代償
「・・殿下、
あなたはリンさまの能力をご存知ですね?」
「!?」
俺はその確信した言い方に固まった。
何故医者が・・知ってる?分かる?
疑問ばかりが押し寄せる。
だがそれ以上に、
能力のことでリンが倒れたということは少なからず当たっていそうだった。
「・・やはり、--知っていて、使わせていたのですね」
俺が固まって黙り込む姿に
はぁーと、深く医者はため息をついた。
「殿下が婚約者をつくったという情報が私にも回ってきました。
そして、その相手が平民の身分であり、名前がリン様だと分かったところで、
貴方の目的が未来予知ではないかと思ったのです。」
そう、己の推論を話し始める。
だがそれは、俺が謎に思う部分を遠慮なく広げるものだった。
「・・どうして、医者であるお前が、その
能力について知っている?」
おもわず、そう正直に聞いてしまう。
リンの持つ能力は世間では深く知れ渡っていない幻の能力だ。
「正直に言います。
私は・・、いや、僕はーー、医者になる前に、神官をやっていましたから」
ふと、悲しげに医者は吐露した。
「神官・・だと?」
俺は眉をひそめた。
その悲しげな表情よりも、医者になる前の職業名に興味を引かれた。
「はい。神官は、神に使える仕事だけでなく、
神から恵まれた能力を持つものに対しての道標も示していましたから。」
神官の主な仕事は、神を崇め、奉り、浄化を導くことだ。
まさか、能力のことまでとは・・思いもしなかった。
「・・そこであったのが、リンだといいたいのか」
「--はい。リンさまも能力で悩んでいた中のお一人です。
僕は、リン様の相談を受け持った一人の神官でした。
だから、能力も、その代償も知っているのです。」
「代償だと・・?」
リンの能力を知り、それについて聞いたとき、リンは代償についてはいわなかった。
ほぼ無限に聞けるとまで言っていた。
だが、未来を予知するぐらい大きなものなのだから、それ相応の代価は・・
そこまで考えて、おれは、青ざめた。
「そうです。神官もその能力も、純潔が大きな鍵でした。
リン様の持つ能力は巫女が本来持つ能力です。
能力を維持するためには純潔でいることが必須だったのです。」
「!!」
俺はハンマーで頭をたたかれたような気分に陥った。
「つまり、彼女が倒れた原因は、
純潔でなくなってしまったことだと、言いたいのです。
貴方の目的は彼女の能力だと察してます。
だからこそ、こんな状況にはならないと思ったのですが・・」
「・・っ”」
未来予知は、代償が純潔だと・・
この話をされたことから既に俺の中で罪悪感と後悔がうずまいた。
「能力は純潔でなくなるだけでは失われません。
ただ・・身体への負担が大きくなってしまうのです。
命を削る・・そういっても過言ではないでしょう。
ーー殿下、言っている意味がわかりますか?」
「・・!!」
俺は唇を噛み締めた。
俺はどうしようもないことをしてしまったんだ。
一時の感情に負けて・・
彼女に身体の関係まで求めてしまった俺が・・
俺が彼女を追い詰めてたというのか!!
そうだ、俺が求めた。彼女に求めたのは能力。
最初はその能力だけだった。
他、ただのついでだとしか思ってなかった。
欲求を満たすのはついでだとしか思ってなかった。
だが、そのついでが、彼女の命を削り、ここまで限界を超えさせたのは
俺自身だった。
彼女は純潔を奪われても変わらなかった。
いや、変わらない様に見えた。
だがそれは俺の驕りでしかなかったんだ。
その甘えが彼女を失う寸前にまでもっていった。
なんで、彼女にこんなことを求めてしまったんだ。
求めなければ、彼女は命を削らなくてすんだのに。
何故・・、どうして・・---
「殿下、無礼を承知で忠告します。
殿下、彼女の身体を第一に考えるなら、
もう未来を見る能力を使わせるのはお控えください。
もうこれ以上彼女が使えば・・彼女はーー・・」
ーー命を落してしまいます。
「!!」
雷が落雷したときのように、
俺の心にそれは深い刃となってグサッと突き刺さった。