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4話 離別

少年編クライマックスです

そんなわけで長めに書いてしまいました。

 ーー我を使い、人にあらざらる力を手にした気分はどうだ?ーー


「どう?と言われても・・・何も変わらないよ」


 ーー何だつまらん・・・ーーー


「俺に何を期待したの?」


 夢から覚めた・・・神器ヴァルキリーと契約を交わし、それからことごとくカイトの夢に現れる神姫リーシャ、何か言いかけるといつも夢から覚める。


 バタン!


 扉が開く音がし、ベリルがやって来た。

「カイト!目が覚めたのだな」

「ベリルさん!心配かけてごめんなさい」


 だが、ベリルはカイトを叱った、カイトに姫様を泣かせた罪を犯したと、人を刺した事に躊躇ためらいがなかった事ではないと、お前はもう一人じゃない、お前が死んだら悲しむ者がいる、それを忘れてはならないと。


 もう1つは戦場での出来事それは仕方のない事だが、万が一殺してしまった場合、死なせてしまった人と死なせてしまった人の家族や恋人の分の思いを背負い生きねばならないと。


 カイトは初めて叱ってもらい、涙しベリルに謝り、復讐など忘れてこれからの人生楽しく過ごしたらどうだとも言われ、ベリルは部屋を後にし、入れ替わりでセリカがやってきた。


「カイト大丈夫なのか?」


 セリカは慣れない手付きでリンゴを剥いてくれて、カイトに食べさせる。


「食べろ!」

「い、頂きます」


 カイトの食べっぷりにセリカは笑った、カイトはベリルが叱ってくれた意味がわかった気がする。


 ******


 カイトの傷が癒えた翌日、傷ついた兵士がノースディア国王に謁見をしていた。


「陛下!申し上げます、西ノースディアのライフゴッド領主が帝国側に寝返りました」


 ノースディア王国は東領と西領に分かれ、中央にノースディア王国があるが西側はブルガント帝国に近いため、帝国の動きを観察するよう命じていたが、兵士の報告により、領主ライフゴッドの裏切りによりノースディア王国に危機が迫ろうとしている。


 ****


 ライフゴッド領では、領主ライフゴッドがノースディア城に向かい進軍を始める。


「ライフゴッド様!先日送った暗殺部隊からの音信が途絶えました、恐らく、セリカ姫暗殺に失敗したと思われます」


「そうかご苦労!下がって良いぞ!」


 部下が甲冑を身に纏い小じわが目立つ茶髪の中年の男に報告をする、どうやらセリカ暗殺の首謀者はこのライフゴッドだ。


「セリカ姫を亡き者にし、父と母に絶望を与え国を我が手にしたかったが仕方あるまい」


 ライフゴッドは帝国に従えば王国全土をライフゴッドの物として約束されたらしく、その為に現国王と王妃を排除するのが目的であった、当然この中にセリカも含まれていたのだ。


 ****


 ノースディア城ではライフゴッド軍に備え国王を始めとし、軍義が開かられていた。 


「向こうの数は?」

「報告によれば2500だと」


 完全に甘く見られているのか、ライフゴッド軍は2500の兵を引き連れ進軍し始めた。


「ベリル団長、どう思う?」


「陛下!北の港街を利用し別動隊が来る事も想定できます、おそらく二日後にはこちらに入ると思われます」



 ノースディア軍は港街を押さえ、同じ兵力2500で迎え撃つ、今の内に街の住人を東領に避難させる、当然カイトと共に来た領民も。


 セリカは大丈夫だろうか・・・

 カイトは住人が避難した後、城に向かうが、早馬と兵士の怒号が響いてきた!ついにライフゴッド軍が進軍してきた。


「帝国?いや違う!」


 城門はライフゴッド軍に包囲されている、正面からの侵入は難しいカイトは物陰に隠れ機会を伺う。


「くっ!こんな所で!うおぉおぉーっ!」


 城門の外れの林から声がした、カイトがそっと近づいてみて見ると、ベリルがセリカを抱き抱えライフゴッド軍の兵と対峙していた、その数はおよそ10人。


「ベリルさん!それにセリカ!」


 セリカは気を失っているようだが手には一本の剣が抱えられていた、この剣が後にセリカの運命を大きく変える事となる。


「助けなきゃ!」


 カイトは後先考えずセリカを助ける事に頭がいっぱい、躊躇ちゅうちょなく神器ヴァルキリーを使いだす。


「来てくれ!リーシャ!」


 カイトの周りに風で覆われた鎧が作られた、人に忌み嫌われようと関係ない!せっかく出来た友達、大切な人が目の前で危機に陥っている、絶対に助けるんだと言う信念がカイトを奮い立たせる。


「うおぉおぉーっ!」


「カイト!?無事だったか!それにその力は?」


「後で話します!」


 カイトの槍先に小さい風の塊が集まり出し、一気に突きだすと物凄い突風が発生しライフゴッド兵を吹き飛ばし一掃した。


「急いでここを離れるぞ!」


 ベリルはカイトと合流し、気を失っているセリカと共に東領に避難する。


「姉さんこっち!ってお前はあの時のガキ!」


 誰かと思えば以前カイトとセリカを襲った暗殺者のリーダーだ、名前はキルと言う、キルはベリルに協力するなら死罪は免除と言う条件で釈放してもらい脱出の手引きをしてくれたのだ。


