20話 奴隷解放1
新たな神器使いアイラ
神器名・・水雷弓
神姫・・キルケ青い髪に、青い瞳、アイラと同じポニーテールが特徴、ヤンキー口調でヒルデとは反りが合わない
サウザンドに到着したカイト達、サウザンド公国は水と緑に恵まれた国だが、内陸部からマーベルランドにかけては砂漠と荒れ地になっており、人が住む場所ではなかった。
街は商業を中心とし、盛んになっているが、貧富の差が激しくスラム街と分かれていた。
「さて、カイト様、先ずはサウザンドへようこそお出でくださいました」
立場上は人質扱いだが、アイラは大事な客人の様にカイトをおもてなしをする。
「早速ですが、俺がサウザンドに来るのと、奴隷商人は何の関係があるのですか?」
状況を整理すると、マーベルランドは、ユリウスが帝国についてから全土は帝国の物であったが、前の戦いにて、北側と東側はノースディアとイーストガンドが、西側から中央、南側は帝国が治めていたのだが、サウザンドが帝国の下についた事で南側と中央部はサウザンドが管轄していた。
「仮に帝国を追い払う事が出来たとし、中央部はどうするのですか?」
「あらやだ、忘れてました」
ゆるゆるな雰囲気で忘れてましたと言われ、突っ込む気が失せたカイトだが。
「アイラ様ぁ・・あなたは普段から迷子になりやすいんですから、もっと慎重にですね」
あまりの軽さに、サーシャも呆れてアイラを叱り出すが、あまり聞いては貰えてない。
「話を戻しますね、船で話した通りこの国は治安がまだよろしくありません、身寄りのない子供を拐い、奴隷として売りつける奴隷商人の撲滅をカイト様には手伝って欲しいのです、中央部はその後考えましょう」
アイラの軽い考えに、カイトもサーシャも呆れて物が言えず、バーンとセシルについてはとりあえず、サウザンドの城で身を潜める事となった。
翌日、早速奴隷商人の情報を得るために、アイラとカイトサーシャの三人でスラム街へ向かう。
ーーキルケ、お主の契約者は面白いのぉーー
ーーアイラは、昔からアタシと一緒に居たのさ、姉妹の様な関係さ、それはいいけどさぁ、リーシャの契約者は優しい雰囲気だなーー
ーーカイトか?あやつも父親を殺され、兄に裏切られ、波乱万丈な人生を歩んでおるよ、兄への復讐心を奥にしまいこんで、愛する者の為に必死で生きておるぞーー
ーーへぇ・・あのヒルデの契約者がそうだな?ーー
ーーうむ、後、言っておくがカイトはやらんぞーー
ーー取らねーし!!ーー
リーシャとキルケも、何百年、いや、何千年ぶりに再会し会話が弾みスラム街に到着した。
一見普通の住宅街だが、どこか寂れており、住人は覇気がない様に見られたがアイラの姿を目にした瞬間、住人がアイラに集まりだした。
彼らは身寄りのない者同士で集まり、子供達は親でもない大人が面倒をみている。
「アイラ様だ」
アイラ様、アイラ様と住人は何かにすがりつく様に、アイラに訴えを呼び掛けていた。
「アイラ様、ギース海賊団が壊滅してから落ち着きはありますが、まだ奴隷商人は絶えません、この前も子供が二人ほど拐われました」
「ギースだって?」
ギースの名前に反応したカイト、アイラが聞き出すとノースディアを攻めこみ、セリカを人質にした張本人と語る。
「あらあら、カイト様、それは大変申し訳ありません、部下の失態と勝手な振る舞いにより、わたくしが始末しました」
あっさりとした口調で、詫びを入れるアイラ、この人を怒らせたら怖いと感じ、背筋が凍りついた。
その後、海賊団は解散し残されたギースの部下達は、改めて貿易商団として働いている。
「とりあえずは、奴隷商人達のアジトを突き止めましょう」
