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銀河鉄道

わたしはよだれをたらして寝ていた。ふと目が覚めてまぶたをこする。ここはどこだろう?わたしはフカフカのソファーに座って寝ていた。柔らかいオレンジの蛍光灯がついている。木造の豪華な内装をしたスイートルームだ。ベッドルームとリビングがわかれていた。木の温もりを感じる。木漏れ日のさす森にいるようだ。なんだかひどく懐かしい気がする。ここは一流ホテルかな。いつの間に泊まったのだろう。記憶が曖昧ではっきりしない。てっぽうの形をした手をあごにそえる。わたしは春陽ハルヒ、11才の小学6年生だ。なぜ自分がこんな場違いな場所にいるのか皆目見当もつかない。服はいっちょうらのセーターとスカートだ。オキニの猫ちゃん刺繍入り靴下も履いてる。ハンカチを持っていたのでよだれを拭いておく。

テーブルには両手で持てるサイズの真っ黒な盤の丸い板が置いてある。いちおう持ってみた。表面に幻想的なデザインがほどこされていて青やオレンジや緑の宝石が散りばめられてる。宝石屋さんで鑑定してもらったら天文学的な数字を叩き出しそうな美しい一品である。壊しちゃいけないからそっと置く。

朝か夜を確認したいので大窓のカーテンを開けた。

衝撃の光景がそこには広がっていた。

「えっ?なにこれ宇宙?」

足元に広大な天の川が流れている。客室は前方に進んでいるようだ。星々が後ろに流れていく。ホテルが宇宙を飛んでる?混乱したわたしは何か手がかりを求めて反射的にポケットに手を入れた。ごそごそ。ハンカチの入ってたほうと反対側に固い紙の手触りがする。取り出すと黄色い切符だ。終点ヒマワリ駅と書かれている。ここはホテルじゃなくて列車だったのか!宇宙を飛ぶ列車って特殊すぎる。夢じゃないかほっぺをひっぱったけど痛いだけだった。いつの間に乗ったんだろう。パパとママは?1人でいることが急に不安になる。だれか探そう。わたしは豪華な客室を飛び出した。

アーチ型の天井の廊下を歩いて隣の客室に行く。廊下にはタキシード姿の猫が微笑むおしゃれでかわいい絵が飾られていた。センスがいい。隣の客室はボックスシートがふたつにロングシートのソファーがあって一流ホテルの喫茶店みたいな雰囲気だ。クッションまである。赤いドレスを着たおしゃれな若い女性が1人、センスを口もとにあてて足を組んで座っていた。高そうなアクセサリーもしている。黒くて長い髪がツヤツヤですごいきれい。悪役令嬢感がある。こちらを見て軽く目を見開く。

「あらごきげんよう。子猫ちゃん」

「こんにちはとっても綺麗なお姉さん」

「うふふ。お上手ね。あなたもとても可愛らしいわ」

「ありがとうございます。あのここってどこですか?」

「さあ?私くしも気づいたらここにいたの。社交界でダンスを踊る予定だったのに」

「お姉さんはいつの時代の人ですか?」

「こんな格好してるけど2025年の現代人よ」

明治時代の人かと思った。鹿鳴館でダンスをするのが似合いそう。

「わたしほかの客室も見てきます。何か知ってる人がいるかもしれないから」

「冒険ね。行ってらっしゃい」

わたしは次の客室に移る。食堂車だった。ここもおしゃれだ。彫りの深い顔立ちのシェフの青年がいる。きちっとした佇まいだ。わたしは声をかける。

「こんにちは。ここってどこですか?」

「こんにちは。マドモアゼル。ここは銀河鉄道です」

シェフは上品に微笑む。なんか聞いたことある。読んだことはないけど宮沢賢治さんの本だ。汽車が満月を横切って飛んでるファンタジー感あふれる表紙で好きだった。

「この列車どこに行くんですか?」

「切符に書いてある通りです。詳しいことはおりた駅にガイドさんがいるので聞いてください。私は料理を作る係なので」 

「わたしがどうして列車に乗ってるのかも教えてくれないの?」

「お客様には目的地に到着するまで純粋に旅を楽しんで頂きたいのです。推理はご自由にどうぞ」

「わかりました」

「よい旅を」

「ありがとうございます」

わたしはぺこりと頭を下げて食堂車を後にした。次の客室はバーだった。暗い照明で大人が集う場所って感じだ。ヒゲ面のバーテンダーさんと1人でカクテルを飲んでるイケメンのおじさんがいた。声をかけようと思ったけど自分の世界に入り浸っているようなのでスルーした。次の客室は少しグレードダウンしたような客室になった。木製の座席でレトロ感が満載だ。年齢も性別も違う男女が6人ほど乗ってる。それぞれ自分にあったファッションに身を包んでる。カジュアルな格好のヘッドフォンを首に巻いた青年が声をかけてくる。

