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過去からの手紙

作者: 昏月 うつろ

人とはなんなのだろうか。惰性でまわる退屈な日常を送るなか、そう思った。生活を安定させるために自分の時間を他人に売り、その分の時間を他人のために労力を使い、疲弊した精神を癒そうとせっかく手に入れたお金を娯楽につぎ込む。この一連の流れのどこに働く意味や生きる意味があるというのか。

貪欲に知識を求めるでもなく、飽くなき技術の追求をするでもなく、世界に還元できるものが何一つない。人類社会に歯車程度の存在価値しか認められない人々。

私は本が好きだ。私は生涯の大半を読書に割いてきたし、これからもそれは変わることがないのだろう。例え仕事をするようになって今までよりは時間を割けないかもしれないが、生活が安定すれば今よりもっと質をあげることができるだろう。そう、思っていた。

実際には仕事の定時に間に合うように家を出て最低でも8時間働き、場合によっては残業までしてから家に帰り、少しでも疲れをとろうと泥のように眠る。せっかくの休日もぼーっと過ごしてしまう。そんな生活を続けるていく間に、いつしか本を読むことなんか忘れてしまっていた。仕事ができれば一人前。ストレスと上手く付き合って鬱にならなければ健全。仕事と休日をしっかりオンオフして気持ちを切り替えていれば立派な社会人。趣味の範囲で楽しめれば充分。それがあるべき大人の姿。


ある日、夢をみた。不思議な少年の夢。少年は私を物珍しそうにみるとこういった。

「君は随分と変わってしまったんだね。あれだけ物語を愛していたのに。ただの社会の歯車になってしまって僕としては寂寥としたものを感じるんだけど。」

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