くこと数分。ラドゥが目を逸らし、右手で後頭部をかきむしる。


「・・・あー、止めだ止めだ!今のお前と睨み合ってると俺が子供をいじめてるみたいに見えるじゃねぇか!」


「ぐっ、何も言えねぇ」


 まさかゲームの中でも身長の事でとやかく言われることになろうとは、屈辱だ・・・!まあ、事実だし、受け入れるしかないな。


「それで、お前はどうなんだよ」


「俺としては不浄の沼地は遠慮したいな」


 不浄の沼地、瘴気が立ち込めている沼地でMINDが一未満だと瘴気酔いという異常状態になることがある程度で()()()()()()()()()()意味が無い。そう、普通のプレイヤーには意味が無いが、俺みたいな際物には絶大な効果をもたらすのだ。何で態々異常状態を受けに行かないといけないんだ。


「何でだ?」


「MINDが一未満なんだよ」


「・・・・・・マジで?」


「マジで。因みにSTRとAGI以外は一未満だ」


「・・・・・・・・・・・」


 ラドゥの表情は分からないはずなのに驚ているのが手に取るように分かった。文句は運営に行ってくれよな。





 

 


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