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第一話 勇者やめさせてもらっていいですか

唐突に始まりました新連載です。

もし良かったら読んでください。

よろしくお願いします。

 私の目の前で炎が爆ぜた。それは魔物に向けて放たれた魔法だ。


 舌を出し、唾液を垂らしながら丘の上から此方を睥睨していたボスの風格を持つ大きな狼。それを私の隣に居た勇者が始末した。


 爆心地となった丘は、まるで隕石でも落ちてきたかのようなクレーターとなって消滅した。舞い上がった土や草が降り注ぐ中、勇者はポツリと呟く。


「つまりませんわね」


 爆風で飛ばされないように必死になって踏ん張っている私の隣でこれだ。同じ立場でありながら腹が立つ。私はこれでも先輩なのに。

 しかし改めてこの力の差を見せつけられると、やっぱり辛かった。風になびく草もなく、焦土と化した荒れ地を見て、心此処に在らずな私はつい3ヶ月程前の事を思い出していた。



  □   □   □   □



 私が教会の御告げで勇者候補として見出され、女神様の洗礼を受けて勇者となったのは3ヶ月半前の事だった。

 勇者になったからには人類の宿敵である魔神を倒さねばならない。そんなのは幼子でも知っている常識だ。


 なのに私には、何の力も無かった。


「な、何だこれは……?」

「こんなの、見たことがない……」


 教会のお偉方が挙って嘆く。彼等が熱心に見ているのは私のステータスカードだ。スリーサイズを見られるのも恥ずかしいのに、私の全てが記されたそれは、老人達の手から手へと回される。


「何だ、このスキル数……それにこの【天】の数……の横にある鍵の印は……」

「能力制限、でしょうか? 文字の色が灰色ですが」


 洗礼を受けた勇者候補は女神様から授かったスキルとステータスを用いて魔神を倒す。しかし私には溢れる力も、湧き出る勇気も、何もなかった。全てが制限され、灰色の文字に覆われている。唯一の白文字は自分の名前、『レイヴン=スフィアフィールド』という名前だけだった。最後に私の手に戻ってきたそれを、無感情に眺める。



  ◇   ◇   ◇   ◇



名前:レイヴン=スフィアフィールド

種族:人間

職業:服屋店員

称号:勇者

LV:2

HP:80/80

MP:10/10

STR:11 VIT:15

AGI:12 DEX:20

INT:13  LUK:1

所持スキル:女神の寵愛(-),破魔の剣(-),剣術【天】(-),弓術【天】(-),拳術【天】(-),状態異常無効(-),環境変化無効(-),飢餓無効(-),限界突破(-),並列思考(-),思考加速(-),神速移動(-),無詠唱(-),未来予測(-),運命収束(-),障壁展開(-),立体機動(-),千里の神眼(-),透過の神眼(-),浄化の神眼(-),読解の神眼(-),超鑑定(-),自動回避(-),自動反撃(-),身体操作(-),

所持魔法:光魔法【天】(-),雷魔法【天】(-),次元魔法【天】(-),無魔法【天】(-),精霊魔法【天】(-)



  ◇   ◇   ◇   ◇



「うーむ……これは前代未聞だな」

「見た目は凛々しくて勇者っぽいのだが……」


 やかましい。男っぽくて悪かったな。


「これはアレですかね。レベルが上がれば能力が解放されていくのでは?」

「その可能性は……あるだろうな」

「よし、ちょっと腕慣らしにレベルを上げてきなさい。装備は此方で用意しよう」


 私が一言も喋らないまま、話は進む。ズラリと並べられた数々の装備は、それはそれは高価で、強力で、そして重かった。此処で私は初めて発言する。


「すんません。どれもこれも重くて使えないんですけど」

「「「はぁ……」」」


 その場の人間に拠る溜息のシンフォニー。そりゃそうだ。ただの服屋の店員だった非力なか弱い女にこんな大剣が振り回せるはずがない。こんな重鎧を着て走り回れるわけがない。

 結局私は用意された中でも一番軽い短剣と、革鎧を与えられた。一応は貴重な素材を使った良い物らしいが、その価値は私には分からない。革はまぁ、大凡の検討はつくが……夢のような品だ。気軽に着られる物ではないので意識しないようにした。


 そしてやってきた王都の外。森の中。護衛の教会騎士達に囲まれ、そのうちの1人が誘い出し、捕まえてきたゴブリンとの一騎打ちが始まった。初めて魔物を見た私ではあったが、『さぁ早く勇者様!』みたいな周りからの期待的圧力に耐えきれず、短剣を振り上げて勇猛果敢に挑んだ。


 が、結果は惨敗。手から短剣がすっぽ抜け、丸腰でゴブリンの前に躍り出た私は敢えなく張っ倒され、危うく犯されるところだった。ゴブリンの力では革鎧を外せず、お陰で助かった。


 まさかの結果に一同放心していた教会騎士達は私の金切り声(貴重)で我に返り、一太刀でゴブリンの首を刎ねて私を助け、大慌てで王都へと逃げ帰ったのだった。


 森への移動時間10分。森での戦闘2分。私を落ち着かせるのに20分。足取りの重い私を抱えての帰り時間25分で計1時間未満の出来事だった。


 そうして教会に残念がられ、それでも一応は勇者として扱われ、何処で聞きつけてきたのか失態は王都で噂され、それでもあの恐ろしいゴブリン1匹相手に私&教会騎士5人で挑み続けた。

 希望を胸に2ヶ月程繰り返し頑張り、漸くレベルが10を越えた。しかしスキルは一つも解禁されず、ついに教会は私にある提案を押し付けた。


「レイヴン殿、暫く体を休めてはどうだ?」




 その暫くから1ヶ月半。こうして勇者として選ばれた私は何も出来ず、昼間から酒場で酒を飲んでいた。 

試行錯誤しながらなので、ミスがあったらすみません。

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