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追放一歩手前なのに追放されない。それどころか好かれてる。  作者: 紙風船


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第三十四話 最後のスキル

 玄関空間で2週間修業し、外で休む。それを繰り返すこと2ヶ月。玄関空間での修行時間は約2年という実にふざけた日数となっていた。


 それもそのはず、1日に14日過ぎるのだから2日で約1ヶ月過ぎることになる。私は驚きの速さで年を取り、21歳。ベアトリスは20歳となった。こうして人よりも早く年を取るのは女としてはというか人として本当に本当に本当に嫌だけど、女神の鍵の所為で多少なりとも耐性があったので我慢出来た。


 ベアトリスはというと……


「……もう、お嫁に行けませんわ……」


 20という数字に打ちのめされてた。


「大丈夫だよ。私も同じだから」

「はい……」


 縋りつくように抱き締められ、しょうがなく頭を撫でてやる。するとグリグリと頭を擦り付けてきた。まったくしょうがない奴だが、仕方ない。こればっかりは仕方ないとしか言いようがなかった。


「まぁほら、ちゃんと最初に言ったじゃん?」


 アサギさんが痒くもない後頭部を掻きながら言う。最初に言ったら何でも許されると思ったら大間違いだが長い目で見ればたかが2年だ。されど2年と言われてしまえばそれまでではあるが。


「ほらベアトリス、こうしていてもしょうがないよ。急がないと」

「……そうですわね」


 姿勢を正したベアトリスがこくりと頷く。


 私とベアトリスは、アサギさんとダニエラさんの修業に耐え、お墨付きを頂いた。空に落とされるという理不尽で意味不明な罰ゲームを食らいながらも堪え難きを堪え、やっとの思いで免許皆伝を言い渡され、今日を迎えた。


「ありがとう、アサギさん」

「あはは、君にさん付けされるのは今でも違和感しかないな……」

「これだけ世話になれば流石に、ね」


 胡散臭さから変に噛みついてしまったあの頃とは違い、今では尊敬の対象だ。一緒に過ごし、修業を繰り返す内に彼に内包された600年という月日の重みを肌で感じた。技のキレだけではなく、言葉一つ一つの重みが違った。


 重ねてきた月日を彼は嫌う。おじいちゃんの戯言だと皮肉るが、ハッとさせられる事が多かった。そんな彼の一端に触れる度に尊敬の度合いは増えていった。


「肌がビリビリする……魔神の顕現が近い。そろそろ玄関空間から出る時間だ」

「待ってくれ、アサギさん。あと一日くれないか?」

「うん?」

「まだ解放してないスキルがあるんだ。最後のスキルが」


 女神の所為でロックされたスキルを解放していった武者修行の旅の中で一つだけ解放していないスキルがあった。それは一番最後に解放するしかなかったスキル。あの胸糞悪い女の名を冠したスキル、《女神の寵愛》だ。


「生理的に無理だけど、これを解放しないと魔神と戦う事が出来ないんだろう?」

「そうですわね。身体的な影響は殆どないと思われますが」


 ベアトリスは最初からスキルがロックされてなかったから最初からスキルが解放されている状態だ。けれどこれまで変なところは見受けられなかった。だから安心して解放してもいいのだが、効果がベアトリス自身もよく分かってないらしいので少し怖い。


「あぁ、《女神の寵愛》ね。それは絶対に解放しなきゃ駄目だよ」

「効果知ってるのか?」


 スキル名を聞いたアサギさんが心底真面目な顔でスキルの効果を教えてくれた。


「……なるほど、このスキルがあるお陰で神を神と認識出来る、と」

「僕やダニエラくらいになれば気配というか、漠然とした何かとして感じることは出来るようになるけれど、普通に人には絶対に無理だ。そのスキルがあるからこそ、神と戦う勇者という存在になれるんだ」


 聞けばアサギさんも勇者として覚醒した当時は一瞬ではあったがそのスキルを持っていたらしい。今は《寵愛》の劣化版を持っているとのことだ。女神とほんの少しだけ会話が出来る程度のスキルと言っていたが、その時に《寵愛》のスキルの事を聞いたそうだ。


「ならこれがないと戦うことすら出来ないのか……」

「うん。そしてそのスキルは膨大な神気を強制的に体内に押し込められる。勇者として真の覚醒をする為にね」


 勇者という存在にはなった。女神に選定されて。本来であれば、その時点でちゃんと勇者として覚醒するのだが、私は違った。そもそもロックされてしまっていたから。


「ということは、だ。勇者でありながら勇者でないまま、此処までの強さを得たレイは更に強くなるんじゃないか?」

「いや、そうでもない。《寵愛》のスキルは神を認識出来るようになるだけだ。まぁ、神を認識するということはそれと同時に神を斬る事が出来るようになるってことだが、それはまた別。斬る為の自力は勇者は関係ないしね」


 ダニエラさんの言葉に一瞬、浮かれたがアサギさんの言葉に肩を落としつつ、納得もした。結局神殺しを成す為の技と経験は日々の積み重ね以外には得られないのだ。


「じゃあまぁ取るけど、きっちり丸一日意識失うのでよろしくね」

「後は任せてくださいな」


 もうベアトリスは慣れたもので大した動揺もなく、淡々としたものだ。それに引き換え、アサギさん達はちょっとソワソワしている。私が気を失った後の反応が楽しみだがそれを知るのは一日後。まぁ、私にしてみればほんの一瞬の話だが。

算数弱いので日付設定間違ってたら、それは算数が間違ってる。僕は悪くない。

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此方もよろしくお願いします。
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