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佐鳥さんは変カワイイ。 事故から庇って助けたら学年一の美少女が押しかけてきた話  作者: 藤白ぺるか


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第3話 恩人

「失礼します」


「どうぞ……」


 部屋に女子を上げたのは人生で初めてだ。

 しかも中学校では男子すら上げなかった。よく引きこもりにならなかったと褒めて欲しい。


「なんだか、お線香のような匂いがします」


「俺の部屋は寺か」


 見た目はめちゃめちゃ美人のくせに、会話するとどこかおかしい。

 突っ込まずにはいられないというか……この性格、学校の皆は知っているのだろうか。


 とりあえず佐鳥さんをテーブルの前に座らせ、俺もその隣へと腰を下ろした。


「それにしても本が多いですね」


 部屋を見渡した佐鳥さんが言う。

 陰キャぼっちの趣味は大抵本かゲームかパソコンだ。二つの本棚にぎっしりと漫画やラノベが積まれていた。


「考古学者目指してるからな」


「確か星を見つける人ですよね」


「それは天文学者だ」


 嘘をついたのに、普通に理解されなくて困った。

 天然かなと思いつつ、絶対アホだろうとも思ったが、そういう部分もこの見た目で許されてしまうのだろう。


「黒川くんって面白いですね」


 お前方が面白いよ、とは返さない。永遠にツッコミが続きそうだった。


 それにしてもオーラ満点の美少女が俺の部屋にいること、かなり違和感がすごい。

 部屋の空気がどんどん良い匂いに変わっていっていそうで恐ろしくなる。


「——そういえば、今日告白されてたけど、いつもあんな感じなのか?」


「いいえ。今日のは特別で、あんなことされそうになったのは初めてです」


「ってことは、よく告白はされてるのか」


「今はまだ入学してから時間は経ってないのでほとんどないですけど、中学生の時は毎月必ず告白されていました」


 告白される側も大変だな……。

 俺なら嫌気が差して告白禁止と大々的に言ってしまいそうだ。そんなこと言ったら同性に袋叩きにされそうだが。女の世界は怖いというしな。


「大変だな。今までに何人彼氏作って来たんだ?」


 デリカシーもなく気になったことを聞いてみた。友達もいなければ俺にはプライドもないからな。

 正直このレベルなら男子を弄ぶほど付き合っていてもおかしくないはずだ。


「そんなに私がたくさんの人と付き合ったように見えますか? 今まで一度もないですよ。そもそも男子を好きになったことがないので」


 こんなに可愛いのに付き合った経験がないのか。周りの男共は何をしてきたのか。イケメンに近づかれることもあったろうに、もっと必死になっていれば、左鳥さんだって少しは傾いたかもしれないのに。


「男子と一緒に遊んでいるうちに好きに……とかもなかったのか?」


「男子とは学校を通してでしか会いませんから。連絡先を交換したのも黒川くんが初めてです」


「なんで!?」


 いやいや。なんで俺がこいつの初めてを奪ってるんだよ。許されることじゃないだろ。

 ニコニコ可愛い笑顔をしやがって……本当は嘘じゃないのか?


