第9話 現実での日常①
夏休みに入ったというのにこんな連載スピードですみませんm(__)m
一万PV達成しました!!
チュンチュン、チュンチュンなどという可愛らしい鳥の囀りではなく、喧しいアラームの機械音が俺を眠りから覚まさせる。無論、起こしてくれた礼として目覚まし時計に拳を振り下ろす。物は大切にしなくては駄目だがついつい夜更かしをした次の日とかはこうしてしまうのだ。昨日はエタテルに関する調べごとをして夜遅くまで起きていたからな、致し方無し。
「ふわぁぁぁぁ、クソ眠い・・・。今日で夏休みに入るし、気張って学校行くか」
俺は寝間着から学校の青い制服に着替え、ネクタイを締める。まあ、夏服だから上着は無いが。とっと、飯食って学校行こう。
俺はまだ眠い目をこすりながら階段を降り、リビングへと入っていく。リビングに入ると台所に立つ人影が目に入り、俺の頭は急速に眠りから覚めた。
「おはよう、瑠衣姉」
「む、やっと起きたのか。おはよう、くーちゃん」
くーちゃん言うな!と心の中で抗議しておく。ただし、口には出さない。もし、口に出せば俺が地獄を見るだけで呼び方も変わらない。小学校高学年の時に三度、中学生の時に七度、彼女に挑んでいるが勝ったことはない。
彼女の名前は工藤 瑠衣、俺の従姉で大学二年生で、大学に近い家に居候している。瑠衣姉は文武両道の侍ガールで、得意な事は武道全般、苦手教科無しという完璧なリアルチート勢である。しかしながら、彼女の最も特出した特徴は可愛いのもの好きであり、ショタコンであるといったところであろう。そして俺は中学の頃にこう言われた。
-くーちゃん!そのまま合法ショタの道を行かなければ・・・私は君を許さない・・・・!-
因みに俺の今の身長は144.9cm、更に言うと瑠衣姉の身長は178.6である。・・・くっ、成長期よ、お前は本当に実在しているのか!?既に身長の伸びが止まりかけているんだが!?父さんの奴、何が『成長期が来れば背が伸びる』だ!この裏切り者め!!
「母さんは?」
「伯母さんなら今朝早く仕事に行ったぞ」
ふーん、さては今日暑くなると知って仕事を早く切り上げて帰ってくるつもりだな。父さんの方は病院で夜勤だったはずだからまだ帰ってきてないのか。
「それで俺の「俺の?」僕の朝ご飯は?」
「ああ、あともう少しだから待っていてくれ、くーちゃん」
あ、危なかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!まだ、寝ぼけていたということか!瑠衣姉の前で『俺』は現金なんだった!くっ、笑いたければ笑え!今まで六十回以上挑戦してきたが許しを受けたことはない!!
出て来た朝食をサクサク食べ終え、カバンを持って玄関へ行く。
「それじゃあ、行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
学校までは自転車で十分ほどだ。俺の通っている学校は偏差値もそこそこでこの夏の暑い日のためにも今の学校を選んだのだ!!
「おっす、九朗」
教室に着き、机でダラダラしていた俺に声をかけてくる憎らしい茶髪イケメン・・・じゃなくて、友人の水上 優斗。
「おっす、優斗。隈なんか作ってどうしたんだ?」
そう、このイケメンの目元にはくっきりと隈が残っているのだ。まあ、理由は大体想定できているが・・・。
理由を聞くと何やら気まずそうに目を逸らしながら答えが帰って来た。
「・・・あー、ちょっと夜更かししてな」
「『エタテル』だろ?別に気遣わなくていいぜ、俺も手に入れたしな」
「えっ?手に入れた?」
「うん」
「いつ?」
「昨日」
「どこで」
「自宅で」
「何を?」
「エタテル」
「そっか、そっか・・・ってハアアアアアアアアアァァァァァァァァァァア!!!!?????」
「おい、朝から五月蠅いぞ。ほら、周りの奴らが驚いてるだろ」
何て傍迷惑な奴だ。人の鼓膜をぶち抜くつもりなのか?常識のなっていない奴め。周りのクラスメイトが驚いてこっち見てんだろうが!
