宝珠と巫女
「っぅうあああああああ”」
全身から奪われる生命と精神のエネルギー。
そして同時に宝珠と共鳴させられ増えるエネルギー。
苦痛がどうしても悲鳴となって外へ出た。
目を見開いてうっすらと自分の現状を見る。
「ふん、いいぞいいぞ、もっと奪い取ってしまえ。」
「やはり、こいつも奪って正解だな。
あいつら政府がうまくやってこれてたのもこいつのせいだったのだから」
「一石二鳥だな。もうあいつらに未来を予知する力はない。
そして俺たちの天下だ。もう好きにはさせない。」
「あぁ。宝珠も巫女も俺たちの手の中にある限りな」
魔法陣が刻まれる床で私は鎖でつながれ、つるし上げられていた。
宝珠が浮かび上がり、私の能力の力の源と共鳴し、奪い、増やしていく。
「ぁああああああああ!」
言葉にならない痛みが全身を襲う。
意思とは相反する力の動きだ。
その中でもうカラダにないであろう己の自我の中、攫われたことを思い出した。
ーー気を失う前は、殿下といたはずなのだ。
意識を取り戻したときは、寝かされていて、起き上がるが、動けなくて。
力を無理に使った倦怠感が身体に残っていた。
そのあとすぐに、何者かが窓をぶち破って私を捉えた。
抵抗なんて、できるはずがなかった。
魔力で抑えられ、もともと動かない身体を戒められる。
最後に・・消えていく意識の中で見たのも悲痛に叫ぶ殿下しかみていない。
再び意識を取り戻したときはすでに宝珠との共鳴に入っている。
「ッああああ、ああ、っぁあ、ぅっ」
全ての力が抜かれた。
痛みがやんでいく。もう身体が空っぽだ。
今在る生命エネルギーでさえ、消える寸前だろう。
「そろそろやばいんじゃないか、こいつ死ぬぞ」
「そうだな、今死なれるのはやぶさかではない」
「っーーぅはぁっ、はぁっ・・--」
息が苦しい。吸っても吸っても足りない。
そんな病状が現れる。
「っはぁっー”ぁーぅっ、ぅぁあ、ぅく”」
くる、しい。くる、しい。ぃや、しに、たく、ない・・--。
最初は怖かった。
ただただ死にたくなかった。苦しみから逃れたかった。
身体はとっくのとんまに動かない。
心がただ悲鳴を上げ続けた。
だが、そんなものを誘拐犯が聞いてくれるはずがなく、
くるひもくるひもーー・・
「ぅああああああああ!!」
「そうだそうだ、共鳴しろ」
「宝珠に力を全て注げ」
「ぁああああああああ”」
宝珠に力を奪われ、抜かれては、増やされ、抜かれていくの繰り返しだった。
当然、身体は麻痺し、このごろは声もきこえない。
視界も闇に染まるか、苦痛に真っ白にされるかの二つだ。
「もっとーーほ、--な。」
「そーー、だなーー、-力が、・・---だ」
もっとほしいな。
そうだな。魔力がもっと必要だ。
かろうじて、声色から判断できる内容。
もう彼らの姿は見えない。遠くでしか声も言っているようにしか聞こえない。
真っ暗だ。
つるし上げられている感覚すらなかった。
****
私は、何も考えられなくなった。
抵抗する余力も、言葉を発する力もなく、
ただされるがままになっていく日々。
目を開けているのかもしれないが・・--何も見えなくなった。
いや、光は受け取れる。だがーー身体は麻痺し、聞こえない。
「----」
ただ力がたまれば、抜かれていく感覚だけがして
次第に痛みは感じなくなる。
しかし、ぼんやりとした意識はあった。
色が景色が見えるはずの瞳には魔力の塊である人間のシルエットだけがうつる。
もう身体に感じる刺激すら受け取れない状況なのに意識はあった。
もう人間ではないのかも・・と思える体の感覚だった。
人間には見えない、人間の中の魔力の流れが見える。
人間の顔や服装は見えない。
ただ人間の魔力の流れと気配だけ。
声はなにかそこに含まれる感情ぐらいしかわからない。
言っている言葉自体・・つまり声の音がきこえなかった。
よほど耳元で叫ばれないと、聞こえないかもしれないほどに、
私は衰弱していた。
もう、人間の域を超えた。
私は、もうじき 死 ぬ ん だ 。
もう生きることに未練を思うことができなくなるほど
感情は失われていった。
そんな中ーーーーーー
「リンーーーーー!!!”」
私を呼ぶ声が、新たな魔力の気配と共に、聞こえたような気がした。
光が、闇にあった私に、手をさしのべてくれた。