実況魔法で逆転勝利!〜追放されるはずの私は、転生王子の「実況解説」に救われる
「メイリア、君との婚約を破棄する。君があんなに悪い女だとは思わなかったよ」
婚約破棄? いきなりそんなことを言われましても、意味が分かりません。
私たちの為に皆がわざわざ足を運んでくれているというのに、何をするつもりですの? もしかしてですけど、私嵌められたんですの? だとしたら許せませんわね。けれど、私はこの国のカーストでは低い御身分ですから何もできることはありませんわ。
今身につけている純白のドレスも、豪華絢爛なネックレスも、全てあの第一王子フロイスが私にくださった物ですから。元々の力が何も無い私にこの場を切り抜けられる程の力も知恵もありません。
ああ……周りの人たちも私のことをそんな女だったのか? という目で見ていますわ……。
「悪くありませんわね……」
「何だと?」
「っ……い、いえ! 何でもありませんわ」
つい呟いてしまいました。でもどうしましょう。本当に。
このまま流されるわけにも行きませんし。
「皆よ! この紙を見るが良い。これはメイリアが行ってきた非道についてまとめた紙だ。さあ! 騎士団よ、バラ撒け!」
そう言ってフロイスは声を荒げ、騎士団を呼び、紙を式場にバラ撒きましたわ。
って、なんですのこれ? フロイスを階段から落とそうとしていたり、落書きをしていたり、資金強奪、殺傷……。濡れ衣も良いところです。ですが、その証拠がありません。いくらここで私が声を荒げたところでフロイスのような皆を信用させる声はありません。
ああ、今もみなさんが紙を拾ってまじまじと紙を見つめている。私のことを悪人とでも見るようにッ! くっ、くッ! い、いえ、行けません。自分の状況をしっかりと見るのですわ! メイリア。絶体絶命、崖っぷち、死ぬ間際ですのよ……社会的に。
ですが、ですが……どうしろと?
奇跡を願うしかありませ———
「ちょっと待ったー!」
「!?」
「あ、あれは!」
こんなタイミングよく来てくれるんですのー!? あれは、あれは最近知り合ったばかりの転生者さん兼第二王子のハルルドじゃありませんの? 私を助けに来てくれたんですね!
私は走ってハルルドの目の前まで駆け寄りました。
「ハルルド! 来てくれたんですね?」
「ああ、来たよメイリア。……兄様、悪行はそこまでです」
「なあにを言っているんだハルルドッ! 悪行を行っていたのはこ、この女だぞッ!」
フロイスはまたも声を荒げる。しかし、今は観衆の目はハルルドに向いていましたわ。そしてハルルドは息をスゥ~っと吸い込み、
「さあー始まりました、フロイス兄様の恥晒し会! 及び、第一王子剥奪会」
「ハァ? 何を言———」
「はいはい、兄様は黙ってて。解説席にはなんと! 隣国の兄様の親友! カイリス王子にも来てもらいましたーッ! パチパチパチー」
私は口を開けて唖然とすることしかできませんでした。わ、も抜けるほど。元々私は庶民上がり、わなんてつけるような人間ではなかったのだ。こうして心の中で周囲の状況を語ってしまうくらいには変人だったのに、なぜかフロイス王子が告白してきたことに疑問を持つべきだった。
この実況? はハルルドの魔法らしい。転生特典? で貰ったとは聞いていたけれど、まさか私の為に使ってくれるとは思わなかった。だって、このスキルを使うには必要な人と証拠が欲しいらしいから。
式場の最前列の席に隣り合わせで座った二人は実況解説を始める。
「さあさあ、まずはこの悪行の書いてある紙ですが、親友! のカイリス王子に説明してもらいましょう」
カイリス王子は唇を噛み締めながら「スマン、フロイス」と言い口を動かそうとすると、
「や、やめろー! なあ、カイリス、な? やめろ、嘘を言うんじゃない!」
と焦りだした。
けれど、周りの観衆が面白そうと思ったのか、
「言っちゃえよー!」
「言ってー」
と言い出しました。
この焦り様を見れば大体黒だとみんなも思ったのでしょう、形勢逆転……ですわ!
