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僕らのセンター 〜聲の物語〜  作者: 桃乃


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1/1

1 鈴木 健太(22)

ピピピ・・・・!!!


AM7時 今日もけたたましくアラームが鳴る。

「Alexa アラームを消して・・・。」

半分寝てる状態の声がAlexaの鳴らすアラームを消す。

「何時だよ・・・ちっ・・・もう起きねーとじゃん・・・。」

だるい体をベッドから起こした。

仕事は9時から、8時半には職場に着いておけば朝礼も間に合う。そう思いながらゆっくりとベッドから出た。

やる気のない仕事のために満員電車に揺られ職場へついた。


「おはようございます。」

「鈴木、おはよー!」

「先輩、今日も元気ですね・・・。」

「自分が元気じゃないと続かないからね!今日も頑張るよ!」

「おっ!田中は今日も朝から元気いいなー!」

「課長、おはようございます!今日も私は元気いっぱい頑張りますよ!」

田中 恵子(38) 勤続10年目のベテランで、俺の先輩。

常に元気で朝から正直うるさい人だ。俺はどちらかと言うと苦手な人・・・。


「朝礼はじめるぞー。」

課長の一言で今日の仕事が始まる。


「お電話ありがとうございます。担当、鈴木でございます。本日はいかがなさいましたか?」

マニュアル通りの対応をする。

周りは自分でトークをアレンジしてるが俺はそんな気はわかない。やりたくてやってる仕事ではないし、そんなことをしたところで、客へそんな気持ちや苦労が伝わると思ってないからだ。


「はい!はい!ありがとうございました!今後もよろしくお願いいたします。田中がお受けしました。失礼いたします。」

田中先輩の声だ。

朝一から元気な声で対応してる。あの対応が好きな人もいれば嫌な人もいるんだろうな。


「お待たせいたしました。鈴木がお受けします。」

「すみません。急にカードが使えなくなってしまって・・・。」

「かしこまりました。ご不便おかけし申し訳ございません。原因をお調べしますので、お客様のカード番号を教えていただけますでしょうか。」

「4537・・・・」

「ありがとうござます。お客様のお名前を教えていただけますでしょうか。」

「村上 春子です。」

「村上様ですね。生年月日とお電話番号を教えていただけますでしょうか。」

「昭和25年4月3日。電話番号は080-4389-・・・・」

「ありがとございます。本日12000円ご利用頂けてない履歴が有りますが、この件でよろしいでしょうか?」

「はい。孫の誕生日が近くてプレゼントに欲しいと言われてた商品で今日買いたかったんですけど・・・。」

「さようでございましたか。確認したところ、あいにくカード限度額を超えてしまうため利用をお断りしている状況です。」

「どうにかならないですか・・・?どうしても買ってあげたいんです・・・。」

いやいや、限度額超過って言ってるんだから諦めろよ・・・。とりあえず、決済方法変えるよう言うか・・・。

「そうですね・・・。お支払い方法を変更して購入いただくことになってしまうんですが。例えば現金決済ですとか、他社カードのお支払いに変更いただくですとか。」

「実は孫の誕生日が明後日なんです。カード支払いだと最短で明日届くのでカード決済で買いたいんです。他社カードは持ってないですし、現金決済だと間に合わないんです・・・。」

「かしこまりました。少々お待ちいただけますでしょうか。」

えー・・・うち以外にクレカ持ってないのかよ・・・。今の時代2、3枚持ちは常識だろ・・・。年齢もあるから持ってないのか?それとも信用情報的に持てないのか?とりあえず、田中先輩に相談するか。

