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牛乳

プリムラ駅で降りる。列車は汽車だということが判明した。白い屋根のホームには白い柱時計が飾られいて、白いベンチに座った白い服に白い帽子を被った白づくめ男がいた。立つと身長はそんなに高くない。パパと同じぐらいだ。すごいやせている。

「ガイドのシロオだ。こっちに来い」

シロオの目と口は真っ黒で少し怖かった。ハロウィンのお化けみたい。

わたしたちはシロオに続く、子供たち20人と大人3人とわたしとトウマくんで25人だ。駅の外に出るとそこは白い砂漠だった。白い満月が空に浮かんでいる。家も何もない超寂しいところだ。それに寒い。砂の足跡はすぐに消えてしまう。白い山々がはるか彼方にそびえ立っている。牛乳の中に漬け込まれているようだ。何もかも白い。こんなところ1分もいたくない。わたしはぶるぶる震えながらトウマくんにしがみついた。

けっこう歩いたところでシロオは振り返った。

「ここで解散だ。好きなところに行け」

シロオはしっしっと手を振る。説明がなさすぎる。子供たちはわんわん泣きはじめて大人たちは絶望して天を仰いだり地面にへたり込んだ。わたしは激怒する。

「非人道的すぎでしょ!こんなところ1秒だっていたくないわ!」

「しょうがないだろう。自業自得だ。時間になれば迎えにいくよ」

「時間ってなに?」

「3年のやつもいれば1000年のやつもいるし万年のやつも億年のやつもいる」

「そんな長い時間いられるわけないでしょ!さびしくて死んじゃうわ!」

「群れるのは自由だ。話すことがなくなり顔もあわすのも嫌になり1人で過ごしてるやつしかいねえがな。形影相弔けいえいそうちょうってやつさ。自分の形と影だけが互いを慰め合う、つまり誰も訪ねてこない孤独な状態ってこった。ほらみろあっちこっち孤影がさまよってんだろ」

わたしは地平線を見る。確かにたった1人でさまよう孤独な影がちらほら見える。止まっているの影は座っているのだろう。

「娯楽とたべものは?家は?」

「ねえよ。野宿だ。座って立って横になるだけがお前らの仕事だ」

シロオの突き放すような冷たい言葉に小さい子は泣き叫ぶ。

「おかあさーん!」

「ママー!」

見ちゃいられない。わたしは腕まくりした。

「あったまきた!こんなやつみんなでやっつけちゃいましょ!」

「おーおー威勢がいいな。こんな威勢のいいやつはじめてみたぜ」

シロオはピューと口笛を吹き鳴らす。わたしはトウマくんの手を離して拳を固めた。

「殺しちゃだめよ!いけどりね!わたしの合図でみんないっせいに飛びかかればあんなやつ大したことないわ!」

振り返るとみんな死んだ目をしてる。どうしてなの?理不尽には立ち向かうべきだよ!こうなったらわたし1人でも・・・トウマくんがぽんっとわたしの肩に手を置く。

「もういいよ。ハルヒさん。きみは駅に戻るんだ」

「トウマくんを置いてけないよ!」

「ボクも絶対に追いつく。それまで待っててくれ」

トウマくんは何か思い出したのか悟り切った顔をしている。

「いや、ぜったいにいや!」

わたしの切ない叫びは砂漠に反響した。他の人たちは黙って成り行きを見つめてる。

「何いちゃついてんだこら?痴話喧嘩か?

「シロオさん。この子はこの駅で降りる子じゃないんだ。ヒマワリ駅で降りる予定なんだ。切符も持ってる」

「なに?ヒマワリ駅?そいつはすげー。なんでこんなとこいんの?」

「ボクの友だちでボクについてきたんです」

「途中下車の旅ってか。勝手なことしてもらっちゃ困るなぁ。駅に戻ってもらうぜ。つぎの列車でヒマワリ駅に向かってもらう」

シロオはわたしに近づいてきて腕をつかんだ。

「離して!」

「離さねえ」

シロオの腕力は強くて人間のものとは思えなかった。わたしはシロオに引きずられて駅に戻される。トウマくんとの距離がどんどん離れる。愛する人の姿が砂粒のように小さくなった。

「ハルヒさーん!ボクはきみが大好きだーー!」

「トウマくん・・・わたしも大好きーー!」

トウマくんの大声なんてはじめてきいた。あんな大きな声出せるんだ。わたしはシロオの有無を言わさぬ強い力で駅に戻されてつぎの列車が来るまで抱き抱えられて拘束された。ムリやり列車に乗せられる。扉が閉まった。

「なかなかいい見せ物だったぜ。ラブロマンスは嫌いじゃねえ」

シロオはひひひって笑う。わたしは号泣しながら座席についた。しばらく放心して動けなかった。どれくらい時間が経過したのか。絶望に打ちひしがれうつむいているわたしの前に影が降りた。

「もしかしてハルヒちゃん?」

顔を上げると首を少し傾けたおさげの女の子がいる。

クラスメイトに紅葉モミジちゃんだった。


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