プロローグ
この物語はフィクションです。
遠野遺伝子工学研究所。
それは、戦前の人体実験の流れを汲む、世の表舞台に出ることのない極秘の研究所。
遺伝子研究のほか、臓器移植、冷凍睡眠などの研究を行うが、その多くは法や生命倫理に抵触する。
遺伝子操作による人工児の第12号として誕生した女児には、「二葉」という名がつけられた。研究所の二代目所長、遠野基の遺伝子を継ぐ二葉は、多忙で育児能力のない基の代わりに、忠実な研究員夫婦のもとに預けられた。研究員夫婦は表の世界にもどり、二葉を穏やかな環境のもとで大切に育てた。
二葉が12歳のとき、突然、基の妹「美鈴」が迎えに来た。
育ての父母と別れ、二葉は研究所に連れ戻された。
だが、そこに待っていたのは、二葉の親友「セシリア」の変わり果てた姿だった。可愛くて優しくて賢いセシリアは、美鈴に拉致され、冷凍睡眠カプセルの中に眠らされていたのである。
二葉に与えられた使命は、新たな人体実験の材料となる優秀な若者を探すため、全国の学校を渡り歩くこと。
もし他人にこの研究所のことを話したり逆らえば、セシリアは殺され、二葉自身も実験材料として刻まれるという。
基は、二葉の耳たぶに発信機と盗聴器つきの赤いピアスを埋め込んだ。それは、二葉が研究所の実験のためにつくられた「道具」である証。
その紅蓮の色こそが、二葉の道―