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25話 ユリウスの過去2

仕事が忙しくて、中々執筆できずにいましたが

最新話です。

 まだ、カイトとユリウスが仲良く暮らしている頃、いつもと変わらずユリウスとカイトは剣の鍛練に励んでいた。


「カイト、俺はもうすぐ成人だ、そしたらお前と稽古する時間が少なくなるな」


「あ、兄上・・・」


「この、マーベルランドは四方に囲まれた国、いずれ帝国や北方ノースディア、東のイーストガンド、南のサウザンドがここを狙いに来るだろうな、だがな、カイト俺は戦のない世が来ると信じている」


 父に似た鋭く澄んだ瞳は、ユリウスの理想を多く語っている。

 カイトもまた、自分も強くありたいと願う。


「ジョシュア様のお帰りだ」


 領民の声がし、馬に股がりジョシュアがマーベルランド全土の視察から帰還した。


「父上、お帰りなさい」


「ユリウス、カイト、元気そうで何より、これからも励むが良い」


「はいっ」


 元気良く返事をする二人に頭を撫でるジョシュア、二人は再び剣の稽古を再開する。


 ****


「お帰りなさいませ、旦那様」


「モハメッド、元気そうで何よりだ実はな、視察帰りに採掘場で、作業員が見つけたらしくてな、貰い受けたのだが」


 モハメッドの前に、槍と大太刀を見せるジョシュア、後の神器ヴァルキリーとはまだ知らずにいる。


「これは、見事な太刀と槍ですな」


「うむ、これをな、ユリウスとカイトの成人祝いに授けようと思う、カイトには万が一を考え手紙を添えておく」


「きっとお二人共お喜びになりましょう」


 会話が弾み、ジョシュアはチェスを出し始め

 、モハメッドに勝負を挑んだ。

 モハメッドは、ここらではチェスの名人と名前が通っている。


「さて、話はこれくらいで、モハメッドわしの挑戦を受けよ、今日こそは負けないぞ」


「ふふふ、旦那様と言えど容赦はしませんぞ」


 ****


「ユリウス様、カイトちゃん」


 二人に話しかける、女の子がやってきた。

 そう、ユリウスの思い人のタバサだ。

 まだ、この時は自分の運命を知らないタバサ、カイトにとっても幼なじみだ。


「タバサ、外に出て平気か?」


「タバサお姉ちゃん、こんにちわ」


 タバサはこの時から体が悪く、今に至る。

 そんなタバサを、ユリウスはいつも心配してくれていた、もちろんカイトも。


「実は私ね・・明日帝国に行く事になったの、母上が元は帝国の人なんだけど、向こうに私の病気を治す薬の材料が豊富らしくて、だから、暫くは二人に会えなくなるかな・・」


 突然の別れに、二人は動揺を隠せないでいた、だがしかし、これもタバサに与えられた運命なのか、二人は元気にタバサを見送る事にした。


 夜、ジョシュアから成人祝いの太刀をプレゼントされ、晴れてユリウスは成人となる。


「ユリウスよ、これからもバンガード家を支えてくれ」


「父上、ありがとうございます」


「兄上おめでとうございます、タバサお姉ちゃんに報告出来ないのが残念だね」


「カイト、タバサとは永遠の別れではない、必ずまた会えると信じているさ」


 離れ離れの辛い気持ちを押しきり、笑顔で振る舞うユリウス、だが、翌朝驚愕の事実を知る事となる。


 翌朝、いつもの様に朝を迎え、タバサを見送りに向かう二人だが、タバサの姿はなかった。


「おかしいな・・まだ出発してないはずだかな」


「兄上、どこを探しても見当たりません」


 諦めて、家に戻る二人、途中領民の会話が耳に入る。


「タバサちゃんの母親、借金があって、その借金の肩にタバサちゃんが帝国に売られたって話だよ」


