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26話 タバサと再会

 マーベルランドを後にしようとする赤き義勇軍だが、サーシャが慌ててカイトを引き止める。


「お待ち下さいカイト様、貴方にお目通りしたい方が今、此方に向かってます」


「俺に?」


 カイトに会いたいと言う人を待つため、先に軍をノースディアに帰還させ、カイトとセリカだけ残った。


「セリカ様、貴方まで残る事はないのにすみません」


「謝らなくて良い、カイトを一人にすると危なっかしいからな、ワ・タ・シが付いてやらないとな」


 カイトに会いたい人を待っている間、空白の5年間カイトが育ったこの家を散策するカイトとセリカ、ふと、一冊の日記を発見した。


「これは、カイトの母上が書いたのか?」


「セリカ?」


 日記を読むと、母マリアのジョシュアに嫁ぎユリウスとカイトが生まれ、自分が死ぬ寸前までの日記が記されていた。


 ・・・ノースディアから、マーベルランド領主ジョシュア様に嫁ぎ、早いもので1年が経ちます。

 初めての見知らぬ土地で、私は不安でいっぱい。

 それでも、ジョシュア様は私の不安を取り除こうと、一生懸命な気持ちが伝わってくる。


 翌年、私達に初めての子供が産まれた、名前はユリウスと名付けた、何も望まない、望むなら平和にすくすくと育って欲しい。・・・


「母上は、ノースディアの人だったのか・・」


「カイト、お前にもノースディアの血が流れているのだな、何かワタシは嬉しいぞ」


 カイトにノースディアの血が流れている、この事にセリカは初めてカイトを見た時、何か運命的な物を感じていた。

 その感覚は、嘘ではなく、本物だと。


「カイト、まだ続きがあるぞ」


 ・・・ジョシュア様に嫁ぎ早5年、ユリウスに弟が出来た、名前はカイト、でも私は肺を患い、寝たきりの状態に、カイトが物心付くまで私は生きていられるかわからない。


 カイトにとって、母の顔を知らずに育って来た、カイトが物心付いた時には既に母はこの世に居なかった。

 その母の生涯を記した日記を夢中になって読むカイトとセリカ、日記はここまでだったが、最後のページ部にカイトに宛てたメッセージが記されていた。


 ・・・カイトへ、あなたが大きくなる頃には私は生きているかわかりません、あなたの成長を見守る事ができないのが残念です。

 私が望むのは、あなたが健康ですくすくと育って、たくましく生きていてくれればそれで良いのです。

 父と兄でこの世を力を合わせて生きてください、産まれて間もないあなたを抱いてあげられずにごめんね、母は天からいつもあなたを、あなた達を見守っています。

 ・・・・母、マリアより・・・・


「母上・・・俺はこうして、生きています、母上に今の俺を見せられないのが残念です」


 母の思いが手紙となって残り、カイトの目から自然と涙が溢れだす。

 それを見かねたセリカが、そっとカイトの後ろから優しく包み込んだ。


「泣いてもいいんだぞ、カイト」


「セリカに格好悪い所は見せられないよ」


「散々、ワタシの泣き顔を見たくせにか?」


「意地悪だな」


 セリカのカイトを慰めようとする気持ちが伝わり、優しい温もりがカイトを癒してくれる。


 程なくして、カイトに会いたいと言う人が現れた、その姿はまさに今にも倒れそうなくらい弱々しくなっていた。


「カイトちゃん、カイトちゃんでしょう?」


「ま、まさか、タバサお姉ちゃん?」


 カイトの顔を見るなり安堵の表情浮かべたタバサ、話したい事が沢山あるのにお互いどこから話して良いのかわからない。


「タバサお姉ちゃん、体はもう大丈夫なの?」


「まだ、完全じゃないけど昔よりは大分良いよ、それよりもっとあなたの顔を見せてカイトちゃん」


 タバサの手をカイトの頬に当てるなり、タバサの目から涙が溢れ、その弱りきった体と顔でカイトを見つめる。


「たくましくなったね、カイトちゃん」


「タバサお姉ちゃん、何があったの?」


「じ、実はね・・」


 事情を話そうとしたその時、疲労でタバサはその場を倒れてしまい、やむを得ず一晩泊まる事となった。


「カイト様、セリカ様、引き止めてしまって申し訳ありません部屋を用意致します、カイト様は以前の自室でよろしいですか?」


 断る理由もないので、カイトは以前の自分の部屋に泊まる事となり、セリカはサーシャと相部屋となった。


「タバサ様は私達が看ます、カイト様はゆっくりお休み下さい」


 カイトに再会し、安心したのかタバサは深い眠りにつき、サーシャの部下に看病してもらっている、どうやら疲労で少し熱も出ていると報告があった。

 カイトも久しぶりの故郷で一夜を明かし、朝を迎え、タバサが目覚めるのを待つのみ。


「カイト、タバサ殿の目が覚めたぞ」


 ゆっくりと、セリカの手に引かれタバサがやって来た。


「タバサお姉ちゃん、大丈夫?」


「うん、カイトちゃん、これから話す事は真実、驚かないで聞いてね」


 ここまでの経緯を話すタバサ、ユリウスは本心で裏切ったわけではなかった事、ユリウスを取り巻く黒い霧。


 ーー忘れとったわ、クロユリは相手の精神を支配し人を思うがままに操る厄介なやつじゃーー


 ーー全てはクロユリが仕組んだ事だったのねーー


「ユリウス・・・お前は・・どのみちユリウスを止めないと世界中が危ない」


「カイト、こんな事言って済まないがワタシは・・クロユリと契約したのがお前じゃなくて良かったと思ってる」


「セリカ・・」


 帝国と全面戦争になるかも知れない、それでもカイトは腹を括りユリウスを全力で止めると。


「お願いカイトちゃん、ユリウス様を助けてあげて」


「刺し違えるかも知れない、でも、俺はユリウスを止める」


「ありがとう、そちらの赤い髪の女性は、カイトちゃんの恋人?」


 恥ずかしがりながら、カイトとセリカは婚約者同士と答え、これまでの人生を語りだす。

 タバサはいつにも増して微笑み二人を祝福してくれた。


「だったら、生き残らないとね、残された人が悲しむし、何より大好きな人が居なくなるのは辛いから」


 タバサの身はマーベルランドで預かる事になり、二人はノースディアに帰還、この事をバサラとアイラに書状にて報告、帝国と全面戦争が避けては通れなくなった。


 ****


 ーーさぁユリウス、楽しみましょう、先ずはあなたの帝国を更に強化しましょうーー


「全てを・・全てを支配する」


 ユリウスもまた、いや、クロユリと言うべきか、帝国の兵力を拡大させようとしていた。





























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