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第七話 スキル取得

「なるほど、1週間で2本までのようですね」

「うん……」


 湿ったベッドの上で過ごすこと2週間。私はベアトリスの攻めに耐え、寵愛の鍵を3本手に入れた。1本は実験の時に。2本はそれから1週間後に。これでスキル解除権限は3つになったが、先を思うと素直に喜べなかった。


「ではレイ、スキルを解除していきましょう」

「しかし解除すると意識を失うんだろう? 気が進まないな……」


 丸一日をこの女の傍で寝て過ごすのは恐ろしい。先日も、今日は終わりと寝たはずだったのに気付けば強烈な刺激に起こされていた。ふざけすぎだろうと怒ったのだが、何故か仕返しを食らってベッドに沈められた。しかもいつの間にかレイ呼びだ。悔しいから私はベアトリスと呼んでいるが。


「でもレイ。私以外の人間の傍で丸一日、意識を失うリスクを考えた事ってありますか?」

「それは……ないけど」

「見ず知らずの人間の傍で無防備になるって、本当に怖いと思いますわ。もしかしたら、もう目が覚める事がないかもしれませんし」

「う……」


 それは……怖すぎる。いつの間にか町の外に放り出されてたりとかだったら……ゾッとする。それ以外なんて容易に想像出来るが、したくない。


「そう考えると、勇者の傍ってこの世で一番安全だと思うのですよ」

「一理ある……」

「でしょう? レイがスキルを全て解放するまでは私の傍が一番安全なのです。だから、積極的に解除していきましょう」

「そうだな……確かにそうだ」


 強くなれば此奴の傍に居なくてもいいからな。むしろ私一人で魔神を倒しに行ける。私を嘲笑った奴等に目に物見せる事も出来るんだ。今は雌伏の時……いつか此奴を超えて王都の人間を見返してやるんだ。


「はーちょっろ」

「何か言った?」

「いいえ? さ、どのスキルを解除しますか? レイ」


 んー、《身体操作》は解除済みだ。そういえば身体操作を解除するとステータスが勇者基準になるんだっけ。私はステータスカードを取り出して自身のステータスを確認することにした。



  ◇   ◇   ◇   ◇



名前:レイヴン=スフィアフィールド

種族:人間

職業:勇者

称号:勇者

LV:12

HP:2368/2368

MP:1870/1870

STR:450 VIT:430

AGI:408 DEX:411

INT:400  LUK:89

所持スキル:女神の寵愛(-),破魔の剣(-),剣術【天】(-),弓術【天】(-),拳術【天】(-),状態異常無効(-),環境変化無効(-),飢餓無効(-),限界突破(-),並列思考(-),思考加速(-),神速移動(-),無詠唱(-),未来予測(-),運命収束(-),障壁展開(-),立体機動(-),千里の神眼(-),透過の神眼(-),浄化の神眼(-),読解の神眼(-),超鑑定(-),自動回避(-),自動反撃(-),身体操作,寵愛の鍵(3)

所持魔法:光魔法【天】(-),雷魔法【天】,次元魔法【天】(-),無魔法【天】(-),精霊魔法【天】(-)

装備一覧:頭-なし

     体-なし

     腕-なし

     脚-なし

     足-なし

     武器-なし

     装飾-なし

備考:スキル解除権限(0)



  ◇   ◇   ◇   ◇



 改めて見てもやはり酷い。以前見た数字とは全然違う。本当に勇者という生き物は一般人から見れば化物だな……。


「本物の勇者か……」

「ふふ、まだまだ序の口ですよ、レイ。これからもっともっと強くなるんですから!」

「……だな。よし、じゃあまずは権限取得からだな……スキル発動、《寵愛の鍵》」


 先日と同じようにピンク色の魔法陣が展開する。今回は鍵3本分だからか、前より大きい。すぐに光の粒が集まり、鍵の召喚が始まる。おや、前回の鍵とは意匠が違うようだ。3本とも華美ではあるが、同じデザインではない。やはりこれはコレクションしたいな……。ベルトに繋いでジャラジャラしたい感ある。そういえば最初の鍵はどうしたんだっけ。確か鍵穴に挿して回したところまでは覚えてるが……。


