15話 セリカ奪還
神姫紹介その3
クロユリ・・黒い着物を着た神姫、黒髪で片目を隠している謎の神姫
神器名・・斬鉄剣
契約者・・ユリウス
「これは一体・・」
カイトが城に戻ると、そこには落胆した国王と女王そしてベリルがいた。
「何があったのですか?セリカは?セリカはどこですか?」
「カイトか・・ワシの力不足だすまない」
国王が謝りだし、事の顛末を話し始める。
南国サウザンド公国の海賊団が、街から城までいつでも火を放てる準備をしていたらしく、それを仕切っていたギースという男が城に乗り込み、条件を突き付けてきた。
ギースは降伏すれば兵を退く、抵抗するならノースディアを焼き払うと・・それならセリカが自分から人質になると言いだし、そしてノースディアに考える余地を与えてもらい、セリカはギースの海賊団の人質になったと言う。
国王は何も出来ずにいた、自分が情けなくてしょうがなかったのだが、セリカは去り際にそっと・・。
「カイトが必ず来てくれます・・ワタシはカイトを信じます」
そう言い残して行ったらしく、それを聞いたカイトにも怒りが涌き出ていた。
・・セリカは俺を信じて、自ら人質となった・・何も出来ない自分が情けない!セリカの期待に応えなきゃ・・俺はセリカを死なせたくない・・
セリカをカイト自ら助け出すと志願し、国王と女王はセリカの言葉を信じてカイトに委ねた、その矢先キルが城に戻り、ギース海賊団の伏兵が街や城を包囲し出したと報告が来る。
恐らく敵はこちらが何かした場合、何らかの合図により、セリカをいつでも抹殺できる様に仕向けてあるとカイトは睨み、キルに情報収集をお願いし、事を慎重に進める。
「わかったぜ!カイトの読み通りだ」
キルは海賊団に扮し情報を集め、やはりこちらが何かをすれば、伏兵部隊が号砲を空に打ち放つ作戦だった、そうとわかると迂闊にはこちらも動けなくなってしまった。
セリカは恐らくそう遠くには行っていないと断定できた、だが肝心のギースの根城がわからず仕舞い。
━━なんじゃ?もう諦めたのか?━━
突然リーシャが喋りだし、何かを知っている様な口ぶりであった。
「もしかして、わかるのか?」
ーーわしを誰だと思うておるのじゃ?神姫じゃぞ・・ヒルデのヤツしっかりしているわーー
リーシャの話だと、ヒルデが痕跡を残してくれたらしく、それを辿れば良いと言いだしゲイボルグが優しい風を呼び起こす、辺りに薔薇の香りが漂い始めた。
ーーヒルデのヤツ薔薇が好きでのぉ・・神器に御霊を移した今も、あやつは薔薇の香水をつけておるらしいわ!いやぁ愉快よのぉーー
少し希望が見えてきた、カイトはリーシャの言葉を頼りに、キルに敵の包囲網を搔い潜る事を頼みつつ、セリカ救出に向かう。
「カイト!セリカの事好きか?」
この非常時に突然国王の質問に戸惑うカイトだが。
「いいから、答えなさい・・」
「・・はいっ・・俺はセリカが好きです・・」
自信満々に質問に答えると、国王はにっこりと微笑みカイトを送り出した、キルもベリルへのプロポーズの返事は直ぐじゃなくて良いと言い残し、カイトと共に行った。
・・カイトら必ず生きて帰って来い、その暁にはお前をワシの息子にしたい・・
ーーカイトわかるか?ーー
「ああ、ほのかに薔薇の良い香りがする、このまま南だ」
「カイト、これを持ってけ!新作だ」
キルはカイトに新型の鉄砲を渡し城に戻った、それは、今までとは両手で狙撃するタイプとは違う、片手で持ち運び可能な中型タイプ、火薬の装填に時間を取らないタイプだった。
「ありがとう!必ず助けて見せる!」
****
「んん・・そうか・・ワタシは・・」
セリカはいつの間にか気を失っていた、捕らえらえていたのは、ギースの根城にしている砦の中の牢屋だったが、当然バルムンクも奪われ、バルムンクは見張りが居る牢屋の外に置かれていた。
「ギース団長!イーストガンドに進行した部隊が撤退しました」
部下がギースに報告する会話が聞こえてきた、ノースディアの救援に行けなかったイーストガンドが、バサラの活躍により、見事敵を追い払った様だ。
「ちっ!こうなりゃ事を急がねばな・・」
ギースがセリカの元にやって来て、直ぐ様セリカに語りかける。
「セリカ姫、あんたの命はノースディア次第だ」
そう言われても、セリカはただ黙ってギースを睨みつけるだけだった。
「それで、ここはどこだ?」
「マーベルランド中央部、北領との境だな、どの道お前は奴隷として売りさばかせてもらうぜ、本当は可愛がってやりたいが、そうは行かねーもんだからな、しかし、勿体ないくらい美人だな」
ガッチリしたレスラー体型で、酒癖の悪そうな顔をしたギースが、いやらしい目でセリカを見つめる。
「酒臭い!それ以上喋るな!下衆が」
「生意気な姫様だな!まぁいいさ、絶望にうちひしがれながら、そこで大人しくしている事だ」
そう言って、ギースはその場を後にした。
