“愛”
「リン!!」
呼ばれた。
それは確かなことだといえた。
目の前で何が起こっているかはよく分からない。
ただ新たな魔力の気配を持つシルエットが目の前にあった。
たぶんこれはー・・
「で、ん、-っか・・?」
だった。
よく声が出たなぁーとぼんやりと考えながらシルエットを見た。
懐かしい。助けに来てくれたのだろうか。
だがそんなことは起こるはずもないと一方では思っていた。
もう、助けられたとしても能力は元には戻らないはずだ。
ーー彼の傍にいる理由は、どこにも、ない。
彼が、必要とする理由が、他にない。
「よくもリンと宝珠を奪ってくれたな」
「なぜ、--が、わかーー!?みな、やっーーえ!!」
「おーー!!」
殿下の声だけがなぜか鮮明に聞こえた。
何故だろう。不思議だ。
犯人達と殿下のシルエットが交わる。
魔力が外で具現化され、争いが起こった。
ただ私は見ていた。
顔も服装も何も見えないのに、魔力の動きだけを。
それをみていながらもうやはり自分は死ぬのだと感じていた。
コロコロコロー・・・
宝珠の転がる音がした。
私の傍まで転がってくる。
宝珠は、私の力を全て溜め込んだ代物だ。
その力がらんらんと輝いてみえる。
シルエットたちの争いもだいぶ進んできた。
殿下のほうがやや有利な状況。
「このままこいつらを捕獲せよ」
「御意。--」
そうして犯人達のシルエットは動くに動けない状況となり、
「リンッ!!」
殿下が傍に駆けつけてきた。
それがわかるのに、見えない。どんな表情をしてるのか、分からない。
かみ、さまーー、どうか、最後、だけでもーー・・。
神に祈った。
助けられても私は遅い。だから助けに来てくれた殿下に一言だけでもーー・・。
「今助けるからな!!」
ーーー、ブチッ 千切れる音。
そういわれ、何かが起こり、体が前方へ倒れた。
目の前が完全に見えなくなるーー
「リンッ!!」
ふわっ
殿下にふんわりと受け止められた。
宝珠を片手に、私を腕の中にしまいこむ。
「リン!やっとみつけた。
もう、何があっても守るから」
ドクン、ドクン、ドクン
宝珠の鼓動が聞こえる。
おもわず宝珠に動かないはずの手を伸ばす。
「リン?」
宝珠に、ふと、触れる。
宝珠がそばにあることで、私の力が徐々に戻ってくるような気さえした。
視界が、声が、一時的に戻った気がした。
・・あぁ!神様、奇跡を、くださったのですね。
これが、きっともう生きられない
ーーーーーーーーーーー私 の 最後の 時間
「殿下・・--、ありが、とう、ございま、す。
で、も、私は、限界です・・--もう身体から、力は出ない。」
「リン・・?なに、をいっているんだ」
殿下を見たくて、顔を上げた。
すると、魔力のシルエットだった殿下の顔が見える。
驚いた顔をしていた。
「もぅ、私は生き、られないーー。
最後に、殿下の・・、レオの、顔が、見れてよかった」
「っさっきから何を言っているんだ、リン!!
俺が助ける。絶対に救う!!
だからそんなこといわないでくれ、愛してるから!!」
優しい瞳。私の言葉を懸命に彼は否定した。
そして、私に、唯一もうもらえない言葉と情をくれた。
でももう気づいてる。
私の命のともし火は終わりをつげようとしていることに。
「あり、がとう、レオ。私は、ずっと、愛なんてもらえないと思ってた。
だからー・・諦めてた。力になれるならそれでいいと」
「リンッ!もういい!もうこれ以上話さないでくれ!
すぐに医者を呼ぶから!!」
「だけど・・愛したかった。レオ、
もう、私は貴方に返せない。--再び、
転生されて、会えるなら、今度こそーー返したい。」
意識が天へと上っていく。
彼の表情が焦りでいっぱいになる。悲痛な声色で叫ぶ。
「リンッ!!駄目だ、逝くな!リン!
俺を置いていくなーー!!」
「レオ、笑ってー・・生きて。最後まで。
レオ、ありがとうー・・
今まで、レオに必要にされていてうれしかった。」
「リンッ!!俺はっっ」
「次は、レオに愛されて生きたいーー、私も、愛したい。
能力だけじゃなくて、ほかにも必要とされたい。
レオ、笑ってー・・、あなたの、笑った、顔、が、みた、い」
「リンッ!!!」
レオは最後に泣き笑いを浮かべた。
ありが、とうー、神様。私は、愛されて、いました。
私は、幸せ、です。
能力しか必要とされなかった自分。
でも最後には愛されていた。婚約者としての情を。
一人の男として女の私に対する私だけの愛。
ありがとう、レオ。
次にうまれ、かわった、ときにはーー、私が貴方を、愛するから。
ーー私は視界の狭まった目を閉じて、天へと、昇ったのだった。




