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第六話 衝動に身を任せるよりじっくり考えて行動しよう

あらすじ 華麗に脱出!でも夜の空は寒いね?以上!

 



 薄く目をあけた光喜は虚ろ瞳で目の前の女を見つけた。


 世界は暗い、そしてその世界には俺と女だけ存在していた。


 女は一人でなにやら呟く。光喜の存在に気づいているのか、気づいていて捨てているのか。


 「愛しいの…好き、大好き…愛している、愛しているわ、私がなんだってしてあげる…だからずっと一緒にいましょう」


 女はうずくまり何かを大切に撫でている、女に性転換した俺と同じ白髪で髪は異常に長く、おそらく女が立ち上がっても髪の先端は床に付くだろうと思われるほど。体のほとんどが髪によって隠されているため女が何に向かって喋っているのかは窺えなかった。


 その女の後ろに光喜は目を開いたときから、立っており彼女を見下ろす。女は何かに向かって愛の言葉を口ずさみ続けているが、女の周囲から黒い霧が漂い始め、それらは一つの固まり形づくられる、黒い霧の禍々しさに光喜は一歩また一歩後ろへ後退りをして女と霧から距離を無意識にとった。 


 光喜と女の前で霧は巨大なくちばしを持った何かの生き物になり、ためらいなく大きなくちばしを開き光喜に襲い迫った。


 とっさに自分の顔を両手でかばう。


 (畜生喰われる!!)





「ん?」  


 ピクリと体を震わせると、光喜は目を覚ました。きょろきょろと周りを見回すと背中にはカラクがいて、ヒポグリフの上だ。現在、地球へ帰るためにこの国の皇帝が住む城へ向かって空路を移動している。


 「どうした?」


 カラクはすぐ後ろから光喜に訊ねる。


 「うー…ん、なんでもない。なんかの夢でも見てたきがする…ってお前!なんで俺の乳もんどんじゃい!!」


 カラクは手綱から手を離し、両手で光喜の豊満な胸を揉んでいた。


 「そこに乳があるからだ」

 「俺の乳は山か!」

 「手を伸ばせば至高の乳が存在しているに、何故指をくわえてみていなければならない」


 真顔で返しやがった、俺も男。乳の魅力は十分わかるが、大前提に他人の乳であることだ。


 自分の乳が狙われて更にもまれるのは生憎そんな性癖はない。


 「放せ!変態野郎!」


 動きの制限されている状態から必死に体をよじってカラクの魔の手から逃れる光喜、ギロっとカラクを睨むが本人はどこいく風状態。この男のすかした顔を殴りたい。顔の形が変わるほど殴りたい。


 「暴れるな、城に落ちる」


 痴漢行為をしながら、戒めるように光喜に言う。上視線の発言にカチンともくるが城という単語に大人しくなった。


 この城に光喜が日本へ帰還できる手立てがあるのだ、後ろの男などそっちのけで足元に注目するのも無理はない。


 寝ている間に城へたどり着いたらしい。


「くぅ~~!これで帰れ…るぅ?なんだアレ?」


 光喜は歓喜の声を上げたが、2人の足元にある王宮は所々にたいまつだろうか地上に星が散らばるようにか細い光がちらちらしていた。


 しかも光は王宮へ近づくに連れて慌しく、尋常でない状態であるのを2人に知らせるかのごとくにあちらこちらで見られる。


 「……王宮で何かが起こっているようだ。今は近づかないほうがいいな」


 カラクが客観的に王宮の状況を見分けると、ヒポグリフの綱を引き王宮への進路を止めた。カラクの指示通りにヒポグリフは空中で停止をした。


 「なんだろ?」


 距離と明かりのなさに王宮の様子を窺う難しい、最初は祭りか何かかと思ったがどうやらそんな穏便な雰囲気ではない。先ほどから叫び声や破壊音が風に乗って光喜の耳へ届く。


 「戦争?」


 首だけ振り返り背もたれにしているカラクに訊ねる。


 「違うだろう、おそらくコレは…」


 カラクが言葉を全て言い終わる前に破壊音が、2人がいる足元のほうへ移動していく。まるで制御を失った飛行機が民家へ不時着するように煙と爆音を鳴らしながら一直線に。


 「すごいことになってない?」


 ぽつりと光喜が呟いた。


 察するに間違いない状況だろう。月明かりと松明の明かりでうっすらと破壊された建物が2人の下で見えている。


 「……離れるぞ」


 険しい顔で地上を見ていたが、ヒポグリフを城から離れさせようと綱に力を込めた瞬間、光喜が綱を掴みとめた。


 「どうした?」


 怪訝そうな声で光喜にカラクは問うが、光喜は顔を左右にふる。


 「わからない、でも…何だか…」


 下の光景を見ていると、何故かドッドッドと光喜の心臓の音が強くなる、恐怖と期待が胸のうちで高まっていく。まるでジェットコースターの最初の急降下の前にある昇りの時に感じるドキドキした興奮状態に似ていた。


 期待、不安、恐怖、…でもやりたい、武者震い?違う、もっと単純な…。


 心の底から湧き出てくる、冷静に見れば下の状況など光喜の手に負えるものではない、しかし歓喜に近い何かが光喜を満たす。


 ついに何かが胸を満たし、いつの間か俺はヒポグリフの腹を渾身の力で蹴っていた。察したヒポグリフは急降下をする、驚いたカラクは何かを叫んでいたが俺の耳には入ってない。 


