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僕と俺の極限戦記  作者: あぎょう
Record1:僕と俺の邂逅記
1/17

Ⅰ 夢

I 


 暗い。

 真っ暗で何も見えない。

 それに、どこか息苦しい気さえしてくる。

 ここはどこだろう?

 と思ってみれば、僕の口から水泡が出ている。

 そうか、ここは水の中か。

 そう認識すると、光の差す方向に気付いた。

 おそらくあれが水面だろう。やけに輝いて見える。

 その光は、徐々に僕から遠ざかっている。

 そう、僕の体が、ゆっくりと沈んでいるのだ。

 沈みながら、僕はなぜか、唐突に理解した。


 もう、『元の世界』には戻れないであろうことを。



「お~い。ノブく~ん」


 突如。

 僕の意識は、僕の名を呼ぶ声によって取り戻された。

 学習机の上。突っ伏していた僕の真正面に、見知った少年の顔がある。

 襟足の長い黒髪とそばかす。青い瞳で僕を見据えている。

 僕の親友。カナタだ。


「……ふわぁ……なんだよ、カナタ」


 僕はゆっくりと背伸びをして目を覚ました。

 変な夢を見たせいか、無理な体制で寝たせいか、すごく体がだるく感じる。


「なんだよじゃねーよ。月曜の朝っぱらから熟睡だったぞ。また夜更かしか?」

「ああ……昨夜、『ランディ』一気読みしちゃってさ」

「おまえも飽きないな! 一体何回目だ!?」

「うう~ん。 十回目からは数えてないな~」 


 そう言いながら、僕は周囲を見渡す。

 いつも通りの朝の教室。クラスメイトはほぼ出揃っているようで、時計を見ると午後八時三十分前。

 ホームルーム直前だ。なんだかんだ、気の利く目の前の親友は、ギリギリまで寝させてくれたらしい。


「漫画好きは分かるけど、ほどほどにしろよな。今度は起こしてやんねーぞ」

「ごめんごめん。ありがとな」


 カナタは手を振って、自分の席へと戻る。

 それとほぼ同時に、教室のドアが開かれる。

 入ってきたのは、緑色の長髪をなびかせる、白衣の女性。

 僕達の担任。秋月先生の到着だ。


[きりーつ]

[れい!]

[おはようございます!]

[ちゃくせき!]


 日直の号令と共に、挨拶を送る僕達。秋月先生はにこやかに「おはようございます」と返す。


「よくできました。みなさん、あいさつがうまくなりましたねー」


 眩いばかりの笑顔で僕達を褒める秋月先生。

 心が洗われるようだ……このくらいの挨拶なら、小学生でもすぐにできることは置いといてね。


「さて、それでは出席をとりますね」


 そう言って、出席簿を開く先生。

 いつも通り、出席番号順に名前が呼びあげられる。


「えー……アーノルドくん」

「はい!」

「キャリーさん」

「はい」

「ディップくん」

「はーい」


 ……賢明な読者諸君は、お気づきだろうか?

 決して、このクラスが特別、交換留学生が多いわけでも、ましてや外国なんてオチではない。

 これから記すのは、外国よりもさらにずっと、遠い所のお話だ。

 途方もない程遠くの、途方もない記録だ。

 僕はふと、窓辺から外の景色を眺める。

 すると、珍しいものを見つけたので、僕は思わず声をあげた。


「……あ。竜だ」


 そう。遥か遠くに見える、大陸一高い山。

 ヒオルオノ山の上空に、巨大な翼の生えたトカゲらしき生き物。

 竜を見つけたのだ。


「へぇ~。こんなとこまで来るなんで、珍しいな」


 と、ぼそりと呟く。

 もうわかっただろう?

 ここは、君たちの良く知る世界ではない。

 人のみならず。亜人、竜、鬼やその他モンスターが生息する、『ファンタジー』な世界。

 そう。ここはいわゆる『異世界』

 君たちからすれば、『地獄』のような所だ。


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