 ****


 セリカ達が脱出する少し前。


「申し上げます!ライフゴッド軍既に街中に侵入、城門を破られるのは時間の問題かと」


「意外と早かったな・・・ベリル!セリカとシルビアを連れて逃げてくれ!ワシは王としてここを離れる訳にはいかぬ」


「しかし陛下!」


「ワシに何かあったらセリカに伝えてくれ!強く生きろとな!」


 ベリルは国王の覚悟を見届け、シルビア王妃を連れてセリカを探すのだった。


「姫様一体どこに・・・」


 セリカは城の宝物庫にいた、怖くて外に出られないでいる。


「ベリル早く来てくれ・・・・カイトは?カイトはどこだ?ん?この剣は?ノースディア家家宝のバルムンクだと!」


 セリカは宝物庫の隅に立て掛かっていた剣を見つけた、その剣は刀身が燃え盛る様な赤い輝きを放っていた、セリカは剣を取り勇気を出して宝物庫を出た。


「ん?セリカ姫だ!捕らえろ!」


「く、来るな!」


 宝物庫を出た瞬間ライフゴッド兵と遭遇してしまった、セリカは恐怖と戦いながらバルムンクを手に身構える。


「うわぁぁーっ!」


 セリカは剣を振り回し、ライフゴッド兵を威嚇するが、素人の振るう剣なので結果はわかりきっている。


「姫様から離れろ!」


 間一髪ベリルが駆けつけ、セリカは危機を脱した。


「ベリル!母上無事でしたか!」


 泣きじゃくるセリカはシルビア王妃に抱きつき安心感に包まれたが、安らぎは直ぐに過ぎ去った。


「居たぞこっちだ!」


 ライフゴッド兵の増援がやってきた。


「ベリル!セリカを連れてお逃げなさい!」


「母上!」


「いいですか?セリカあなたはノースディア家の長女、しっかりとこの国の行く末を見守る義務があります!生きていれば必ず会えます!だから今はお逃げなさい!」


「母上!母上!」


 シルビアはライフゴッド兵に投降し、母の背中を見つめセリカは泣き叫び気を失ってしまった。


 謁見の間には、この戦の首謀者ライフゴッドがセルシオ国王と対峙していた。


「陛下!私も無駄な血は流したくありません」


「何が言いたい?」


「抵抗すれば城ごと焼き払います!降伏して城を明け渡して頂けるなら悪いようにはいたしません」


「これも、我が義を果たす運命かの・・・」


「あなた!生きる為にもここは降伏しましょう、私はあなたの妻王妃としてお供致します」


 ライフゴッド兵に捕らえられたシルビア王妃が現れ国王に降伏を促す。


 ノースディアの義を果たすため国民を守るため王と王妃は城を明け渡し、北の港街にある屋敷にて幽閉される事となった。

 これにより、ノースディア王国はブルガント帝国に吸収された。


 ****


 キルに案内され、カイト達はキルが住んでいる村にやって来た、ここは隠れ里と言って良い場所なので、身を隠すには持ってこいの場所だ。


「カイト様!」


「みんな!無事だったか!」


 村に着くとカイトの領民が避難していた、キルの部下が見つけて連れてきてくれたのだ。


「んん?」


 セリカが目を覚ました、そこにはベリルとカイトの姿を目にしセリカは再び泣きじゃくる。


「カイトーーー!お前無事だったのだな!」


「姫様、危ない所をカイトが助けてくれました」


 ベリルがそう説明すると、セリカは嬉しい顔をしカイトに駆け寄る。


「そうだったのか・・またお前に助けられたなカイト!」


「セリカ俺は・・・」


 神器ヴァルキリーを使い、自分は人に忌み嫌われるのではないかとカイトは不安になっていた。

 そんな事はつゆ知らず、ベリルはカイトの力の秘密を聞き出す、当然セリカも同席している。


 カイトは勇気を振り絞り神器ヴァルキリーについて知っている事を全て話した。


「カイトが言っていた神話のヴァルキリーが実在していたとは、驚きだ!」


「でも、カイトはワタシを二度助けてくれた!カイトの事を悪く言うヤツはワタシが許さん!」


 ベリルの思いそれは、カイトが今まで辛い人生を歩んできたそんなカイトには明るく笑って過ごせる人生を迎えて欲しいと願い、カイトを受け入れる事にする、それはセリカも同じだ。


「姉さん!ノースディア城が敵の手に落ちた!国王と王妃は北の港街に幽閉された!」


「何て事だ・・・」


「でも父上と母上は生きているのだな!」


 セリカはそれを聞き、少しだけ希望を持ち出した。


「ベリル、カイト!ワタシは決めたぞ!ワタシは決めた!ワタシは父上と母上を救い、城を取り戻す!」


 セリカは手に持っていたバルムンクを天に掲げ、皆の前で高らかに宣言した。


 カイトとベリルはセリカの決心に心を打たれた、セリカの助力となり、またセリカの剣となる事を胸に誓うのだった。


「姫様ならば今は力を蓄えるのです!そして反撃の好機を待つのです!」


「それならこれを使って欲しい!これは俺の祖国マーベルランド王国製の銃火器の製造法が書かれた本です」


 カイトは父の記した銃火器製造法の本を出した、全てはセリカを勝たせるために、そして帝国に立ち向かう為に。


「カイトありがとうな・・・それで・・・お、お前にはワタシの・・・・い、いや何でもない!」


 ノースディア王国が帝国に奪われ、今時代は動きだし世は乱世に入りだした。


 カイトとセリカ二人の運命が今交差し始める。




































長めに書いてしまいました

読んで頂きありがとうございました

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