24話 これからとユリウスの過去
「皆さん死者を手厚く葬ってあげて下さい、彼らの勇気と敬意を表し黙祷を」
帝国との戦いで多くの犠牲者を出し、アイラを中心に死者を弔うカイト達、勝つには勝ったが犠牲が多すぎた戦いだった。
「さて、それではマーベルランドはサーシャにお願いしますわ」
「わ、私ですか?そんな事になるとアイラ様が心配でなりません」
「大丈夫よ、サーシャ、これは貴方に委ねたいの」
ここぞと言う時には頼りになるアイラだが、普段はおっとりしていて、危なっかしい面もある。
サーシャが心配するのも無理はない、常にアイラをサポートしアイラを守り続けていたのだから。
「わ、わかりました・・一つ約束して下さい・・決して無理はしないと」
「承知しましたわ、カイト様、約束通り貴方の父上のお墓をマーベルランドに建てましょう、父を弔ってあげて下さいね」
「あ、ありがとうございます」
カイトの念願が、これにて成就する事になり長年の月日を経て、ようやく父の墓前に花を添える事が出来る。
「さて、今夜は皆さんをもてなしますわ、戦いの疲れを癒して下さいな」
豪華とまでは行かないが、皆を労うため食事が用意され、ちょっとした晩餐会が行われた。
「バサラ様はお酒強いのですね、もう一杯いかがかしら?」
「アイラ様自らお酌など恐れ多い」
「いいの、いいの、今日は嫌な事忘れてぱぁーとやりましょう」
大分酒が廻ったアイラ、時には酔った勢いでカイトに絡みだし始め、当然セリカが黙ってはいない、セシルとバーンはその光景を笑って見過ごす。
「カイト様ぁ・・飲んでますかぁ?」
ーーこりゃ、アイラ、飲み過ぎじゃ・・セリカに睨まれるぞ、それにカイトは酒は飲めんぞーー
「リーシャ様ぁ・・飲み過ぎてませんわよ・・ヒック」
ーーこりゃ、キルケ、この酔っぱらい何とかしろーー
ーー私が居なかったらどうなってたのかしら?キルケーー
ーーお前が居なくても勝てたがな、ヒルデーー
ーー喧嘩はだめなのですよーー
ーーローズ言っても無駄じゃ、聞いてないわーー
リーシャの言葉は届かず、言い合いしているヒルデとキルケ、酔っぱらったアイラはカイトの肩を組み出した。
「カイト様ぁ、この際わたくしを妻に迎えるのはどうですか?ヒック・・姉さん女房も悪くありませんわよ」
「アイラ様、少し落ち着きましょう・・」
「コホン、アイラ殿、カイトはワタシのモノだから手を出すのは許しませんが!」
「えぇ、今日くらいはいいじゃないのぉ、セリカ様はカイト様とこの先も、一緒にいるのですから、ヒック」
「うっ・・・」
もう、どうしようもないアイラの暴走についに・・・。
ゴツン!!
「アイラ様、一国を担う立場なんですから、少しはわきまえて下さい・・全くこれだからあなた様を一人にするのは不安なんですよ」
サーシャのげんこつがアイラにヒットし、その場は丸く収まり、アイラは寝てしまった。
「皆さんお騒がせしました、セリカ様、アイラ様の事悪く思わないで下さいね」
「わ、わかっておる、カイト夜風に当たりに行くから一緒に来い・・と言うか来てくれなきゃ嫌だ」
・・・・二人きりになったカイトとセリカ、満月がとても綺麗で満天の星空の下、空を眺める。
「星空て好きだな、見ても飽きない」
「そうだな、ワタシも星空を見るのは大好きだ」
一緒に居られなかった空白の時間を、埋め合わせするかの様に星空を眺める二人、伝えたい事がまだまだあるセリカ。
「カイト、あのな・・正直ワタシはな、もう兄への復讐なんて忘れて欲しい、あの時は忘れろとは言わないと言ったがな・・・」
うつむきながら話すセリカ、カイトはすっきりとした表情で胸の内を明かす。
「あの出来事がなければ、俺はセリカとこうして出会えなかった・・けど今は、復讐と言うよりユリウスを止めなきゃて思い始めた・・じゃなきゃ多くの人が次々と殺される・・俺は、守りたい、セリカも、帝国に怯えている全ての人を」
「そ、そうか・・それは本心なんだな?ワタシもお前を守りたい」
面と向かってセリカに守りたいと言われ、ちょっと恥ずかしいカイト、会話が弾み夜が明けてそれぞれの国へ帰還するのだった。
「カイト様、セリカ様と離縁する様な事があればわたくしが居ますから」
「アイラ殿、ワタシの夫になる男をたぶらかさないで貰いたいな」
そう言ってカイトの腕を組み反論するセリカ、カイトはやり場に困ってしまう。
「まぁ怖い、バサラ様もありがとうございましたいつでもサウザンドにお越しくださいね」
「あぁ、必ず遊びに行くぜ」
ーーリーシャ、ローズ、ついでにヒルデまたなーー
ーーキルケお姉さま、会えて嬉しかったですぅーー
ーーキルケ、またなーー
ーー私がついでと言うのが、気に入らないわねキルケーー
ーーふんっーー
マーベルランドを任されたサーシャと共に帰還するカイト達、途中でバサラと別れマーベルランドに立ち寄り、カイトが育った屋敷を発見した。
それはもう、昔の面影はなく廃墟となり原型を保って居られるギリギリの状態。
「この屋敷を補修し、ここを拠点にしますカイト様よろしいですか?ここなら貴方の思い出も残ります」
「是非とも使って下さい、父の墓をここに建てたいのですが」
「わかりました、いつでもお越し下さい、ここはあなたの故郷ですから」
早速、父の墓を建て墓前に花を添えるカイト、募り積もった思いを全て墓前にて喋り出す。
「父上、顔も知らない母上、俺はこうして元気です・・隣にいる女性は俺の妻になる人です、必ず兄ユリウスを止めて見せます、どうか・・天から見守って下さい」
「義父様、義母様、初めまして、セリカ・ノースディアです、カイトと共に明るい未来を作り上げたいと思います」
念願叶い、新たな決意を胸にノースディアに帰還したカイト達、道中セリカはカイトにくっついて離れない、アイラにカイトを取られたくないのだろう。
「セリカ、あ、あのそんなにくっつくなかなくても・・・」
「いいじゃないか、これくらい」
「は、恥ずかしい・・・」
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「はっ俺は何故・・・」
帝国ではユリウスが眠りから目覚め、いつもと違う雰囲気を出していた。
ーーユリウス、お目覚めかしら?ーー
「な、なんだ、お前は?剣が喋っている」
ーーわたしの契約者よあなたは、忘れたの?ーー
「し、知らん、ここはどこだ?」
ーーわたしの術が切れたのね、ここはブルガンド帝国、あなたの国よーー
「俺の国、術?」
ーー何故あなたが、わたしの契約者になったか教えてあげるわーー
「な、ん、だ、と?」
今のユリウスが、こうなってしまった理由をクロユリが語りだした。