表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

愛とは程遠く

時は、前世の年代から数百年後。

場所は王国のとある貴族達の交流会。


「リン、これから、あの子の面倒を見てあげて」


前世の記憶をもつ私は、再び同じ名前をつけられて、育った。

まだ年を数えて十才ぐらい。


「あの、子?」


母が私に少し遠くで私をじっと見つめる男の子を示した。


「そうよ、名前は、レオ。

貴方の婚約者よ。」


「レオーーっ!?婚約者!?」


前世の記憶の断片がよみがえる。


ーー次はーーー愛したい。ーーー



前世の彼との別れのときの記憶だ。


「リン?」


「う、ううん、なんでもない。

それより、面倒を見るってどういうこと?」


ハッとなって母に問いかける。

ちらりとレオを見つめながら。


「彼はね、愛を知らないの。

ううん、感情が喪失しているのよ」


「感情が、ない、の?」


「そう。まるで天罰みたいにね、最初からないの。」


「天罰・・。」


私はその言葉に顔を蒼くする。

あれは、レオのせいじゃないのに。


なのに、レオが天罰を・・。


(これは、私への試練よ)


「!」


声が聞こえた。


心の中から聞こえる声。


試練?


(私が、愛したかったと言ったから。)


愛したかった?

だから?


(愛してもらった分の恩返し。)


「!!」

恩返し!!そういえば、返したいと、いった。

だからっ!!


「どうしたの?リン」


「う、ううん、なんでもない。

私ができるなら・・レオを、救いたい」


「できるわ、リンなら必ず」


「え?」


「だって、お互い結ばれる運命なのだから」


「??」


母の言っていることはさっぱりだった。

神様がまるでいっているように聞こえる。


「うん、じゃあ、遊んでくる、あの子と」

「ええ、いってらっしゃい」


とりあえず、話してみよう。

彼も、もっているかもしれない。・・前世の記憶を。


私は彼に近づいた。


「・・レオ!」


「!」


男の子は目を見開いた。


だけど、瞳に感情の色はなくて。


おもわずーー


「レオ。私、リン。

私、レオのこと、好きになりたい!愛したい!!」


私はそう言ってしまった。


「っリン!?」


彼が言葉を発した。

感情の色が瞳に宿る。


レオが近づいて、私の腕を捕らえる。

瞬間、恐怖を覚えた。


「ひゃっ、ごめんなさーー」


わ、私、初対面なのに、なにをいっているんだろう!


恐怖に身体がすくみ、おもわずぎゅっと目をつぶった。


腕を引き寄せられる。

グラッ


体が傾いた。


た、倒れるーーー!!


どさっ


ぎゅぅうう


「!」


身体に当たるのは、男の子の身体。

私は、彼の腕の中にいた。


ぎゅっと力強く抱きしめられる。


「リン、ずっと会いたかった!!」


「んっ!!」


唇がふさがれた。彼のそれによって。


隙間なく埋められる、深い愛情。


それはとてもいとおしくて。

手放したくなくなるような・・とろけるキス。


恐怖からそれは解き放ってくれた。


それが現世の出会い。



それからというもの、共に成長し、恋を、愛を育んだ。

彼の感情喪失は嘘のように私に愛情をくれた。




*****時は数年後。


「俺と結婚してくれ、リン」


結婚できる歳になり、彼は私にプロポーズした。


「!レオ・・。--」


私はほしい言葉が貰えず目をそらす。


「!な、なんだ?リン、嫌か?俺が嫌いになったか?」


返事をしない私に彼は急に不安そうに呟いた。


「お、レオが振られてっぞ。

じゃあ、リンちゃん、俺と結婚してくれー!!」


「!?」


何者かの邪魔が入った。


その男はなんの躊躇もなく私の手を握る。


「なに!?」


レオの叫びが聞こえる。


「・・あなたも、いわないのね」


ぼそっと私は呟いた。

今来た人も彼も言ってくれない。


「え?」


今来た人が呆けたように呟くと


「リンはーー絶対渡さない!!もう失わないって決めたんだっ!

