能力の招いた結果
俺は王国軍の指揮をする立場にある。
故に俺は、リンの能力を利用し、
事前に、宝珠を奪還するための準備を行った。
「--今晩、宝珠を簒奪した罪人は、
城に最も近い宿に集まるという情報が手に入った。
各隊に分かれてその宿を取り囲む。
誰一人逃さぬよう配置に着け。」
俺はそう指示を出した。
そして、三日月の今夜。
その宿はその日に限って団体の貸切となった。
リンの説明どおり、集まったのだろう。
そして、俺は、騎士数人を連れて、広間の中に大きな音を立てて
入る。
「覚悟しろ、罪人ども。
宝珠は返してもらうぞ」
「何故、ここが!?
に、逃げろーーー!!」
集団の親玉がそう号令をかけたと同時に乱戦が始まる。
騎士も賊もその場で戦い始めた。
俺は宝珠をその身に持つ奴だけを追い、
奪い返す。
ザッザッザッ!
どれほどの長い時間を
剣で賊をなぎ払っただろうか
剣に血のにおいが染み付き、赤く染まる。
ピシッ!
ついに親玉を追い詰めた。
その首筋に剣を突きつける。
「宝珠は返してもらったぞ」
俺は片手で宝珠を持ち、不敵に笑った。
王国軍の勝利を示すかのように黄金の宝珠が煌めいていた。
その後、賊の多くを牢屋に放り込み、
尋問を幾度となくくりかえす。
数人は逃がしたものの、相当な深手を負ったはずだ。
宝珠も警備を強化した場所に奉納し、
俺も帰路に着く。
その夜は、リンの部屋には訪れなかった。
翌日、俺は再び騎士と共に、尋問を罪人に繰り返す。
「宝珠を使って何をしようとしていた?答えろ!」
「お前らに教えることなんてない・・!
王族の犬どもめ!!」
王族を卑下した言葉ばかりが罪人の口から出される。
そいつらを殺す勢いで刑罰を与えるが、
いい情報がつかめないまま夕方になってしまった。
どうしたら、口を開くだろうか。
いや、宝珠を取り戻せただけでも大きな手柄だ。
リンに聞きさえすれば、情報も入手できるだろう。
そう考えながら、赤い夕日の光が照らす庭を歩いていると、
バシャッ!!
水の勢いよくかかる音が聞こえた。
そちらのほうを振り向くと、逆光でみにくいが、仁王立ちの女と、
見慣れぬ男。そして、そこには地面に倒れこんだびしょぬれの女がいた。
「平民の分際でよくもレオさまにちかづいたわね!?
おかげで私たちは無視されっぱなしよ!これもあ平民の貴方のせいだわっ
さぁ、やってしまいなさいっ」
「ほんとうにいいのか?こんなところでヤルのはもったないな・・
こんな美女・・」
女のわずらわしい高い声が響く。
そして、男の低い声も。
「・・!?」
男が、地面に倒れこんだびしょぬれの女を組み敷いた。
その女は・・
キラリと、赤い光が一瞬女の髪を照らした・・その色は、銀!!
「リン・・!!」
俺は思わずその名を叫んだ。
そう、リンだった。
「・・・殿下」
かすかに震えていたリンの声が耳についた。
「レオ様・・・!?」
「・・なに・・!?」
「お前ら、俺の婚約者に手を出すとは、いい度胸をしている。
そこの女、確か、ダイレッド家の女だな。あとで覚えていろよ」
俺は、膨れ上がった怒りを抑えながら、ただ殺気を込めて、
あとずさった二人をにらみ、リンに駆け寄る。
リンは俺を見上げていた。
ぽたっぽたっとリンの髪から水が滴る。
リンの顔は青ざめていて驚いた顔をしている。
「リン、大丈夫か」
俺に、そう心配する資格はない。
だが、そう聞かずにはいられない。
俺がこいつを、・・平民の身分であったリンを婚約者にしたから、
こういう扱いを受けたのだから。
「大丈夫です。
助かりました・・」
そう答えるリンだが、やはりかすかに声が震えている。
怒りが、
リンにこういうおろかなことをした彼らに怒りが膨れ上がる。
リンは・・俺のものだ!
俺は彼女を抱き上げた。
「処罰は追ってくだす。
己のした事を悔やめ、貴族風情が」
俺は、そうはき捨てて、
早急に己の部屋にリンを抱きかかえて戻ったのだった。