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7、エピローグ

「何これどうなってるの?」


 塔の中の広間には、大勢の人が行き交い、家具を置いたり、食器を並べたり食事を運んだりしている。

 それを見ても、エレナは何が起こっているのかわからなかった。

 すると公爵がやってきて、彼女に教えたのだった。


「何って? あなたがたのお祝いですよ」

「意味がわからないわ。なぜ、あなたがこんなこと」

「そんな細かいこと、いいじゃないですか。ほら、クラウスさんも、受け入れてあそこで仕事をしていますよ」

「そうみたいね」


 大勢の人は、公爵家の使用人たちだった。


「一応、確認するけど、あなたが私に結婚を申し込んで、私は断ったのよね」

「はい、その通りです」

「それが、なんでこうなるのかしら」

「私が、命じましたから」

「ねえ、あなたが私に結婚を申し込んだのは、本気じゃなかったってこと? からかってたの? それならひどいわ」

「いえ、私はこの地に来て、あなた方に会うまでは本気でしたよ。本気で私とエレナ様との両方にとても得になる提案だと思ってきました」

「得って……なんていうか正直な言い方ね。でも、なら、私が断ったことで、あなたは損したことになるわよね。機会の損失というやつ」

「いいえ、私はそうは思っていません」

 そう言ってから公爵はエレナを見て微笑んだ。

「どういうこと?」

「私はここに来て、直接お会いして、あなた方のことが気に入ったのですよ。お二人の間には、私が持ってきた損得勘定とは別のものがあった。それは、私の持ってきたものより遥かに価値のあるものです。それは、いわゆる愛というやつです」

「なんだか大げさなようだけど」

「私には、到底手に届かないものです。私の生きてきた貴族の世界では、権力やら財産やら、そういうものが力をもっていますから。でもそういうものに対して、それが打ち勝つのを見たかったんですよ」

「それであんな提案を?」

「ええ。私は、地位や名誉よ、財産を提示しました。それに対して、あなた達の間の愛。どちらが勝つのか、私は知りたかったのです」

「あなた、とても面白そうにいうけど、私は、いえ、私たちは大変だったんだから。それに最後まで、わからなかったし」

「申し訳ありません。でも終わりよければ、です。私も含めてみんなが笑顔になる結末になりました。だから、このお祝いです。これからのことは、また後で考えましょう。私もバックアップしますし、あなた方なら、これから何があっても大丈夫、そんな気がするんです。さあ、あちらへどうぞ」


 いつの間にか準備が整っていた。みんな席について、エレナと公爵を待っている。

 広間の中央には、一際、花やら装飾で綺麗に飾られた机がある。

 そこには椅子が二つ。


 エレナはそこに向かって歩いていった。

 近くでクラウスがエレナのことを待っている、その場所へ向かって。

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