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04話「運命神、信じたげるから俺にもう少し優しくしてくんない?」byM

 

 教室に入ると、みんな来るのが早いこと早いこと、既に男女別の二グループほどが登校していた。


「みんな、おはよう」


「あ、赤羽くんっ、おはよう!」


「おっ、入試トップ様じゃん。よろしくなぁ!」


 俺が挨拶をすると、嫌な顔どころかどこか嬉しそうに挨拶をかえしてくれる。


 この中に同じ中学出身の生徒は一人もいない。そもそもこのクラスには、天城さん含めて三人しかいなかったわけだけど。そのうちの一人は読書好きの大人しい女子だったし。


「おはよう〜」「お、おはようございますっ!」と続けて他のみんなも返してくれる。中学の頃ならばありえなかったことだ。


 俺は「赤羽」なので窓際の一番先頭だ。出席番号一番なのである。ちなみに二番は「あ」なので天城さんである。

 何だか無性に運命を呪いたくなってきた。


 表情には一切出さないように気を配りながら、俺は何故か合併した彼らの元へ向かった。


「何やってるの?」


「人狼ゲームだけど、知らない?」


「私それ知ってる〜! 知らないなら私と一緒にしようよっ! 初心者なら別に一緒でもいいよね?」


「俺たちは構わねぇぞ。そもそも一緒にやって有利になるゲームじゃねぇし」


 ―――む? 


 やはりカーストトップレベルの会話になると、気がついたら自分の知らないうちに話が進んでいた、なんてことは普通にあるようだ。


 人狼ゲームは有名なスマホゲームだ。

 高校デビューのためにありとあらゆるものに手を出した俺が知らないわけがない。それに、実際に遊んだことはないが、ポーカーフェイスには自信がある。


「ルールは知ってるし、対戦相手として参加した方が楽しそうだから一人でするよ。ゴメンね?」


「む〜、仕方ないなぁ〜」


「そんじゃ、やるぞー」


 この時はまだ、俺は自身がここまで強いとは知らなかった。


 そう、結果は圧勝である。

 人狼になれば食い殺し尽くし、他の役職につけば人狼をすぐに見つける。自分側が負けたのなど、適当に指名されて早々退場した数回ぐらいだった。


「ゲームも強いとか………あなたが神か」


「赤羽くんの表情分かりにくすぎっ! 絶対違うって思ってたのに人狼だったしーっ!!」


「ははっ、ポーカーフェイスには自信があったから」


 海外で知り合った笑ってはダメな二十四時間ゲームが大好きな友人と、まる三日間毎日夕飯をかけて勝負していたからな。この程度は余裕なのだ。


 そんなこんなで話しているうちに、他の生徒たちも学校に登校してきて、ホームルームの時間になった。

 席に戻る際、後ろの席である天城さんと一瞬目が合った。


「―――何?」


 少し不機嫌な様子だったが、大方昨日の新入生代表挨拶をとられたことを根に持っているのだろう。気にしないことにした。


「いや、別に。朝からそんな顔してると老けるよ」


「―――っ! あっそっ!!」


 ホントかどうかは知らんけど。



 ◆



 教室のドアを開けると、既に多くの生徒が登校していた。私は後ろから数えた方が早いかもしれない。


 その中でも特に目だっていたのは、やはり赤羽くんのいるグループだった。周りも遠巻きに彼らの方を見ている。

 コソッと私のところに話しに来てくれた子がいて、彼女曰く人狼ゲームとやらをしているらしい。なんでも、赤羽くんがとても強いんだとか。


「何やってんのよ………」


「赤羽くんってなんでもできるよね。中学の時からそうだったのかな?」


「さ、さぁ………夢川さんはゲームとかするの?」


「まあね。人狼ゲームはあんまりしたことないけど、スマホゲームはやってるよ〜。今度、天城さんにオススメのゲーム教えよっか?」


「本当? ありがとうっ!! 私のことは結衣って呼んでいいよ」


「なら私のことも咲って呼んでねっ!」


 何気に高校生になって初めての友達が出来た。

 嬉しくないわけがなかったが、必要以上に喜ぶと私のイメージが崩れるので、頬を綻ばせる程度に抑えておいた。


「これからよろしくねっ、ゆい!」


 この後、他の女子たちも我先にと次々に私のところに話しに来て、あっという間に朝休みの時間は終わりを告げた。

 ただ、赤羽くんがこちらを見向きもせずに、向こうでずっと遊んでいたのに無性に腹が立った。



 ―――私なんて眼中に無いってことですか?



 そんな自意識過剰ともいえることを思ってしまったわけだが、元カノの交友関係を全く気にしない彼にも少しは責があると思う。


 そう思って彼の方を見ていたせいか、彼が私の前の席に戻って来る時に一瞬だけ目が合ってしまった。

 咄嗟のことで、つい睨みつけてしまったのは、普段の彼の態度のせいだと思う。


「―――何?」


「いや、別に。朝からそんな顔してると老けるよ」


 彼は私のことなんて気にしていないようで、あっけらん顔でそう言った。


「―――っ! あっそっ!!」



 ―――そういうところが嫌なのよっ!!



 ◆



 今日はほとんど授業の進め方や、ノートのとり方、そして身体検査などだけで、本格的な授業があるのは明後日かららしい。明日までは午前中だけだ。

 クラスメイトたちは喜んでいたが、俺にとっては授業こそ見せ場となると考えていたので、少し残念に思っていたりする。


 ちなみに俺の身長は174cmで、クラスの男子の中でも真ん中より後ろだった。最も高かった後藤くんの身長は183cm。化け物だわ。


 さすがの俺も、身長に関してはどうこうすることはできなかった。まあ、今の身長でも十分に満足しているが。


「赤羽くん、午後って暇? 私たちカラオケ行くんだけど、一緒にどうかな?」


 「暇なわけねぇだろうがっ!」ってすごく言ってやりたい。


「丁度どうしようか考えていたところだったんだ。誘ってくれて嬉しいよ」


 ゼロ円スマイル精神で微笑みながら、俺はグループリア充の誘いを承諾した。

 もちろんカラオケに行った時のために練習はしており、90点は硬い。


「やったねっ! クラスの天才二人とも来るって〜」


「おっし! カラオケなら赤羽にも負けねぇ自信があるぜっ!」


 ははっ、面白いこと言うな。お前が毎回95点取れるなら負けるかもしんないけど。

 それでも同点の可能性は残っているが、少なくとも毎回勝つことはないと思う。



 ―――って、ん?



「天才二人って………?」


「あん? そんなんお前と天城さんに決まってるじゃん」


 カラオケには自信があると息巻いていた倉橋くんに「何言ってんの?」的な顔で返された俺の心情を理解できるだろうか?

 すなわち………



 ―――なんで呼んでんだよォおおおっ!?



 運命神、信じたげるから俺にもう少し優しくしてくんない?



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