23話 アイラ救出
商人を追って来た遺跡を通過し、サウザンドを目指すカイト達、将来的にこの場所を観光兼ねて、サウザンドとマーベルランドを結ぶ道として使いたいとサーシャは言う。
遺跡を出てオアシスに差し掛かると、サウザンドから避難した人達が集まっていた、中にはバーンとセシルも一緒にいた。
「バーン王子、セシル王女ご無事で何より」
「カイト、それにセリカ姫、久しぶりだな」
「セシル、無事で何よりだ」
「セリカ様こそ、お元気そうで」
再会を喜ぶ間もなく、名残惜しいが急ぎサウザンドへ向かうカイト達。
「カイト、すまない・・力になれなくて」
自分が何もできないもどかしさで、悔しがるバーン、その思いを背負って先を行く。
「いえ、お気になさらず必ずサウザンドを、アイラ様を救出します」
二人に誓いを立てサウザンドへ急ぐカイト達、とにもかくにも、アイラの無事を祈りながら。
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マーベルランド西部に到着したバサラ率いるイーストガンド軍は帝国の動きを観察し、頃合いを見て突撃する手筈であった。
「偵察部隊、マーベルランド西部の村の様子を見て来い」
「ハッ」
偵察部隊がマーベルランド西部の村を視察、一見穏やかに見えるが、中央に処刑台が設置されている、おそらく帝国に歯向かう者への見せしめであろう。
「こ、これは、ひどい・・」
偵察部隊が見た処刑台は、つい最近誰かが処刑されたのか、血があちこちに飛び散って生々しい光景が広がる。
「バサラ皇帝、帝国は歯向かう者は見せしめの為、村の中央に処刑台がありました、今のところ不穏な動きはありません、引き続き村の様子を見に行き村人から話を聞いて参ります」
帝国はユリウスが皇帝に就いてから、これと言って大きな動きは見せてはいないが、ユリウスの恐怖政治に怯えながら人々は、立ち上がる勇気もなく、ただ静かに暮らしている。
村人の話によれば、帝国はマーベルランドの地が木材から鉱山、軍事には欠かせない資材が豊富に採取できる土地、帝国が喉から手が出る程欲しいからなのだ。
そして、マーベルランドを支配し人々を恐怖で抑えつけている。
偵察が戻り現状を報告、バサラは突撃を決行し急ぎ制圧に走る、カイトに一刻も早く合流したいからだ。
「全軍、帝国が油断している内に一気に畳み掛けるぞ」
オオオォッー!!
イーストガンド軍が一気に村に突入、村を制圧していた帝国も、まさか、イーストガンドが来るなど予測していなかった為、慌ててイーストガンドを迎え撃つ。
「帝国に怯える人達よ、イーストガンドが帝国を追い払う為に参上した、急ぎ避難しろ」
村人が避難と同時に帝国軍が村の西側、つまり、帝国領の境に駐屯地を置いていると情報を貰いイーストガンド軍は西に進路を取る。
駐屯地付近まで来ると、帝国軍が待ち構えその数わずか500。
敵が攻めてくるなど予想していなかったので、帝国軍は奇襲を浴びせられるも、イーストガンド軍に突撃を開始した。
「チッもっと命を大事にしやがれ・・行くぜローズ」
ーー待ってましたよ、バサラっちーー
「お前ら!かかれぇーだが、できるなら殺すなよ」
後ろに控えていたバサラの騎馬隊が一気に突撃、もの凄い怒号と、剣の打ち合う音が響き渡る。
帝国も負けじと鉄砲を用いて応戦、向こうは情けも容赦もなくイーストガンド軍を蹴散らすが、バサラの神器の前では全く歯が立たない。
「俺のデスサイズの前に、そんなもん通じねーぞ」
バサラのデスサイズが、鉄砲の弾を弾き返し傷一つなく相手を翻弄し、帝国軍は徐々に戦意を失い降伏をし始める。
戦はあっさり決着し、帝国兵は捕らえられ、イーストガンド軍がマーベルランド西部を完全に制圧した。
「半数はここに残れ、半数はカイトの救援に向かうぞ」
兵を半分引き連れて、バサラは急ぎサウザンドに向かうのだった。
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「アイラ様、敵に防壁が破られついに城門まで迫って来ました」
ガンドルフ率いる帝国軍はついに、サウザンドの防衛ラインを突破し城門まで迫ってきた。
籠城に持ち込むサウザンドにも、限界が近づいてきている。
「中で迎え撃ちます、前衛に後退するように伝えて下さい」
アイラの指示により、前衛は後退し帝国のアロー戦車を筆頭に城門を打ち破り始める。
「もう、奴らには抵抗する力はないはずだ、者共一気に押しだせー」
城門が打ち破られ、城内に侵入した帝国軍だが・・・。
待ってましたと言わんばかりに、サウザンド軍の前衛が弓矢隊と入れ替わり一斉に矢の雨を浴びせ、アイラも水雷弓で矢を放ち、放たれた矢が水竜巻を起こし帝国兵を水責めにし奮闘する。
「こ、こしゃくな」
ガガガガ!ガシャーン!
