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5 脱がせ屋VS縛り屋②



 さすがマータさんは大人の女性です。

 ガヤで見ている私と違って、真正面からマックス裸なラジンを直視しているはずなのに、訝しげな顔はあっても取り乱したりはしません。


 そんな凛としたマータさんだったのですが、今現在は大きく目を見開き動揺から狼狽えを覚えていらっしゃるご様子。

 事の発端は、ラジンがクラウチングスタートをするかの如くぐいっと屈み顔を上げた時でした。


 その額辺りからぽわ~んと青白い発光が起こり、額へと集約されたのです。

 それで、ラジンのそこには青いマークが浮かび上がっている――こういった現在進行系の状況です。

 

「貴方のそれは、そんな……セイヘキモン!?」


「何なんですか、性癖者セイヘキモンって? ものすんごく変態って意味ですか?」


 耳へ届いたマータさんの言葉の意味を、早速未だぐるぐる巻きの葉っぱの解説者さんに聞いてみます。


「聖なる碧き紋章。聖碧紋セイヘキモンは神が人の中に送り込んだ使者の証。つまりは神の代行者と言っても過言ではなかろう。故に聖碧紋を持つ者は過去、世界を救った英雄に多い。そして、ラジンを含めれば、今の世では三人の聖碧紋保有者が確認されていると聞く」


「ほへえ……」


 だいぶ解説者らしくなったなあ、とミギマガリさんへ送った私の感嘆には半信半疑の思いがありました。

 どう心を穏やかにしても、神様とか英雄さんとかの線とラジンとの線が交わる気配がない私の心中です。

 ま、それはそれとして実際、ラジンの額に割りとカッコ良さげな紋章が浮かび上がりまして、それを目撃したマータさんが驚いているのは事実。


「それでミギマガリさん。結局、ラジンの額に聖碧紋が浮かび上がるとどうなるんですか?」


「語るまでもない。鋼鉄の乙女よ。眼前の闘いに刮目せよっ」


 ふむふむ。つまり分からないってことなんでしょうね。

 そんな訳で、バトルフィールドを刮目することにします。


「行くぞ、縛り屋マータ。俺の名は裸人はだかびとと書いてラジンっ。この名をその肌へと刻め」


 シュピン、と両手を翼のように広げたラジンがロケットスタート。

 マータさんへ突っ込んで行きました。


「たとえ、たとえ聖碧紋を持っていようとも、ワタシの縄力が、ワタシの縄力があああっ」


 断末魔のような私にとって悲しくなる声が響きます。

 刹那の光と交差した影。

 その後目にしたものは、ラジンの手によって戦利品の如く掲げられる艶のある黒い布。対面では紫色の下着だけを残し膝から崩れ落ちたマータさん。

 それからスキールの反動というやつなのでしょう。

 日焼けした肌を全開にしたマータさんは、苦しみからなのか、両腕で自分を抱くようにして悶ています。


「くはあ……はあ、はあ、ああん……くうん」


 なんと言いましょうか、エロい――じゃなくて、苦しそうです。


「戦いは決した。俺はクレアが待つ部屋へ行かせてもらう」


「はあ、はあ、待ちなさい、待って、脱がせ屋ラジン」


 ラジンを呼び止めるマータさん。

 エリーは魅惑なその顔の変化に気づきます。

 今までの敵視するような厳しさはなくなっていて、どこか少女のような純朴さを見てしまいました。


「一つだけ教えて。……貴方の進む道の先には何があるの。聖碧紋は……貴方に何を導かせようというの」


「脱衣を受けたお前なら、既にその答えを感じているはずだ。俺から言えることは、裸の世界に争いは起きない。それだけだ」


「そう……やっぱりそういうことなのね」


 ええと、どういうこと?

 二人の会話にはついて行けず、頭の中は疑問符でいっぱいです。


「人は争う為に武器を手にした。そして武器から身を守る為に衣服を、鎧を身に纏った」


 ミギマガリさんが呟きます。


「ケケケ……その鎧のお陰で、人間は更なる強力な武器を作ろうとするんだナ」


 タイツさんが続くと、マータさんの輝きに満ちた瞳がこちらを見ます。


「だから原点に帰り、元来の繊細で脆い裸を取り戻す。もし全ての者達がそうなれる世の中が来れば、そこに争いは存在できない。なぜなら自分をも傷つけてしまうから」


「故に人は変革する道を選ぶことになるだろう」


 再びミギマガリさん。


「けれどその先に待っているものは、きっと誰もが優しくなれる世界」


 タイツさんを飛ばしてマータさん。

 目まぐるしいバトン会話劇ですが、要するにエリー以外は皆さん”そういうこと”を理解していらっしゃるようです。


「なんだかなあ……」


「でも脱がせ屋ラジン、そんなことが可能なの」


「俺には聖碧が導く脱衣しかない。そのまま進むだけだ」


 床でクタンとなっているマータさんを見下げながらにラジン。

 そうしたら、目と目で通じ合う沈黙のお時間。

 にゅ、と尖る私のお口。

 べつに少年マンガ的、昨日の敵は今日の友みたいな理解し合う瞬間なんだから悪い光景ではないんですけれども、ただし、二人とも裸なんですからねっ。


「どうでもいいから、早くラジンは海パン履いてよもうっ。マータさんも早くお洋服を着てくださいっ」


 エリーは間違ったこと言ってませんよね。ですよね。


目を通して頂きありがとうございました。

また、ブックマークをありがとうございます。大変励みになっております。

素敵なプレゼントを頂いた嬉しさのあまり、衣がはだけそうです。


本日の投稿は終了になります。

次回「貴婦人クレア」と「クレアの脱衣」を予定しています。

楽しにみして頂けるとうれしいです。

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