 でもよく考えれば、事故のお礼をしたくて交換したわけだから、好意を持ってるとかそういうのではないか。俺はラッキーだっただけだ。


「そういう黒川くんは付き合ったことはないんですか? 今度は私が質問責めします」


 左鳥は戦闘態勢に入ったかのようにニヤリと笑った。


「それこそ俺に彼女がいたことがあるように見えるか?」


「はい。申し上げにくいですが見えません」


 こいつ言わせておけば……。


「でも、魅力がないとも思いません」


「へ?」


 続く言葉で俺はトクンと胸が高鳴った。

 美少女の言葉は簡単に恋愛弱者の心を躍らせてしまう。これは一種の催眠だ。


「だって、私を二度も助けてくれたじゃないですか。しかも、私のことを知らないのに、自分を犠牲にして」


「あれは自分を犠牲にしたわけじゃない。勝手に体が動いただけだ」


 そう、別に佐鳥さんじゃなくても俺は多分同じ行動をとった。なぜそんなことをしたかなんてわからない。それが体が勝手に動くということだろう。


「それなら尚更です。見知らぬ人を助けるくらいに黒川くんはお人好しです」


 俺に一番似合わないワードきた〜。

 お人好しって言われるだけで鳥肌が立つ。俺はそんな良い奴じゃないし、厨二を拗らせて、結局性格を矯正できないままここまできてるんだ。


「……ちょっとトイレ行ってくるわ」


「早く帰ってきてくださいね。女の子一人残さないでください」


「小便くらいゆっくりさせてくれ」


 今の言葉で、寂しがりやなのかなとも思ったが、俺にその温もりを求めるわけがないとも思えた。



  ◇ ◇ ◇



「どうすれば黒川くんにお礼ができるのでしょう」


 ずっとずっと探していた私を事故から助けてくれた恩人。


 あの時の私は目の前で起きた出来事に驚き、その場で動くことができなかった。

 いつどうやって親を呼んだのかも、いつ警察が来たのかとかもはっきりと覚えていない。


 でも救急車が来て、私の恩人を運んで行ったサイレンの音だけは覚えている。


 そんな彼が二度も私を助けてくれて。

 そのあと黒川くんが私の恩人だとわかって。


 本当なら飛びつきたいくらいに色々な感情が駆け巡っていた。


 骨折はしていたけどちゃんと生きていてくれたこと、二度も助けてくれたこと、ここまでされて彼のことが気にならないわけがない。


「お母様、許してくれるでしょうか」


 私は一つだけ決めた。

 彼に尽くしたいと、恩に報いるためにせめて松葉杖が取れるまでは側で支えたいと。


「そういえばどんな本を……」


 これだけの本があるんだ。

 黒川くんは色々な知識を持っていてとても博識なのだろう。


 私は立ち上がり、本棚から一つの本を抜き出した。


『勇者は聖女をちゅぱちゅぱガブリしたい』


 表紙には胸が大きなシスター風の女性に成人男性が赤ちゃんのように膝枕されている絵が描かれていた。


「ちゅぱちゅぱ……」


 なんとなくタイトルを呟いてみた。



 ◇ ◇ ◇



「ふぅ……」


 あの部屋は今居心地が悪い。眼福なことには変わりないが、俺とは違いすぎる人種だからか、いると気を使うし疲れる。


 早く帰って来てと言われたが、俺はゆっくりトイレで過ごしてから戻った。


 それが良くなかったらしい。


 自室の扉を開けた瞬間。

 佐鳥さんが俺の十八禁ラノベを手に取っていたのだ。まさか勝手に手に取らないと思って放っておいたが、こいつは手癖が悪いらしい。


「俺の『ちゅぱガブリ』ー!!」


「わっ」


 俺は無理やりに左鳥さんからラノベをぶん取り、本棚に戻した。


「黒川くんは母性に飢えているということなのでしょうか?」


「ちがーーーう!!」


 たった一つのラノベで俺の性癖を決めつけるのは非常によろしくない。

 いやいやいや、そういうことじゃなくて。あのエロい表紙を見られたことが問題じゃないか。


 まあ、そこら辺の塵芥の男子同様に俺も性獣だと思われただろう。

 でも良いんだ。こいつに嫌われたって俺の生活が変わるわけではない。


 そう、変わらないんだ。


「──今日はもう帰りなよ。お母さんも心配してる」


「はい、そうですね。とても居心地が良い不思議な匂いのお部屋でした」


 余計な一言が多い……。


 その後俺は黒川さんを送るべく駅まで一緒に歩こうとした。

 しかし、タクシーを呼んでいたようで、そのまま乗って帰って行った。タクシーで帰宅とはなかやかお金持ちらしい。


「……すげえ良い匂い」


 部屋に戻ると、佐鳥さんがいなくなったはずなのに、そこには彼女がいたかのように、残り香が残っていた。


「…………俺の部屋が犯されたぁっ!!」





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