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29話反帝国派救出作戦3

 バサラが帝国軍の一部を撃破した頃、急ぎサウザンドに戻り、帝国を迎え討つサーシャ。


「状況は?」


「我が軍は、現在街を包囲され、前衛が倒されました」


 かなりの苦戦を強いられ、状況は思わしくない、多々ひたすらに援軍の到着を待つばかり。

 サウザンドに進行する帝国軍、およ7000に対しサウザンドは僅か2000、誰が見ても分が悪い。


「皆さん持ちこたえるのです、アイラ様が戻るまで」


 アイラの名が出た瞬間、サウザンド軍の士気は一気に高まり、獅子奮迅の動きをし始める。

 帝国も大軍勢をもって、サウザンドを落としにかかるが強固なサウザンドの国は、そう容易く落ちなかった。


 ****


「皆さん急いで、反帝国派の皆さんはマーベルランドに避難を、サーシャの救援に急がねばなりません」


 見事に、反帝国派を救出したアイラ、まだ素直には喜べない。

 手薄となっているサウザンドに攻める、帝国を一刻も早く何とかしなければならないからだ。


 ーーアイラ大丈夫か?ーー


「キルケ、サーシャなら大丈夫です」


 ーーじゃなくてお前が心配だーー


「私なら大丈夫、急ぎますよ」


 キルケの心配はここまで、オーバーペースで事を進めたアイラの体が持つかどうかの心配だった。

 これ以上全力を出すと、アイラの命に関わるからだ。


「アイラ様、見えました、サウザンドが業火に包まれ始めています」


「この水に囲まれ、清んだサウザンドを戦火にするなんて、お仕置きですね、幸い近くに海があって良かった」


 アイラの弓が青白く輝き、海水が矢に集まりだす。


 ーーおい、アイラ、まさかてめぇ・・や、やめろ死ぬぞーー


「大丈夫、死にません強くなりましたわよ私」


 矢に集まりだした海水が、大きな球体となり、一閃を放ち出す。


 ビューン!


