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春夏秋冬、少年少女のお話

腹黒シンデレラ

作者: tomato

ある蒸し暑い夏の日の、おばあちゃんの家の縁側に、当時高校生だった私と叔母一家の大事な一人娘、つまり従姉妹のハルは仲良く並んで座っていた。

私はひらがなが読めるようになったハルに、何故か乙女の夢が詰まった絵本『シンデレラ』を読み聴かせされていた。

可愛らしいソプラノの声が、時々つっかえながらも何とかシンデレラを読み終わる。


そして。


「なっとくいかないの!」


ハルは幼いその手に絵本を力いっぱい握り、そう叫んだ。


……はい?


「シンデレラはどうしてかえっちゃったの? わざわざガラスのくつをおとさなくても、おうじさまとそのままいっしょにくらせばよかったのに!」


……へ?ごもっともだけど。


しかし、夢と希望に溢れているはずの4歳児の乙女がそんなことを言うなんて。

というか、納得いかないと言われても、シンデレラっていう物語は古くからあるお話。納得とかそういう問題じゃないだろう。


でも、ハルは結構頑固だ。納得するまで私にこの疑問を投げかけるだろう。


それならば、と私は優しく笑った。


女ってのはどういう生き物なのか、社会勉強させてあげたっていいよね。




「あのね、ハル。シンデレラっていうのは……打算に溢れた腹黒い娘なの。」





今度はハルが目を丸くして、キョトンとした顔を私に向けた。




「シンデレラは、継母や姉のイジメに耐えて一生懸命働いてはいたけど、自分の持つ美貌を認識していた。……そう、『舞踏会で王子様と出会えば王子様はイチコロ!私にくぎ付けよ!』と確信していたのよ。」


お、ハルが食いついた。


「だからこそ、魔女が来てシンデレラに魔法を掛けてくれたとき、シンデレラはこの作戦を思い付いたの。

『ガラスの靴を落として帰ることで王子様に強烈な印象を残しつつ、自分は王子様に下心ありありで近付いた訳じゃなくて奥ゆかしい人間なんですよアピール作戦』をね。」



なんか私のネーミングセンスがヤバかった気がするが、気にしない。

ハルは感心しきりの顔。

小さい子の、しかも可愛い部類に入るハルの顔がコロコロ変わる様は、見ていてとても癒される。

ネーミングセンスのことなんて気にしてられないくらいには、心がホッコリするのだ。


しかし、ここで教育の手は止めない。

全てはハルの為だ。



「結果シンデレラの作戦は大成功。シンデレラの思惑には全く気付いていないピュアなイケメン王子様と結ばれて、見事に玉の輿って訳よ。」



ハルは納得した。

わずか4歳にして、私の少々小難しかった説明をハルなりに理解したようだった。



「へぇ〜…… じゃあおねえちゃん、ハルがおうじさまとけっこんするにははらぐろくなってけーさんづくでちかづけばいいの?」


うわぁ。

とても4歳児から出る台詞じゃないよね。言わせたの私だけど。


とりあえず、私が間違って植え付けたハルの過激な思考の修正だ。




「んー……世の中にはシンデレラみたいな奴なんてごまんといるからね……。


ハル、いい? シンデレラ共に靡かない奴が素敵な男なんだ。

見た目ばっかりのシンデレラ共に靡かず、ハルを全力で愛してくれる男をハルも全力で愛するの。計算なんてせずに、ね。


ハルは可愛いけど、可愛さに奢らず、計算せず、純粋に相手を思いやって愛せる女になりな。


そうしたら、絶対に素敵な王子様と結婚できるから。」




我ながらにいい教訓を残したと思う。







だって。







あれから約16年。

今、私の目の前には、



可愛らしさは変わらず、プラス大人の洗練された美しさを手に入れたハルが、すっごく綺麗なウエディングドレスを着て王子様と微笑みを交わしているのだから。




「お姉ちゃん、私、王子様見つけたよ!」





おめでとさん。

あとは、私にも王子様が見つかれば万々歳だ。


……畜生。

教訓は、私には生かされなかった。



なんちゅーか、『私』ことお姉ちゃんは報われない人です。



どうもこんにちは(もしくはおはようございます、こんばんは)。

tomatoでございます。

今回のこの「腹黒シンデレラ」という短編は、「小説家になろう」で私が文芸部誌にまだ載せていない初の短編です。


ギャグにしたかったのに。

ぬるいです。


現実の自分が結構堅物なので、ギャグがうまく書けない。

修業が必要だな、と実感しました。


個人的反省はここまでにして。



ここまでお読みくださった皆さん、ありがとうございました。


また、知らぬ間に100PVを達成していたらしい初の連載作品、「この手を伸ばして」。

たくさんの方に観ていただいてことを知り、続きをかく活力となりました。

この場を借りてお礼申し上げます。




それでは、また来てくださるのであれば、次回短編もしくは連載第三話でお会いしましょう。



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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のオチでクスッと笑ってしまいました。面白かったです。
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