8話 初めての贈り物
今回の話は戦闘はありません
「ユリウス将軍?ひどいケガだ」
「構うな!大した事はない」
屋敷に帰還したユリウスは、ケガの治療に専念するのだった。
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東国イーストガンドでは、マーベルランドで帝国と合間見えるはずの、大鎌の男が自国の城にて椅子に座っていた。
「ノースディアの連中、見事にやってくれたじゃねーか!おもしれーな」
南国サウザンド公国では、ノースディアが帝国を追い払ったと噂になり厳重に自国の守りを強化していく事にし、他国との交流は慎重に行う事になる。
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ノースディアに帰還した赤き義勇軍は戦いの疲れを癒し、再び国作りの為に精を出す。
ーー押しが足りないのよ貴方はーー
「う、うるさいな!」
ーーあんな優しい瞳をした子なのに、戦いとなると目付きが凄いわねあのぼーやーー
「アイツの優しい眼差し、ワタシは好きだ・・・」
ーーうふふ♪可愛いーー
「て、何を言わせるんだお前は!」
自室でヒルデと会話しているセリカ、ヒルデに良いようにからかわれており、居てもいられずカイトに会いに行く。
ーーお主何をやっているんだ?ーー
「秘密だよ」
カイトもまた、自室でリーシャと会話しながら何かを作っている様子だ。
ーー何を作っているか大体はわかったが、敢えて黙っててやるかのーー
鳥の羽と木を用意して何かを作っている、カイトが何を作りたいかリーシャにはわかっていたらしい。
「そりゃどうも」
「カイト付き合え!」
「セリカ!ノ、ノックくらいしてくれ・・」
「お前、何をしているのだ?」
突如セリカが入って来たので、カイトは動揺を隠せないでいる、何かを作って様子をセリカにチラリと見られてしまった。
「ま、まぁ良いわ!剣の稽古に付き合え!」
カツン!カツン!
木剣の鳴り響く音とセリカの元気な掛け声が城の庭にこだまする。
「カイト!お前槍は強いのに剣は相変わらずだな!ワタシの99勝だ」
「槍なら俺の99勝だけどな」
5年間寝食を共にしてきた二人、剣を打ち合うと不思議と嫌な事も忘れられる、笑いの絶えない二人だった。
「いい汗かいた!湯につかるとするかなカイトまた後でな!」
「まだ何かあるのか・・」
ーーやはり初々しいのぉあの娘ーー
「リーシャ?」
ーーお主もあの娘の事どう思ってるのじゃ?ーー
「な、なんだよ急に!」
ーー答えたくないなら良いぞーー
「変なヤツ・・さて、寝るかな」
いざ寝ようにも中々寝付けず、本を読み出すカイトそれでも寝付けず昼間の作り物を続ける。
「ふぅ・・・完成」
ーー見事じゃのぉ髪飾りか?ーー
「まぁね・・て言うか知ってたんだろ?」
ーーあの娘にやるのかえ?ーー
「あいつを泣かせてしまった・・その罪滅ぼしてわけじゃないが、お詫びのしるしと言うか」
カイトが作っていたのは羽の髪飾りだった、セリカに申し訳ない気持ちをカイトなりに精一杯の気持ちだ。
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「相変わらず良く寝てるな・・・」
もうすぐ朝を迎える夜明け前、カイトを起こすセリカだが、カイトは中々起きずセリカはそっとカイトに手を触れようとした。
「う、う~ん・・・」
「はわわわっ」
寝ぼけながらカイトがセリカの手を取り引っ張った、セリカの体ごと引っ張られカイトの距離が近すぎる。
「ば、バカ、カイト!は、放さんか」
「う、う~ん」
「こ、コラッカイト!」
「う、うん?セ、セリカ!」
やっと起きたカイトあわやセリカと密着寸前であった。
「わわわわっセリカ何を?」
「お、お前こそ何をするんだ!」
「えっ?」
「何も知らないなら良い・・支度しろ!」
まだ眠い中支度を済ませ、セリカと落ち合う、ベリルも同行していた。
「カイト振り回しているみたいですまないな・・姫様も悪気はないから許してくれ」
「は、はい・・」
「二人とも、早く来い何をしている」
夜明け前の暗闇道を歩くと、セリカお気に入りの高台に着いた、ここで何をしたいのかわからないベリルとカイト。
「まだ日が昇らないから寒いな・・ベリル荷物に紅茶セットあるだろ?淹れてくれ」
そう言われてベリルは紅茶を差し出した。
「どうぞ姫様」
「カイト飲め!温まるぞ」
「う、うまい・・・」
「そうだろ!ノースディアの国民が大事に育てた茶畑から取れたヤツだからな」
紅茶を飲みながらセリカの顔をチラッと見ると、如何にも楽しそうに笑っている、セリカと出会わなければ自分はどうなっていたかと物思いにふけるカイト。
「どうした?ワタシに何かついているか?」
「い、いや何でもない」
「もうすぐ夜が明けるぞ!来てみろカイト」
「うわっ、ちょっとセリカ」
無意識にカイトの手を取り崖の海側にカイトを連れていき、海から朝日が昇りだした。
「き、綺麗だなあ・・」
「お前にまだこの場所の素晴らしさを見せていなかったからな!そ、それに最近お前元気がなかったから・・その」
最後まで言えず赤面し、照れてるセリカ、そんなセリカをカイトは優しく手を取りお礼を言う。
「セリカあのさ・・・これ良かったら貰ってくれ」
「髪飾り?」
「この前の戦闘で迷惑かけたし、お詫びのしるしと言うか・・俺が作った物だが」
「これは見事だな!カイトお前器用だなワタシは羨ましいぞ」
カイトがくれた羽の髪飾りを早速セリカは着けた。
「どうだ?」
「うん・・良く似合っているよ」
「姫様普段は、それを着けて女の子らしくするのも良いですよ」
「ベリルそれでは、ワタシが女の子じゃない言い方ではないか」
ベリルに茶化され更に赤くなるセリカ、その表情がとても可愛らしくカイトの目に焼き付いた。
「カイト!ありがとうなこれ気に入ったぞ」
「セリカ俺もありがとう!」
セリカに言われた、言葉が今になって心にしみて言い切れないくらいの【ありがとう】の気持ちがこみ上げた。
ベリルは知っていたカイトとセリカが無意識に手を繋ぎ朝日を眺めていた事、だが二人は朝日に感激していてそんな事は露知らず。
読んで頂きありがとうございました
次回も頑張ります