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ジョバンニ

モミジちゃんはテーブルに置いてあるわたしが理解できなかった丸い板を手に取ってぐるぐるまわして眺めた。

「これは銀河帯ぎんがたいの地図だよ」

「うそっ!」

「ほんと。やっぱり黒曜石製だね」

「白くあらわされてるのが天の川で岸に沿って鉄道の線路が伸びてるでしょ?青やオレンジや緑の宝石はそれぞれの停車場だね」

「そうやって観るんだ」

「実は銀河鉄道って現世の行いによって降りる駅がさまざまなんだよねぇ。客室の等級だってきっとそう。1番最後尾に乗ってた凶悪犯のおじさんは地獄の駅に降ろされたんだと思うよ。テレビのニュースで昨日流れてたの。殺された犠牲者の妹に復讐されて酷い殺されかたしたんだって。監禁されて拷問の末に殺されたって。無惨な死体が河原で発見されたんだよ」

「わたしは子猫ちゃんを助けて死んだから天国行き?」

「そうだね。大きな徳を積んでるよね」

「ラッキー♩」

わたしはパチンと指を鳴らす。

「シェフさんに駅の数を聞いたら44駅って教えてくれたの。天国の種類は28種類って言われてて地獄は16種類だから合計で44種類。あってるんだよね。だんだん降りる星も明るくなってきてるし地獄から天国に向かってるじゃないかな」

「駅もだんだんオシャレになってる!駅名が花の名前なのはなぜ?」

「死者にたむけるのが花だからじゃない?ちゃんと順番に法則もある。プリムラは冬の花でコスモスは秋の花でさっき通過したのがサクラ駅だから春の花。だんだん夏に向かって行ってるの。終点はヒマワリ駅でしょ?」

「季節だ!秋→冬→春→夏。なんで夏が最後?」

「天国は一生夏休みのようなもんだからね」

「そうなのかな?まあ開放感はあるよね」

「ぜんぶ推測だよ」

モミジちゃんは頭をかく。モミジちゃんは本をよく読むのでいろんなことに詳しい。地獄や天国などの異界、魂や輪廻転生などのスピリチュアルの世界も好きだと言っていた。言われてみればさっきの駅は田んぼに囲まれていてのどかだったし、その次の駅はお花畑に囲まれていたし、さらにつぎの駅は浜辺に駅があって夏の青い海が見えた。

降りる駅の情景がだんだん良くなっている。

「乗客が突然増えるのはどうしてかなあ。」

「魂が運ばれて途中乗車してるんじゃないかな。多く人が亡くなった時は本数や車両も増やすのかも。汽車じゃなくて電車もあるかもしれない。謎が多いね。天国に着いたらガイドさんが全部教えてくれるよたぶん」

「すごく楽しみだよ」

わたしはモミジちゃんにいろいろ聞いた。地獄ってどんなところなの?とか。モミジちゃんは詳しく教えてくれて怖くなった。

「トウマくんが降りた駅は子供がいっぱいだったんでしょ?親より先に旅立つのは最大の親不孝だから罰せられたんだよ。自殺も悪いことだし。彼らの死因が事故なのか事件なのか自殺なのかはわからないけど、年数が違うのは親とか周囲の人が悲しんだ度合いかも。三途の河原と共通してるのは寂しくてどうしようもない世界ってところだね」

「川は流れてなかったよ」

「他にも地獄の駅があるから、そっちには三途の川あるかも。地獄って遊園地みたいにアトラクション満載だからエリアが区切られてるんだよ。こっちの地獄が混んでたらあっちって罪人をわけてる可能性もあり」

「何億年も過ごす人もいるってシロオが言ってた」

「凶悪犯のおじさんとか極悪人は地獄をたらい回しされるから、そういう人たちは刑期が恐ろしく長いのかも。神様がいいというまでその地獄から出られないらしいよ。全部推測なのであしからず」

「だいたいあってるんじゃないかなぁ。それより気になるのはトウマくんの刑期はどれくらいかわかる?」

「いやいやあたし閻魔大王様じゃないから。でも2、3年じゃない?過ごしかたも大事で、他の罪人と揉めないとか綺麗なこと考えながら過ごしてるとかだと早く出られるって思う」

「3年か。はやく会いたいなぁ」

わたしは両手を頬に当ててテーブルに両肘をついてポーッとする。途中の駅で小さい女の子がお父さんを待ってて2人で抱き合ってた。ああいうの好き。モミジちゃんは手を横に振る。

「いやいや、3年じゃすまないよ。転生があるから」

「えっ?転生ですと?」

「地獄で罪を償ったあとは転生だよ。現世の行いで来世の環境とスペックが決まるの。現世は修行の場で魂のレベルを高めるためにあるんだよ」

「地獄で罪を償っても現世でひどい環境や低スペックを与えられるなら地獄が続くようなもんじゃない!」

「人間界も地獄の1つって説もあるからね。六道輪廻。地獄は続くよどこまでも」

「理不尽だね。神さまは何を考えているんだろう」

「知らぬがほっとけ」

モミジちゃんは手を合わせた。

「だけどトウマくんは必ず行くから待っててくれって。だから、わたし待ってる!」

モミジちゃんはソファーの上であぐらをかいて両手を広げる。

「ハルヒちゃんは前世でも前前前世でもきっとずっと良いことを積み重ねてきたんだよ。だからこそ特等室で最上級天国行きなんだ。魂のレベルもマックスでもう転生する必要ないはずさ。あたしが今回の人生でこんないい部屋に泊まれないって言ったのはそういう意味。せいぜいぎり天国行きの切符を手にれられるぐらいかな」

「え〜っ、がんばってよ!いっぱい徳を積んでわたしに会いにきて!」

「いやムリゲーだし。世界でも救えっていうの?トウマくんも苦労すると思うよ。ひまわり駅まで行くのはさ」

モミジちゃんは肩をすくめる。

「いいよ別に。わたしずっと待ってる。トウマくんとの銀河鉄道の思い出だけで永遠に楽しく生きていけるもの」

「ラブラブの熱々だね。あたしもせいぜいがんばるよ。もう限界だからおやすみ。三次空間さんじくうかんに戻るよ。ハルヒちゃんにもう一度会えてよかった」

モミジちゃんはずっと眠るの我慢してたんだ。ウトウトしていたのに無理させちゃった。異界に来て脳が興奮して目がバキバキだったから起きていられたんだね。

「ありがとうモミジちゃん。待ってるからね!なまけちゃだめだよ!」

はっぱをかけるとモミジちゃんはニヤケづいたまま寝てしまった。そして体がふっと消える。モミジちゃんの推測通り夢から覚めて現実世界に戻ったのだろう。さよなら。また会おうね。わたしはズビっと流した鼻水とこぼれた涙を卓上のテイッシュで拭いた。ハンカチはもうぐしょぐしょでクリーニングに出していた。

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