 矢が次第に地面に刺さり、球体となった水の固まりが暴れる龍の如く、流れを呼び津波の様に帝国軍に押し寄せる。


「な、何だ?水が押し寄せてくる」


「つ、津波だぁ」


 逃げ場を失い、帝国兵の半数以上が津波に飲み込まれだし、終わってみればサウザンド周辺には帝国兵の遺体が転がっていた。


「はぁ、はぁ、や、やりましたわ」


 ーーアイラ、大丈夫か?ーー


「問題ありません、ただ、暫くは腕が動きませんね」


 大自然の力を利用したアイラの神器ヴァルキリーそれだけ、膨大な力を使うため使用者の命に関わる危険な技でもあった。


「おいおい・・これは一体」


「アイラ様」


 入れ替わりと同時に、バサラとベリルの部隊が駆けつけ、疲れ果てたアイラを見兼ね、直ぐ様アイラに手を差し伸べる。


 ーーキルケお姉様、これは?ーー


 ーーローズか、アイラがちょっと無茶やりがって、これさ・・暫くは戦えないなーー


「バサラ殿、姫様が心配なので失礼する」


「あぁ、付き合わせて悪かったな」


 戦火を免れたサウザンド、だが、しかし、この事はまだカイト達は知らずに帝国軍を相手にしている。

 そんな心配をよそに、ベリルが急ぎカイト達との合流を急ぐ、既に夜が明けようとしている。


 ****


 ーーやはり、リーシャ達が立ち塞がるわね・・さぁユリウスこちらも出撃よーー


「・・・・」


 完全にクロユリに精神を乗っ取られ口数が全くないユリウス、だが、その瞳の奥にはまだ何か燻っている物があった。


 ****


「カイト、これは我らが優勢か?」


「違いない、でも、油断は禁物だぞ」


「あぁ!お前となら何処までも行けそうだ、帝国をサウザンドに近づけるな」


 ーーまぁ、やる気ねこの子ーー


 ーー愛の力じゃーー


 サウザンドが帝国を蹴散らした事をまだ知らないカイト達、獅子奮迅の勢いで敵を蹴散らす。

 セリカがバルムンクで炎を巻き起こし、カイトのゲイボルグが風となり、突破口を切り開く。


 ーー夜が明けるのぉーー


 ーー何か嫌な予感ーー


「あっ、ちょっと待ってセリカストップ」


 突如、カイトがセリカを静止、目の前には帝国の鉄砲隊が増援となって現れる。

 このまま突っ込めば蜂の巣にされる、体勢を立て直すしかなかった。


「ノースディア軍よ、これ以上動けば我ら帝国はマーベルランドに火を放つ」


「な、なんだと」


「くっ卑劣な」


 ーー向こうも自棄になりおったか・・カイトとりあえず落ち着けよーー


 追い詰められた帝国軍、マーベルランドに火を放つと言い出し、お互い硬直状態が続きだした。


「要求は何だ?」


「この戦、我々の負けだ・・大人しく見逃してもらいたい」


「降伏宣言しておいて、只では降伏しないと来たか」


「セリカ・・俺に任せてくれ」


 いきり立つセリカに、カイトは冷静に対処する。


「要求は何だ?」


「我々をこのまま逃がして欲しい」


 勝ち目がないと悟った帝国軍が、あっさりと降伏宣言をしてきた。

 当然無条件で降伏させたら、また同じ過ちを侵す予感がした。


「いいだろう、但し、こちらの要求を受け入れてもらう」


「言ってみろ」


 話し合いで、事が終わるならそれはそれで良いが、まだ何か裏がある気がしてならないカイト、体力的にも限界が来ているため、話し合いを長引かせ体力の回復を待つ。


「お前達は、自分の欲のため、他国を侵略し沢山の人を殺した、これ以上侵略をしないため不可侵条約を結んで欲しい」


「そ、それだけか?」


「あぁ、その代わりサウザンド、イーストガンド、ノースディアの3国でな」


「わ、わかった、掛け合ってみよう、だが今の皇帝ユリウスは独裁者、逆らえば死は確実」


 完全に戦意を失った帝国だが、降伏したくても後ろにはユリウスがいる。

 ユリウスが手に掛けた先代皇帝ガティスより更に恐ろしい存在となっていた。


「あんた達は、今の帝国に満足か?奮い立つ勇気があるなら、俺達に力を貸してくれ、俺は兄ユリウスを止める」


 カイトの素性を帝国に話すと、戸惑いだす帝国兵達、だが、その瞳にはユリウスとは違う熱いものを感じさせる。


「お、お前はユリウス皇帝の弟だったのか?、兄とは違う雰囲気だな、不思議だお前を見ると、お前に力を貸したくなってきた、皆この者に着いていこう、帝国を変えるためにもこの男の様な勇敢な若者が必要だ」


 帝国兵が次々とカイト達に加勢する事を約束、流れが傾き出した。


「バーン王子、流れが来てます、セリカこんなんで良いかな?」


「お前らしいな、だからワタシはそんなお前に惚れたんだな」


 ーーセリカ、言うわねぇーー


 ーー熱くて冷風送りたいわーー


 話がまとまった矢先だった。


 ーー私の国にはね、弱者はいらないのよーー


「ウラギリモノハシマツセヨ・・・」


 ユリウスが50000の大軍を連れて、カイトの前に現れ、降伏した帝国兵を次々と抹殺し始めた。


「ユ、ユリウス、お前・・」


 ーーはぁい、リーシャ、ヒルデと弟くん、そろそろ頃合いかと思い出てきたわよーー


 ーーやってくれるのぉ・・クロユリ、ユリウスを解放してやったらどうじゃ?ーー


 ーーはぁ?せっかく見つけた私のオ・モ・チ・ャ、はいそうですかと手放すわけないでしょーー


 カイトはふと、ユリウスと対峙した時の事を思い出した。


 お前に実の兄が殺せるか?


 カイトは確信した、ユリウスは最初から変わってないと。

 そして、ユリウスは自分を殺して欲しかったのだと。


「ユリウス・・・今・・助けてやるぞ」


 戦いはついに、最終局面を迎える。
















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