「田中先輩、今保留にしてる会員なんですけど、カード使えないって入電にしてて、限度額超過なんすよ。」

「鈴木?限度額超過なら一旦決済方法変えるよう言った?」

「案内したんですけど、なんか明後日孫の誕生日でその時に渡すプレゼントらしくてカード決済じゃないと間に合わないらしんすよ。」

「そっか・・・。他社カードもない感じ?」

「うちのカードしか持ってない感じっす。」

「・・・年齢は?何歳の方?」

「70代の方っす。」

「・・・・大至急で一時的な限度額の引き上げ受けてあげて。ただし、絶対できるとは限らないからそこだけ案内に注意して。」

「わかりました。」

一時引き上げするのかよ・・・。この年齢だと無理な可能性の方が高いのに・・・。やるしかねぇか。

「村上様、お待たせいたしました。先程ご説明した限度額超過の件ですけど、一つご提案が有ります。絶対という約束はできないですが、限度額を一時的に増額する方法があります。審査を行う必要があるので、結果によっては増額できないこともありますが、受付は可能です。いかがいたしましょうか?」

手続きしてくれって言うだろうなぁ・・・。

「そんな方法があるんですか?!ぜひ、お願いします!」

ほらな・・・手続き希望してきたよ・・・。

「かしこまりました。では、今からいくつか質問いたしますので、お答えいただけますでしょうか?」

とりあえず希望額と年収聞いたし、これで審査に回すか。

「村上様、ありがとうございました。ご質問は以上です。今お伺いした内容で審査を行いますので少しお待ちいただけますでしょうか?」

「はい、わかりました。」

大至急で審査してっと・・・。お!おぉ?!承認出た?!マジかよ!

「村上様、お待たせいたしました。審査完了しまして、ご希望額まで引き上げできましたので、このあと12000円分お買い物が可能でございます。」

「本当ですか?!よかった。これで孫に誕生日プレゼントが渡せる。鈴木さん、ありがとうございました。」

「いえ、とんでもございません。そのほかご質問などございませんでしょうか?」

「いいえ、大丈夫です。本当にありがとうございました。」

「とんでもございません。では、鈴木が承りました。ありがとうございました。失礼いたします。」

ふぅ・・・。終わったぁ・・・。あんなちっぽけな金額でも増額できると嬉しい人もいるんだな。

「鈴木〜!さっきのお客さんどうだった?!引き上げできた?!」

「先輩・・・。問題なく引き上げもできて今対応おわりました。」

「そっかそっか!それならよかった!」

「はい。とりあえず、このあとも電話とっていきます。」

「うん!任したよ!」

こうして俺の1日の仕事は終わっていった。


〜数日後〜


「おはようございまーす。」

「鈴木!!!!!」

「田中先輩・・・なんすか、朝から大声で・・・。」

「あんたに感謝の手紙が届いてるんだよ!!」

「手紙・・・?」

「ほら!!」


『鈴木様、突然のお手紙失礼いたします。先日、カードが使えなかった件でお世話になりました。村上春子でございます。先日は親切に対応していただきありがとうございました。あのあと、無事買い物ができ、孫の誕生日にも間に合いプレゼントを渡すことができました。あの時、鈴木様が対応してくださらなければ孫に誕生日プレゼントを用意していない最低なおばあちゃんになるところでした。プレゼントを渡したところ孫が大変喜び満面の笑顔で「ありがとう!」と言ってくれました。鈴木様のおかげです。本当にありがとうございました。今日はそのことを伝えたく手紙を書かせていただきました。また何かあった時には鈴木様が対応してくださればなぁと思うと共に、友人などに鈴木様のことを話し御社の対応の素晴らしさを伝えたいと思います。これからも頑張ってください。』


「え、これ・・・。あの時の・・・。」

「そうだよ!私に相談しに来てくれた時に対応していたお客様だよ!」

「俺・・・普通にいつも通り対応して・・・特に何か意識してたわけじゃないのに。」

「そうだとしても、村上様はあんたの対応に喜んでくれたんだよ!私も負けてられないね!今日もがんばるよー!」


天職でもない、やりたい仕事でもない、なんならメンタル削るし、同僚や同期、後輩もやめて入れ代わりの激しい業界だ。俺もやめようか考えていた。でも、たまにこんな出来事があるなら、もう少しやってみてもいいかなって思ってしまう。

俺の聲で、俺の対応で誰かが喜んでくれるなら、誰かの嬉しいに繋がるなら、それも悪くねーかもな。

しんどいし、田中先輩みたいにはなれねーけど、もう少し頑張ってみるか。


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