奴隷商人達の、アジトの情報を得るためサーシャとカイトが街中を聞き込みを始める、アイラは先に城に戻ったのだった。
「先ずは、酒場から聞き込みますか・・カイト様、アイラ様はあんな人ですが許して下さい、根は優しくて思いやりのある方ですから」
「あははっ」
昼間なので、酒場はまだ開いていないが店主が店の準備をしていた。
「い、いらしゃいませ、まだ準備中ですよ」
「客ではありません、聞きたい事があってやってきました」
サウザンドをお騒がせしている、奴隷商人の事を聞き出すサーシャ、店主は当然知らないと返答する。
ーーカイト、嫌な風を感じるぞ、一旦出るのじゃーー
「リーシャ?」
リーシャの言葉をサーシャに伝え、一旦店を出る。
リーシャの言う事は、店主は何か隠しているとの事、ひとまず店の外で張り込みをする事となる。
しばらくしたら、ターバンを頭に巻き、マントを羽織った男が店の中に入っていく。
そっと近づいたら会話が聞こえてきた。
「マスター、活きの良い奴隷を捕まえましたぜ」
「ご苦労さん、後は商団が来るのを待つだけだな」
会話からして、店主は仲買役裏で奴隷商人と手を組むブローカーだった。
「しかし、いい金になるな、また良いの居たら連れて来るぜ」
そう言って、商人が店を出た瞬間、サーシャが後ろに回り込み、商人の喉元に剣を突きつけた。
「大人しくして下さい、命を取るつもりはありません、後大きな声を出さないで貰えますか?」
抵抗する間も与えず、サーシャは商人を城まで連行し、アイラに報告した後、尋問を開始した。
「先ずは貴方と、店主の会話を聞かせて頂きました、拐った人達はどこに行きましたか?」
「・・・・・」
あくまでもしらを切り、黙秘を続ける商人、ついにはアイラまで出てくる始末。
「さて、早く自白した方が身のためですよ、わたくしもそんなには、穏やかではありませんから」
しかし、まだ黙秘を続ける商人だが、その間にサーシャが店主を連れてきた。
「アイラ様、この店主が洗いざらい喋りました、彼らは人身売買をし、この店主が商人達のアジトまで道を確保し、仲買人となっておりました」
「げっ!?お前捕まったのか?じゃあ、この後の取引どうするんだ?」
店主の顔を見て驚き、つい口を滑らした。
「やはり、何か知っていますね?早く喋った方が楽になりますよ、今日よりアイラ様は、サウザンドで人身売買をした場合死罪と決めましたから」
「ひ、ひいぃぃい」
恐怖におののく商人と店主、アイラの不適な笑みが恐怖に変わり、同時にカイトが取引相手を連行してきた。
「アイラ様、この男が取引相手で酒場の地下室にて、取引を行っていたそうです」
「まぁ、カイト様頼もしいですわ、あなたを見込んだ甲斐がありました」
ーー本当はワシ目当てじゃろ?どうなんだ?アイラよーー
「秘密ですよ、ね?キルケ」
ーー知るか!ーー
奴隷商人を捕まえ、ついに観念した商人は自白を始め、アジトはマーベルランド中央部の隠れ家にあると自白、南部の砂漠地帯にて抜け穴があり、それを利用していたので、人目につかず行動が出来たらしい。
商人達は、組織ぐるみで行動をしているため、軍隊並みにタチがわるく、武器を持っている為抗争も免れない。
「では、此方も兵を用意して明日乗り込みます、カイト様、今日はゆっくりおやすみ下さい」
夜、カイトはセリカに手紙を書いていた、今サウザンドで起きている現状や、自分の身体の様子など。
最後には、愛するセリカに早く会いたいと添えた、セリカも同じ事を考えていたのかカイトに初めて手紙を書き、カイトに早く会いたいと願うのだった。