「いやいやいや、第二弾発売はまだまだ先だろ!?」
「ゲーム友達が二つ持ってたんだよ」
「うんじゃそりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ「朝からうるっさい!!」グベシ!!」
朝から五月蠅かった害獣に背後から容赦の無い正義の鉄拳が叩き込まれた。害獣もとい優斗はあまりの痛みに机から崩れ落ち、頭を押さえている。しかし、俺はそんなことも気にせず演技に入る。
「おはよう、穂香」
できるだけがさつに成らない様に挨拶をする。今、優斗に正義の鉄拳を叩き込んだ女子生徒の名前は藤堂 穂香。赤茶色の髪と瞳を持ち、髪型はポニーテイル。優斗と同じく俺の幼馴染にして瑠衣姉の密偵だ。そう、瑠衣姉の密偵なのだ。彼女曰く、『可愛いんだから背伸びするのはやめなさい』だそうだ。余計なお世話だ!!
「うん、おはよう」
「何するんだ穂香!?そんなんだからもt「あ゛ぁん」ナンデモアリマセン」
優斗、もっと頑張れよ!お前が全戦全敗しているからと言って諦めて良い訳がないだろう!!えっ?俺?俺ならそもそも言うようなヘマはしない。言ったなら最後まで責任を持って抗うべきだ。ただし、それで勝てるとは言っていない。
「まあまあ、それくらいにしてあげなよ。優斗が可哀想だよ?」
ここで子供のような無邪気な笑みで言うのがポイントだ。じゃないと、俺まで殺られる危険性がある。
「くー君がそういうなら・・・」
だから、くー君言うな!と心の中で叫ばせていただこう!心の中だけでな!!話は変わるが、俺と奴らの身長を改めて確認しておくとしよう。水上 優斗171.2cm未だ伸びしろあり、藤堂 穂香167.5cm未だ伸びしろあり・・・・俺144.9cm伸びしろ残り僅か・・・・・・世界は理不尽だ。今俺のことを救いの神のように見ているイケメンの顔面を殴り飛ばしたい・・・!
「それで、何をそんなに騒いでたの?」
「そうだった!穂香聞いてくれよ!こいつが『エタテル』ゲットしたって言うんだよ!!」
「・・・え?第二弾の発売って当分先じゃ」
「ゲーム友達から貰った」
「は、はあああああああああああ!!??」
「お前も結局叫んでんじゃねえか!?」
まったくもって同感である。だが、そんなことを口にすれば「うるっさいわねぇ!」「ぎゃあああああああ!!」おー、何と見事な関節技だ。尊敬に値しよう。それにしても優斗は学習しないなぁ。これで何度目だ?まあ、俺に実害が無いから良いけど。
「ねえ、何でそのゲーム友達は二つ何て持ってたの?」
「特には聞いてないな」
俺的には手に入れられればどうでもいい。あいつだって違法なことして手に入れたものじゃないんだろうし。
「気になんねぇのかよ・・・いや、お前はそういう奴か」
「あんたって相変わらずそういう所は適当ね」
「・・・悪かったな「ん?」ね!」
あ、危なかったー!威圧が半端じゃない。とても女子が放てるものだとは思えねぇ。それにしても、今日は調子が悪いぞ・・・まさか、ゲームで好き勝手やったせいか!?くっ、これが現在存在するゲームの中でもずば抜けて自由度の高い『エタテル』の弊害だとでもいうのか!?(※個人差がございます)
「まあいいや。ふふん、エタテル初心者の君に先輩である俺が情報を伝授してやろう!」
「いや、発売から三日しかたってないんだからあんたも大して変わらないでしょうが」
「僕的には優斗の持ってる情報は興味あるかな」
俺って人類敵対種だからなぁ。出来るだけ人類側プレイヤーの情報が欲しい。
「率直でよろしい!」
エタテルについての話はチャイムが鳴るまで続いた。なかなかに有益な情報を得られたと思う。クソ暑い中、体育館に行かないといけないとか、嫌だなぁ。と、担任の話を聞き流しつつ思った。終業式の日って大体皆こんなもんだろ?