 目の前の大きな恐怖と期待に胸が押しつぶされそう。それ以外光喜には何もない。


 地上が迫る、光喜の後ろにいるカラクは地上に衝突するのを避けるために手綱を引く、えび反りになったヒポグリフが空中で急停止した。地上まで数メートル程度の距離。


 たまらなくなって光喜はヒポグリフから飛び降りた、怪我などしないそれよりも「あれ」に会いたい。

 

 しかし光喜が探すまもなく「あれ」は現れた。


 「ギロロロロ…」


 「あれ」は俺の目の前にいたのだった。 ギラギラと目を輝かせて。




 えっと…俺死ぬ?みーたーいーなー?ご免なさい衝動に任せて調子こきました。




 俺の前方に巨大な生物というか生命体がいるというか…正直何コレって感想。


 間違いなく俺の故郷の地球にはいなかった生物がいる、ヒポグリフだって地球にはいないだろうって思うだろうがコレにくらべたらまだ可愛いものだ。


 全長六メートルはあって、全身絵の具をひっくり返してどこまで汚い色に挑戦できるか意気込んで作ったと思われるほど汚い色の大鳥。


 第一印象はアフリカにいるダチョウを何百倍も筋肉をつけ凶暴にしたような奴だ。


 足は長く羽は退化しているのか飛ぶ様子はない、だがやたらでかいし、足は丸太のように太く強靭、おまけに爪やくちばしはどうしてそんなに鋭いのか!?と聞きたくなるほど鋭利である。


 はあ?飛べないから何?いっちょっ勝負してみる?


 なんて誘われても裸足で逃げ出しますよう?俺は。 


 それ以前にその鳥らしい生き物は俺を完全にロックオン、超注目されています。


 そりゃ、目の前に飛び降りてきたら其方の方を見るのが道理でしょうが、俺は未だかつて数秒前の俺を殴りたいと思ったことは人生で一度もないと断言できる。


 ついでに俺の人生は後何秒の記録をつくれるだろうか?次の瞬間に飛び掛られたらジ・エンドだろうな。


 うんうん、ここはひとまず…


 「逃げるに限る」


 行動の選択肢として俺は敵前逃亡を選んだ。


 凶鳥は逃げる光喜の後ろ姿を暫し見つめていたが、首を上下に動かしついでとばかりに体も小刻みに動かし始め。傍から見たら動物の求愛行動に似ている動作しているが、光喜がほんの少し凶鳥と距離ができると、大地を抉らんばかりの強さで足を踏み出し、驚異的なスピードで光喜に迫る。


 「うげぇ!!ですよね!!」


 俺は顔だけ後ろへ振り返り地響きのような凶鳥の足音に顔を引きつかせて動かす足をマックスまで上げたが。


 もう真後ろ。


 体を真っ二つに割りそうな嘴が光喜に向かって開かれた、その瞬間光喜は一瞬デジャブに襲われたが思考に浸っている場合ではない。


 「おたすけぇぇ!!」


 すぐ後ろに凶鳥が迫り大きな嘴を光喜に向かって振りかざした。


 俺はもう駄目だと内心、心で呟く。短い人生だったな~こんなところで無縁仏かよ(泣)


 「走り続けろ!!」


 嘴が光喜に触れようとした刹那、カラクが横から大きな刀で凶鳥の横面を切りつけた。おかげで嘴が光喜から反れて地面に嘴が突き刺さる。


 走りながらも嘴が地面に突き刺さる振動で光喜の肝はす~っと冷えた、カラクが横槍を入れてくれなければ地面は俺になっていたのだから。


 「グロロ…ロロ…!」


 獲物を逃がし、地を這う腹に響くうなり声をカラクに上げる凶鳥とカラクは刀を構え直して対峙する。忌々しそうにカラクを睨む凶鳥にカラクも瞬きもしない。


 カラクと凶鳥がにらみ合う中、光喜は足を止めてしまった。


 「早く逃げろ、この大きさだ!狭い場所に逃げ込めば追えない!行けぇ!!」


 というが、光喜がこの事態を招いたのだ、ヒポグリフの上で大人しくしていれば少なくともカラクは無事だったはず。


 でも俺に何が出来る?さっきの一太刀でカラクが光喜よりずっと強いのが分った、外見からして比べるまでもなく強さに差があるのは分っていたのだが、想像していたよりもずっと強い。


 踏み込みの少なさであれだけの威力、大きな刀の振るう速さから、絶対に凶鳥との間に光喜がいると庇わなければならない分、光喜は邪魔になる。


 光喜の躊躇している最中にも一人と一頭の戦いは始まっていた。


 なぎ払いを嘴で凶鳥がやれば、カラクは一重で避け、避けた反動と腕だけで刀を振るい太刀を浴びさせようとするが鋭い爪で蹴られ防がれた。


 互いに一歩も譲らない攻防が続くのを黙って光喜はただ立ちすくんでみているだけ、一歩も動けずにいた。

凶鳥の形のイメージはチョ●ボなのは内緒です。


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