「父親も戦死して、女手一つで育てて来た娘が売られるなんて、さぞかし苦渋の決断だったろうに」


「兄上?」


「ま、まさか・・・こんな事って・・」


 次第にユリウスの表情が歪み、憎悪に満ちてきた。


「カイト、俺は強くなる、帝国より誰よりも、そしてタバサを救う」


「あ、兄上・・」


 その1ヶ月後、帝国がマーベルランドに進軍、ユリウスも戦支度をし、カイトは避難している。


 ーー力、欲しい?ーー


「誰だ?」


 ーー私は神姫クロユリ、その太刀は神器ヴァルキリー斬鉄剣、力が欲しいんでしょ?ーー


「俺は、戦のない世を作りたい、タバサを助けたい」


 ーーつまり、あなたの楽園を作りたいのね?ーー


「わからん・・」


 ーー素直ね・・力を貸しましょう、但し貴方は人間を捨てるわよーー


「タバサを救えるなら、この命くれてやる」


 ーー決まりねーー


 斬鉄剣から、黒い霧が吹き出しユリウスを包みこむと同時に、ユリウスの頭の中に絶望的な風景が走馬灯の様に浮かびだす。


 その中には戦火に焼かれるマーベルランド、さらに、カイトや父ジョシュアがユリウスに襲いかかり出す。


「う、うわぁぁあぁっ」


 ーーひどい世界よね?こんな苦痛を味わうなら、安寧の楽園が欲しくない?ーー


「全てを・・・滅ぼす・・タバサの為に・・」


 優しく凛々しかったユリウスの表情が、憎悪に溢れだした。


 クロユリのユリウスに施した術は、言わば催眠術の様な物、絶望を見せつけ契約者の脳神経を狂わす物であった。


「俺の野望を果たすには、父上とカイトが邪魔だ・・・俺が世界の王になる、その為に帝国を利用する」


 ーーその意気よ、ユリウス、私に見せてね貴方の作る楽園をーー


 その後、帝国はマーベルランドに進軍、ジョシュアはユリウスに殺され、カイトは故郷を追われた。


 ****


 ーーこれが、始まりよーー


「そ、そんな・・全てはお前が・・」


 ーー気づいた時にはもう遅いわよ、本当は私、破壊と殺戮を楽しみたいの、貴方の戦の世をなくしたい思いに同意したのは、全部、ウ・ソーー


 意識はあった、だが、クロユリにより精神を乗っ取られたと言うべきか、父を殺し、カイトを追いやったのも全てクロユリが仕組んだ事だった。


「タバサを・・・タバサを助けなければ・・」


 寝室を抜け、タバサの元へ急ぐユリウス、しかし斬鉄剣から放たれる黒い霧がユリウスを追いかける。


 ーー逃げたって無駄よ、貴方はもう、私の人形、私を楽しませて貰わないとーー


「だ、黙れ」


 バタン!


 タバサが幽閉されている部屋に着き扉を開け、急ぎタバサを帝国の外へ逃がすユリウス。


「何も聞かずについてこい」


「ユ、ユリウス様?」


 強引にタバサの手を引き、帝国の外へ逃げるユリウス、当然黒い霧はまだユリウスを追っている。


「時間がない、俺の理性が保てる内に、逃げろ、逃げるんだ」


「えっ?」


「急げ、じゃなきゃ俺が俺でなくなる・・」


 マーベルランド国境付近まで迫ったユリウスとタバサ、タバサをマーベルランドまで見送り、ユリウスが霧に包まれ出した。


「ユリウス様?」


「行け、カイトを頼れ、カイトなら必ずお前を助ける・・死ぬなよタバサ」


 タバサは黙って、わけもわからずにマーベルランドに足を運び、ユリウスは再びクロユリに取り込まれようとしている。


 ーーさぁ、追いかけっこは終わりよ、私のお人形さん、二度と元の貴方に戻れないくらいにしてあげるわーー


 ユリウスが再び、冷酷なユリウスに戻り、帝国に足を運ぶ。


 全ての元凶は、クロユリの欲望から始まったのだ。















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