「この紙をよく見てほしい。字の印字が偽物だ、雑だろう? その瞬時なら騙せると思ったんだろうな。証拠はここにある」
と言って、カイリス王子は懐からフロイスが使ったであろう履歴書を取り出しました。あれは確かにフロイスの筆記ですね。カイリス王子は協力させられて、口止めされていたんでしょう。親友だからと。
「何を言っている。第一、印字は私が書き換えたとて、この写真はどうなる?」
「いやあ、良い所を指摘してくれましたね兄様。兄様様々といったところです、その写真の溶け具合はなんです?」
「は?」
フロイスが手に握りしめていた紙の写真が形を留めずに溶け出していました。これは一体?
「その写真もおそらく、というか十中八九偽造ですね! 焦りから緊張時に手汗をかきやすい体質で助かりましたー。詰めが甘かったようですねー兄様」
「な、なッ! ……クソッ!」
なんと。ちゃんと調べていらしたんですね……。フロイスは地面を両手で叩き、顔を伏せました。これは……こちら側の勝利ですね!
「ありがとうございました、ハルルド王子!」
「お礼には及びませんよ、自分が勝手にやったことですし……。さてと、フロイス兄様は負けを認めますか?」
そう言って私の頭をぽんと軽く撫でてハルルドはフロイスの方へ歩いていきます。あの男が簡単に負けを認めるとは思えないですが。
「さあ、どうします? 兄様」
「ハッ、いい気になるなよ、弟風情が———」
「!?」
私は目をまた丸くしました。なぜかと言えば、フロイスがその場で急に気絶したからです。ハルルドは何もしていなかったのに、なぜ?
「ああ、皆さん驚きましたよね。僕の魔法はこういうもので、特定の人物と証拠を提示して、相手が言い返せなかった場合、もしくは攻撃してきた場合、こうやって自動的に気絶させれるんです! 今回の勝負いかがでしたか? カイリス王子」
満面の笑みでそう言うハルルドにカイリス王子は、
「……親友がやっていた悪行を止められて良かったよ。君が僕を見つけて、この魔法を使ってくれなければ、メイリアさんは悪人とされていただろうからね。……本当に申し訳ない、メイリアさん」
と言って涙を流しました。
私はカイリス王子に歩み寄って……、
「カイリス王子、泣かなくて良いんですよ? カイリス王子は親友と見知らぬ私を天秤に賭けて、親友を選んだ。当然のことです。それに、協力させられていただけで、悪いのは全てフロイスなのですから。でしょう? カイリス王子」
「ッ……、優しいんだな君は。っ……ありがとう」
笑顔でそう言ってくれて良かったです。私も笑顔を返せますから。
私はハルルドの側に駆け寄り、
「あ、ハルルド! ……その、ありがとう」
そう声をかけました。ありがとう……そんな言葉で済まないのは分かっているけれど、多分ハルルドはありがとうと言ってほしいと私は思った。
「どういたしまして。そうだ、ちょっと二人で話そう」
「良いですよ。私も話したかったです」
私たちは式場の外に出ました。外はもう暗くなっていて、月が唯一の明かりですけど、その光が私たちを照らしてくれている気がします。それくらい明るい月でした。
「……」
なぜでしょう、ドクドクと鼓動が止まりません。私ってばやっぱり……、
「あの! 私、ハルルドのことが!」
「……、自分も好きですよ。っと、魔法関係無しにメイリアのことを実況するのなら……。さあメイリアの鼓動が高まってましたー! これはまさに恋、恋の鼓動でしょう! さて、メイリアはここからどうするんだ? おっとー? ……。って、冗談は置いておいて、さあどうする? メイリア。僕はいつでも良いよ」
「ッ———」
その時私は身体に任せていました。温かい肌が触れ、その時久しぶりに幸せを得た気がします……わ。
「大好きです。ハルルド」