帝国のアロー戦車が建物を破壊しながら、城内に侵入し、砲台から無数の矢が飛び散りサウザンド兵に大打撃を与える。
「厄介ですね・・・キルケ奥の手を使います」
ーー本当、面倒くせーな・・・ーー
アイラの水雷弓が黄色く輝き出し、アイラの体には電撃が走り出していた。
矢から放たれた電撃が、アロー戦車を次々と破壊し形成は逆転かと思われたが・・。
ーーアイラ、そろそろやべーぞ限界だーー
「はぁっはぁっキルケもう少し、もう少し頑張って」
膨大な力を使った為、アイラの体力に限界が近づきつつある。
それを見たガンドルフが、後続のアロー戦車を突進させる。
「このまま死ぬか、メス犬に成り下がるか選ぶが良いわ」
「どちらも、お断りしますわ・・あなたの様な野蛮な人は好みじゃありませんの」
「なら、死ね」
ガンドルフがアロー戦車を前進させた時、後方から銃声が響き渡り、後続の帝国兵が次々と倒れていく。
「な、何事だ?」
「後方から赤き義勇軍です、後方部隊が次々と倒されてます」
間一髪、赤き義勇軍が援軍に駆けつけた。
真っ先に鉄砲隊が一斉射撃をし、帝国兵を粉砕するが、アロー戦車が標的を赤き義勇軍に向けだした。
ーーなんじゃぁ?あれはーー
ーーリーシャ、一応防御壁張るわよーー
ーーじゃな・・・カイト、セリカわかったな?ーー
「わかった・・行くぞリーシャ」
「言われるまでもないぞ、ヒルデ」
息ぴったりな二人、風と炎が激しく舞い壁となり、アロー戦車の攻撃をことごとく跳ね返したのだ。
「カイト様、それにセリカ様も」
「アイラ様、遅くなりました」
「サーシャ、よくぞご無事で」
一気に反撃が始まり、カイトとセリカは背中を合わせ帝国兵と戦い、サーシャアイラを守りながら戦う。
「鉄砲隊、あの変な乗り物の車輪を狙え!」
セリカの合図で鉄砲隊が、アロ戦車に一斉射撃し、車輪部分を破壊、アロー戦車も反撃をするが、カイトとセリカの風と炎に全て阻まれ、ついに帝国のアロー戦車を全て破壊した。
「く、くそー全軍退却」
帝国が一気に退却をし始め、外に逃げ出すが、追う必要はないと判断しその場をやり過ごしたが、帝国軍は何故か立ち止まったままだった。
「イーストガンド軍、只今見参」
バサラが急ぎ駆けつけ、逃げる帝国軍を追い詰めるが、ガンドルフは命からがら逃げ延びた。
これにより、同盟軍の勝利に終わりサウザンドは危機を脱し、束の間の平和が訪れた。
マーベルランドは盟約通り、西部から南部、そして中央部もサウザンドに委ねる事となった。
「皆さん良く来てくれました、礼を言います」
ーーキルケお姉さま、久しぶりですぅーー
ーーローズか、相変わらずだなーー
ーーキルケ、貸しが出来たわねーー
ーーうるせーヒルデ、お前なんか呼んでねーしーー
避難した人達も、無事にサウザンドへ戻りいつもの日常を取り戻し、神姫達も和気あいあいな会話をし、夜を迎えた。