「最初の鍵が何処か知らないか?」

「あぁ、それでしたら多分そうだろうなと思ってテーブルの上に置いてあります」

「それは助かる。結構デザインが好みだからコレクションしたいんだ」

「確かに綺麗で可愛らしいデザインですわね」


 ベアトリスが指さしたテーブルには小さな鍵が一つ、置いてあった。それを手に取り、眺める。これで4本。コレクションが増えた。


「おっと、今は新しい鍵だ。権限取得の為には鍵を回さないとな」

「私も見たいです」


 興味津々なベアトリスが私の背中に伸し掛かって覗き込む。重いと文句を言おうとしたが、ステータスが底上げされて体が丈夫になったからか、重さは感じなかった。ならいいか。怒るほどのことじゃない。


「この鍵穴に挿すんだ」

「ふむ……お話の通り、絵ですのね?」

「あぁ。でもこの鍵だけは入るんだ……ほら」

「あらまぁ、不思議ですわね……」


 ベアトリスが穴を細い指でなぞる。それを待ってから、3本のうちの1本を鍵穴に挿す。そして回してスキル解除権限を取得する。備考欄の権限がプラス1される。


「な?」

「なるほど……」


 ステータスカードを持ち上げてよく見えるようにしてやる。ベアトリスもよく見ようとギュッと体重を掛けてくる。以前の私なら畳まれていただろう……成長したなぁ。


 さて、スキル権限はプラスされた。多分、1つ解除すると丸一日眠ってしまうから1つずつしか解除出来ないだろう。急に何かトラブルに巻き込まれるような事はないとは思うが、解除出来る回数、そして選ぶ順番はちゃんと考えた方が良いだろう。


「『女神の寵愛』などどうでしょう? 身体能力上昇やある程度の傷の回復が自動で出来ます」

「んー……魅力的ではあるが……」


 1ヶ月半前、無期限休日で飲んだくれていた時に女神は移り気な性格だと思った。それにあの時は酷く恨んだのだ。私が使えないから見捨てたのだと感じた。と思ったらこれだ。このふざけたシステムを考えたのもきっと女神だ。だから好きになれない。それ以来、女神の騎士ではあるが良い感情は持っていない。


「また今度にしよう。今は戦う力が欲しい」

「分かりました。では拳術【天】でしょうか……武器が無くても戦えますわ」

「私もそれが良いと思ってた」


 拳術とは書いてあるが、実際には素手で戦う術だ。と、昔聞いたことがある。服屋の客に拳術を学んでいる人間が居たのだ。其奴は拳も使うし、足も使っていた。


「なんと言っても【天】レベルなのが魅力的だ」

「【人】に始まり【天】へと至る……武術・魔術に設定されたレベルですね。【天】は最上級のレベルですから、並の威力ではありませんね」

「それが剣も弓も魔法も、全て【天】だ。私ってもしかしたら逸材かもな」

「あら、私だって【天】のスキルは所持してますのよ?」

「ぐっ……」


 それもそうだ。同じ勇者であれば持っていても不思議ではない。で、でも少ししたら私も最強の勇者になれるんだ! 女神の騎士として大成するのは誠に遺憾だが、この弱いまま旅をさせられるのも辛い。ぐぬぅ……この言葉に出来ない感情、どうすれば消化出来るものか……!


 いや、とりあえず今はスキルだ。気を取り直した私は取得権限をタッチし、先日出たのと同じメッセージが表示されるので『はい』を押してスキル取得画面へと移る。よし、《拳術【天】》を取得だ!


『《拳術【天】》のロックを解除しますか? はい いいえ』

「勿論、はいだ。ベアトリス、後は頼む」

「はい、レイ。ゆっくりとお眠りください」


 ベアトリスがにっこりと微笑んでくれたので安心して『はい』を押した。一瞬、膨大な量の《拳術》の情報が脳裏をよぎる。しかしそれもほんの一瞬。私はすぐに意識が遠のき、ふわりとベッドに倒れ伏した。

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此方もよろしくお願いします。
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