「こんにちは。きみは特等室から来たの?」

「こんにちは。1番向こうのスイートルームみたいな客室でした」

「まじか!?へーっ、すごいね。えらいね」

「?」

「いつか乗りたいもんだな。いや近づいてはいるか」

「観にきますか?」

「いや、自分で切符を手に入れるよ。ありがとう。よい旅を」

青年はにっこり笑った。さわやかな人だ。なんとなく音楽的才能がありそう。青年は何か知ってそうだったけど教えてくれなさそうな気配がした。シェフと同じだ。

次の客室に移動した。また食堂車だけど今度は簡素だ。真ん中のテーブルに木箱に入った袋詰めの菓子パンが並んであってご自由にお取りくださいって書いてある。水々しいりんごもある。無農薬なのか皮ごと食べられますってメモ書きが添えてあった。

中身が見える木製の冷蔵庫に牛乳とお茶と水のペットボトルもある。ラベルにはとぼけた顔の猫が描かれていた。猫すきだなぁ。車掌さんの趣味かな。あとはゴミ箱とお手拭き。振り返ると客室上部の看板にここより先、ねずみ色切符のかた立ち入り禁止。と書かれている。ねずみ色切符だとグレードの高い客室に入れないようだ。グリーン車みたいなもんか。

若干優越感を覚えつつわたしは次の車両に移動した。客室のもっとグレードは下がってる。年季の入った木製車両はお化けの出るというウワサの廃校のようだ。照明も薄暗い。特等室とは使用している木材のレベルがまったく違うし内装へのこだわりも感じられない。座席のクッションの厚みもうっすい。しかし、その車両は子供たちがぎっしり詰まっててお祭り騒ぎだった。子供仲間のわたしはなんだホッとする。アットホームな雰囲気だ。20人ぐらいは子供がいる。ボックスシートの座席が2つとロングシートの座席だ。子供たちは走りまわったり飛んだりしている。クツをぬいで座席に上がって窓の外を見ている小さい子もいてかわいい。微笑ましく見ていると友だちを発見した。

冬馬トウマくん!」

青いコートに黒い手袋、黒ズボンでメガネをかけたクールな美少年がこちらを振り向く。驚いた顔を浮かべたあとやさしく微笑した。

「ハルヒさん」

「やほやほ〜!」

私はトウマくんの横にくっつくように座る。ずっと不安だった。知った顔があると安心する。トウマくんは同じクラスの同級生だ。とっても頭良くて背が高くてクールなイケメン。ちょっと暗くて影があるけど笑顔が可愛いし、いじめを注意する勇気のある男の子である。女子人気けっこう高い。

「よかったぁ、トウマくんがいて。どうしてここに?」

「わからない。記憶がないんだ」

「わたしも!」

「きみは向こうから来たね」

「うん。冒険してるんだ」

「ボクはずっと座ってた。星を眺めながらぼーっとしてた。あれが白鳥座、あっちがさそり座、こっちがケンタウルス座でそっちが双子座。その向こうがわし座だよ」

トウマくんは窓の外を指さして教えてくれる。さすが博学だ。わたしは全然知らなかった。

「星空を旅するなんてすごいオシャレだよね!ママやパパ、クラスの子も全員連れてきたかったなぁ」

「きみは星のように心がキレイだね。感動を独り占めしない」

「ふつうでしょ?」

「もったいないから人には教えたくないって人も多いと思うよ」

「みんなで見たほうが絶対楽しいよ」

「きみは嫌いな人がいないからね。みんな友だちだ」

「悪い人は嫌いだよ。悪い人がクラスにいなかっただけ」

「きみなら凶悪犯とも友だちになれるよ」

「いやぁ。さすがにそこまでコミュ力お化けじゃないよ」

「自分で気づいてないだけできみは人を変える力があるんだよ。クラスの意地悪な子もきみと友だちになって変わった」

「そうなの?気づかなかった」

「やっぱり気づいてなかった」

トウマくんはクスっと笑った。

「冒険は終わり?」

「もうちょっと冒険する。そろそろ最後尾だと思う」

「じゃあおともするよ」

トウマくんは立ち上がってわたしに手を差し出す。わたしは笑顔で手をとった。わたしたちは次の客室に移動した。





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