リン、そいつから離れろーー!」


ドカッ


ーーズテッ


レオがそいつをはじきとばした。私が離れる前に。

遠くに吹っ飛ばされる男の人。


「あんな奴、視界に入れるな!」


ぼんやりみていると、レオが近づいてきた。

私に怒鳴りつける。彼はいつからこんな必死に私を護るようになっただろう。


愛だけじゃ表現しきれない。


そしてレオが私を抱き寄せて唇を奪った。


「んん!」


深い、キス。

唇をこじ開けられ、舌を絡ませ、キスを味わう。


「んぅ、・・んんっ、レオッーー」


私は彼を押しやい、離れた。

肩で荒く息をする。甘い。痺れて、何も考えられなかった。

だが、今度こそはと思いーー逃れることにする。


「リンッ!?」


拒絶されたと思ったのか彼は目を見開いた。


「レオ、肝心な言葉がなかった。

私は、いってほしいのに。

それとも・・私に言わせたいの?」


いつから、自分はこんなに自信をつけたのだろう。

前世ではありえない言動だ。


「ッリンーー?」


「やっぱり、私が言わなきゃ駄目なのね」


「!」


「レオ、好き。この世に生まれたときから、会ったときからずっと。

あのときも愛したかった。今は、愛せてる。愛してる、大好きだよ、レオ」


私は言った。

前世ではいえなかった分を、今、全部、いった。


もう後悔はしていない。これから幸せになるのだから。

今までも十分幸せだったけど。


「リン!!」


「もぅ、貴方が言わないから。全部言ったのよ。

本当ならプロポーズする側がするはずでしょう。

でも、しょうがないわね、前世では私が言うっていったようなものだから」


次は愛したい。次は返したい。


レオはやっと、悟ったように、笑った。


「リン、悪い。大事な言葉が抜けたようだ。

愛してる。お前が死んでからもずっとーー、愛してる。

今も変わらない。だけど、リン」


「なに?」


「俺はお前を愛してるだけじゃ、表現しきれないんだ。

絶対、護るし、絶対、放したくない。もう失いたくないんだ。」


「・・レオ。うれしい・・けど

それはまるで貴方の私有物みたいないい方。

レオの独占欲かしらそれとも、奉仕欲?」


私は笑って諭した。大好き。本当に。

愛してる、だけじゃ表現しきれないなんて。


「ははっ、そうだな。ある意味、

愛から程遠いかもしれん。だがいいだろう?」


「ん?」


「お前だけのものなんだよ、俺は。

そしてお前は俺のものだ。リンだけは絶対裏切らない。

そういう自信がある」


「ありがとう、レオ。

生まれ変わってきてよかった。

前世では愛。今は独占と奉仕欲^。私は幸せよ」


「あぁ、俺も幸せだ。じゃあ、改めて言う」

「えぇ。改めて頷かせて頂戴」


「リン、俺はお前を愛してる。お前だけのもの(騎士)になりたい。

俺と結婚してくれ」


「えぇ、喜んで」


二人は改めて、体を抱き寄せ、どちらからともなくキスをした。


ある意味、愛とは程遠いものを彼女はもらった。


前世から現世にわたるまでの長い試練を、

彼女たちはようやく乗り越え、結ばれたのだった。



end


一気に最終話まで投稿いたしました。

ここまで読んでいただいた読者様に感謝感激です。


愛とは程遠く。ある意味遠い感情ですよね。

愛のような愛ではないような・・みたいな。


これで完結となりました。

他にも不肖ながら鎌鼬、連載しております。


よろしければお読みになってください。


本当にありがとうございました。


*後のこの二人*


「リン、お前ー・・こんな物言う奴だったけ?」

「そうですか?レオも変わったわ。」

「どこが?」

「ヘタレになった」

「!?リンッ!それはないだろうっっ」

「だって、ねぇー。

男が一人でも近寄ったらすぐ殺す勢いだもの。」

「!」

「あなたのせいで男友達できずに終わったわ」

「お前に他の男はいらんっ!俺だけで十分だ!

そうだろ、リンっ」

「えぇー?ほしいわよ、数人。」

「リンッ!そこはうなずけよ」

「いやよーだって貴方だけなんてつまんない」

「じゃあボクがなろうか?リンちゃん」

「あら、さっき求婚してくれた人」

「きさまーー!リンに近づくなー!」

「さっき途中から存在感皆無だったものね」

「そうそう。」

「リンはわたさない!ぜったいに!待てーー!」


「レオがそんなんだから私に近づく男がいないのよ」

「待てー!!」

「うわぁああーーやばっあれガチだっっー」


「まぁ、いっか。レオだけがいれば」



二人は幸せに末永く前世の分まで暮らしたのでした。ちゃんちゃん。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