次から次へと
それから俺はなにをしたかはっきり覚えていない。
ただ医者の言葉に頷き、
騎士達には宝珠の警備を強めることを指示したぐらいだろう。
だが、そんなときにも心は上の空だった。
いつもいつも彼女のことを考える。
「・・---」
あれから数日が経つ。
それでも彼女に意識は戻らなかった。
このまま取り戻せずにいたらどうすればいい。
どうすれば・・。
ただそれだけを考えた。
いつも頭の中には医者の言った
命を落してしまいます。
という言葉がずっと響いていた。
やまびこが繰り返されている感じだ。
だがそんなことを考える暇もなく
俺は忙しくなり始めた。
そんなときだ。
ガシャァアンンッ
夜中、窓ガラスの割れた音が聞こえた。
「な、なんだ!」
ざわざわと騎士が騒ぐ。
いやな予感がする。
急いで宝珠の元に駆け寄った。
しかし・・--
「宝珠はいただくぞ」
黒い覆面をかぶった男がすでに宝珠を手に入れていた。
「ま、まて・・!!」
騎士がいっせいに攻撃を仕掛ける。
キンッ、キキンッ”
剣の響く音。
俺達は苦労した。
宝珠を取り戻そうと。
そして犯人は、逃げようと。
お互い苦戦していた。
だがそんな状況でも俺にはまるで起こっていることに現実味がわかず
白昼夢でも見ている感覚におちいっていた。
戦闘もそろそろ終盤だ。
集中力の切れるのはこちらが少し早かった。
それがあだになり、逃げる隙を作ってしまう。
「ふんっ、お前らにいいことを教えてやろう。
俺らが貰うのはこの宝珠だけではない。
巫女もだ」
「な、なんだと!?」
さっと、翻して去っていく男の言葉に
やっと、俺はハッとなって我に帰った。
リンだーー!
リンが攫われる・・!!
ただそれだけが身体を駆け抜けていった。
すぐに俺はリンの元へと走る。
バタンッ
そしてけり倒すように部屋を開けた。
「リン・・--!!」
「で、・・んか・・・っ”」
久しぶりに彼女の声を聞いた。
だが、もう遅かった。
「巫女は貰っていくぞ」
彼女は他の男にそうして連れ去られてしまった。
残るのは、割られた窓ガラスと
悲惨なさっきまで彼女の眠っていた寝台だけだった。
「リン!!リーーンッ!!」
俺は叫んだ。




