『白プレスマン姫』
あるところに長者がいた。大変な地所を抱え、奉公人も大勢いたが、妻女の不注意がもとで火を出してしまい、屋敷も蔵も失ってしまって、妻女は気がふれて、池に身を投げた。
ところが、妻女は、そんなことでは死なず、角が生えて、毎年、若い娘をいけにえによこせと口走る始末。
そんなこんなで毎年若い娘をいけにえに出してきたが、もう、村には、若い娘といえば、長者の娘しかおらず、長者は、さすがに娘を差し出すことはできず、大金をかけて身がわりを募ることとなった。長者の奉公人が、あちこちの貧しい家を回って、娘を身売りしないかと訪ねて回り、長者の娘にしてもおかしくない美しい娘を見つけた。娘に、母親の暮らしを助けるために身売りをしないかと持ちかけると、言われたことがわかっているのかいないのか、売ります、と答えた。娘の母親は、さすがに意味がわかるらしく、泣いて娘を止めようとしたが、暮らし向きが悪いのは否めず、最後は、娘の、用が済んだら戻ってくる、という言葉で、一応落ち着きはしたものの、永の別れを感じて、信じられない量の涙を流していた。
娘は、白プレスマンのように白い肌をしていたので、白プレスマン姫、略して白姫と呼ばれている、と名乗り、長者から大層な礼金をもらい、それを母親に届けてもらう手配をすると、池のほとりのやぐらにみずから登った。妻女の妖怪は、白姫を食らおうとして、水面に姿をあらわしたが、白姫が速記の問題文を朗読すると、急に正気に返って、もとの妻女の姿に戻った。
妻女は、迷惑をかけたと言って、白姫に、妖怪だったときに手に入れた宝珠をくれた。白姫が母のもとに戻ると、母は、泣き過ぎて、目が見えなくなっていた。白姫が、宝珠で目をなでてやると、少し楽になると言うので、三日三晩なでてやったら、少し見えるようになった。七日七晩なでてやると、もとのように見えるようになり、百日なでてやると、千里先のものが見えるようになったという。
白姫と母は、長者からもらった礼金で、裕福に暮らしたという。
教訓:長者の妻女が、マッチポンプな感がある。




