宴開演
午後18時32分。とある小学校の校門前に一台のクラウン(スーパーデラックス)がアイドリングしている。スーパーデラックスと言ってもピンクの丸いヤツではない。アイドリングと言ってもアイドルグループの事ではない。運転席に乗っている男は、レイバンのウィナーをかけ、ボサボサのヘアースタイルに口ひげを生やし、(さっきそこで拾った)煙草をふかしている。この場所に停車して1時間が経過した。自分の好きな曲で構成されているオリジナルCDも聞き飽きた。仕方がないので、エッチな画像でも集めようとスマホを開いた瞬間、後部座席の扉が開いた。
モヨコ「ちょっとお父さん!!」
昭雄「遅かったな」
モヨコ「遅かったなじゃないわよ!!私の学校はこっちじゃないって言ってるでしょ!!」
昭雄「なんだと」
モヨコ「小学校は油価(妹)、私は中学校だって何度言ったら分かるの?何なら来週から高校生なんですけど」
昭雄(あ、この運転しているおっさん)は無言で車を出す。ジャージ姿の女子中学生は腕を組み、ふて腐れている。黒髪のショートヘアにぺったんこの胸、これといって特徴的なポイントは全くないが、顔は普通よりやや良いくらいだ。部活動はテニス部に所属。やけに弾む黄色いボールをポコポコ打つあれだ。窓を全開にし、あからさまに、見せつけるように煙を手で仰ぐ。
モヨコ「煙草やめてよ!制服に付いて臭いんだから!」
昭雄「おい、寒いから閉めてくれ」
モヨコ「分かったわよ」
昭雄「……」
モヨコ「何かフラフラしてない?運転大丈夫?」
昭雄「待て、このモンスターは見たことがない」
モヨコ「携帯渡せ!この!」
昭雄「おっ!こら危ないだろう!!」
モヨコ「危ないのはアンタだ!!テレビ見てないのか!!」
昭雄「モヨコ!お父さんに向かってなんて口の利き方を!!」
モヨコ「前見て前!!」
ガンッ
昭雄「……」
ブーン
モヨコ「いやブーンじゃないって、車止めなさいよ」
昭雄「部活動はどうだったんだ?」
モヨコ「急に話を逸らせるな」
車を停止させる。電柱の下にエプロン姿の主婦が仰向けに倒れている。頭から血が流れ、口からも血がドバドバ…というよりチョロチョロ、よりももう少し多いくらい出血している。慌てて駆け寄る昭雄とモヨコ。
昭雄「何だ、母さんじゃないか」
モヨコ「人轢いといて何だじゃない、お母さん!お母さん!」
母が薄っすらと目を開ける。頭と口からの流血が止まらない。
母「…お父さん、モヨコ…」
昭雄「はっはっは、母さん、こんなところで寝てたら車に轢かれてしまうぞ」
母「あらやだ。私ったらつい眠くなってウトウトしちゃったみたい」
モヨコ「お父さんが轢いたんじゃない!!」
昭雄「さぁ、油価がお腹を空かせて待っている。帰ろう。」
母「そうね、今日はモヨコの好きなパトゥルジャン・イマム・バユルドゥよ」
昭雄「よかったじゃないか!!気絶するなよ?あっはっはっは」
モヨコ「何それ怖い、食べたことないんですけど」
母は吐血しながら助手席に座り、モヨコも後部座席へ座る。モヨコは心配そうに母を見つめた。しかし、母は血塗れの自分の顔を自撮りし、画像編集アプリを使って血塗れの犬に画像加工をして遊んでいた。
母「出来たぁ~。お父さん、見てくださいよ。可愛いでしょ?」
母が運転中の昭雄にスマホの画面を見せる。
昭雄「あっはっは、こりゃあ傑作だ!!母さんがい、い、犬に!!あっはっはっは!こりゃいいや!!モヨコ、お前も見て見ろ、ほら、母さんが、くく、か、母さんが、はは、犬になってるぞぉ、は、は」
画像がツボに入ったのか、涙を流しながら声も出なくなってくる。昭雄は母からスマホを受け取ると後ろを振り返り、モヨコにスマホの画面を見せようとする。
モヨコ「こっち見ないで、前見て前、危ない」
ドンッ ガシャーン
昭雄「フロントガラスが粉々だなぁ…母さん!!その血!!」
母「さっきの血でーす」
昭雄「あちゃーやられた!さすが母さん!」
フロントガラスの上に乗っかってる血塗れのデブ「あちゃーじゃねえ馬鹿野郎!!」
続ける