****
カイトも、ヒルデが残した薔薇の香りを辿り、ついに、セリカが捕らわれていると思われる砦に到着。
そこは森と高台に囲まれた場所で、マーベルランドの南側と北側の様子がわかりやすい場所でもあった。
「見張りは二人で、入口は1ヶ所だけか」
時間との戦いなので、カイトは速攻あるのみと考え、なりふり構わず全力で正面突破をし始める。
「げっ!何だテメーは!」
カイトの奇襲に意表をつかれ、見張りはあっさりと、カイトに倒され、気を失った。
あまり人を殺す事を好まないカイトの優しさが出ていのだ。
砦内に侵入すると、50人程兵が占拠し、ギースは大広間にて女を横に座らせて、酒を嗜んでいた。
カイトは道中、兵を見つけては新型の鉄砲で遠くから狙撃し、兵の数を減らしていくが、銃声の音にギースが気付きだした。
「何の騒ぎだ!これは!」
「団長!侵入者です」
慌てふためくギース、残りの兵を集めてギースの護衛に回らせ、カイトは息を潜めて次なる手を考えていた。
「クッソーー!どこの誰だか知らねーが、出てこい!」
これは出ていくしかないと判断し、カイトがギースの前に姿をあらわす。
「テメーか?俺の部下が世話になったなぁ」
「・・・セリカはどこだ?」
「なんだテメー!ナイト様気取りか?セリカ姫なら無事だぜ!会いたいなら会わせてやる!但し、テメーが死体となってからな!」
ギースが合図を出すと、周りの兵が一気にカイトに襲いかかるが、カイトは鉄砲を発砲し、兵ではなくギースめがけて撃ちだした。
「へっ!どこを狙っている?」
「今のは、威嚇射撃だ!」
そう言うと、ギースの頬から血が滴り落ち、ギースに余裕の笑みはなくなってきた。
「ちっ!たかが、ガキ一匹やっちまいな」
護衛の兵が一斉に、カイトに襲いかかるが・・・。
――こいつら邪魔じゃのぉ・・カイト!綺麗ごとは言ってはおれんぞ――
「わかってる・・行くぞ!リーシャ!」
カイトがゲイボルグを旋回させ、辺りに竜巻発生し、兵を一網打尽、ギースはこの隙に逃げ出すが、行先はセリカのいる牢屋だった。
「逃がすか!」
カイトも後を追うが、まだ立ち上がる兵が行く手を阻む。
「どけえぇぇーーー!」
カイトも負けじと、残りの兵を粉砕し後を追う。
一足早くギースがセリカの元に辿り着き、セリカを牢屋から連れ出し、ついでにバルムンクを持ち出し逃走を試みる。
「は、離せ!」
「いいから来い!小娘が!」
抵抗するセリカに、手を焼いているギース、このままセリカを連れて逃走しようとしていた。
モタモタしていたら追いつかれる、そんな焦りと不安が頭によぎってきた。
パ――ン!!
銃声が鳴り響きギースの腕に命中し、掴んでいたセリカの手が離れた。
カイトが間一髪追いつき、すかさず鉄砲で、ギースの腕を撃ちぬいたのだ。
「カイトーー!!」
「セリカ!走れーー!」
カイトの姿を見て、合図と共にカイトの元に駆け寄るセリカ、すかさずカイトの後ろに隠れた。
「無事か?」
「信じてたぞ!必ず来ると!」
無事にセリカを保護したが、まだギースと決着が着いていない。
「こ、このやろーーーー!!」
怒り狂ったギース、手にしていたバルムンクでカイトに襲いかかるが・・・。
――汚い手で、私に触らないでくれるかしら?――
ヒルデが急に喋り出したと思ったら、バルムンクが赤く光だし、刀身が真っ赤に燃え始め、ギースの手を燃やし出した。
「うぎゃーーー、あ、熱いーー」
たまらずにギースは、バルムンクを手放してから逃げ出し、撤退の合図だと思われる号砲を二、三発打ち上げた。
この合図により、ノースディアの伏兵部隊は撤退し、ノースディアは危機を脱した。
「セリカ・・・」
カイトはセリカを抱きしめ、しばらくその状態が続いた。
「カ、カイト・・ワタシは、こうして無事だ・・だ、だから、そろそろ離してくれないか?」
「離さない!」
「えっ?」
カイトの発言に、驚くセリカ、そんなのはお構いなしにカイトは喋り続ける。
「離すものかーー!!もう二度と・・離さないぞ・・だって俺は、セリカが大好きだから・・」
「カ、カイト・・」
突然のカイトの告白に、セリカはタジタジになり、一呼吸置いて言葉を返す。
「わ、ワタシも・・ワタシも、カイトが大好きだ!ありがとうな!」
セリカは泣きながら、笑いながらカイトに返事をし、晴れて二人は恋人同士となった。
「笑っているのか、泣いているのか、どっちなんだよ・・」
「う、うるさい!お前のせいだからな!」
――まったく・・妬けるわね・・――
――何を言っているんだ、お主はこうなるのを望んだじゃろうが、何かあいつに、カイトを取られた気分でワシも妬けるのぉ――
――まぁね・・――
リーシャとヒルデが妬けるのも無理はない、何せ二人は唇を重ね合わせて、くっついて離れないのだから。
それから二人が、ノースディアに帰還したのは夜が明けた後だった。
セリカ見つかって良かったですね
カイトと結ばれましたか・・・。
結婚間近?
読んで頂きありがとうございました