表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/47

第四十六話 俺の胃がピンチです

この色男ぜっていぶっ●す!!以上

  


 これは俺の人生で一番のピンチでしょうか、いいや間違いなくピンチだ!!絶対的に究極的な危機だぞぉ!!


 目の前にいるプラネリに俺は後ずさりをして逃げようとするが、体が思うように動いてくれない。


 こいつのイケメン面を蹴るか?つか俺んのピュアなハーツは男ですねん!心も体も女だったらオッケーって意味じゃないけれど。

 

 光喜の顔からダラダラ面白いほど汗が流れていく、此処まで露骨に「女」として見られたのは初めてだ。むしろダイレクトな性の対象と言った方が正しいだろうか。


 言葉にするには憚れる行為を求められている恐怖に光喜が無意識に震える。


 「そんなに緊張しなくてもいいぜ?怖いなら目をつぶって俺に任せてろ」


 プラネリの指が光喜の首筋をなぞった、光喜はヒッと声を出す。


指は光喜の細く滑らかな肌を確かめるように、移動していく……そして。


 パリッっと光喜の首後ろから何かが引っぺがされる軽い音がした。

 

 「へ?」

 

 光喜は思わず間抜けな声を漏らす。するとプラネリが声を上げて笑った。


 「はーっはっはっはッ!新雪の生娘だとは思っていたけどな、これほどとは」


 ゲラゲラこちらを小馬鹿にして笑っているプラリネに光喜はみるみる顔を赤くしていった。


 そしてプラリネの顎を足で蹴る、でも片手で掴まれて未遂に終わってしまった。


俺はこの瞬間、魂を悪魔に売ってもいいからコイツをボコボコにしたいと心底思う、主に顔を重点に。


 「悪い悪い、謝るからさ……後ろのどけてくれないか?」

 「は?」


 光喜をからかったのをバラしたのにプラネリがベットで光喜を押し倒す格好のまま止まっている、退かないのではなくどけなかったのだ。

 

 後ろでプラネリの後ろ首に巨大な人差し指が出現していたのだから。


 指の持ち主は炎霊グリエ、静かに獣が唸るような低い音も漏れている。

 

 プラネリの後ろ首をグリエの鋭利な爪先が狙っている、他愛もない小虫を潰す様にグリエならば簡単にプラネリの首を刺し殺せるだろう、プラネリは動かず目だけで後ろを窺う。


 光喜は気がグリエの方へ行っているのでプラネリの腹へ一発蹴って、這いながらベッドから降りた。慌てていたのでベッドから転がり、腰を打ったけど不信感満載な視線でプラネリを睨んだ。


 床に腰を下ろしたままベッドのシーツを掴み、顔をのぞかせて睨むので、いっぱいっぱいな光喜には悪いが迫力どころか可愛らしい少女としか見えない。


 「だったら俺に一メートル以上近づくな!いいな!?絶対だぞ!!」

 「了解、了解わかりましたお姫様」


 ニアニアした顔でプラネリは両手を上げて降参のポーズをとって見せた。しばらく光喜はムムムっと考えたけれどグリエの爺ちゃんと呼ぶと、グリエは静かに指を文様の描かれた輪の中へ引っ込めていく。


 「さて、と」


 プラネリが光喜に近づこうとした、けれど光喜は傷を負った猫の様に威嚇して手に届く小物をプラネリに向かって投げる。


 「こっちくんなって言ったろうが馬鹿!」


 シャーシャーうるさい光喜にプラネリは呆れた顔をして、光喜の反対側のベットに降りて近くの椅子に座った。その間に光喜は括られている口を開き、歯で紐を解いて両手の自由を取り戻す。

 

 プラネリは面白そうに光喜のする事を見ているだけだ、それすら光喜の癇にさわったが指に掴んでいる小さな紙みたいなのに興味をひかれた。なんせ知らずの間に自分の首に貼られていたら気にはなる。


 テープのように違和感はなかった、そもそも何時つけられたのかも分からない。


 「それ…」


 悪趣味ないたずらをされた光喜は素直に質問できず、拗ねた顔をしつつ片言だけでプラネリに声をかける。

 

 「これか?これはな貼った対象の行動を監視できる呪符の一種だよ。形状から『羽』とも俗称が使われる事が多い、それにつけても流石は皇帝陛下の呪符だこと、燃やすのがもったいないね…売れば相当な値段がするブツだ」


 プラネリに摘ままれているのは小さな紙で形は言われた通りに鳥の羽だった、もったいないぼやいた口でそのまま蝋燭の火を使って呪符を燃やす。次の瞬間に手品で使われる薬をしみこませた布のように一瞬で燃えてなくなった。


 ほえ~っと珍しい物を見た光喜は形がなくなった呪符を熱心に注目していたけど、そんな光喜を笑いながら見ているプラネリと視線が合うとまた光喜は全身で警戒をする。


 「そんなに警戒しなさんなって。まっこれで俺の船を追跡できない……っと」


 最後の言葉を言い終わる前にプラネリが椅子から体を起こし、そのまま部屋のドアに足を向けて歩く。


 そしてドアを開けて、顔だけは光喜に向け声をかけた。


 「悪い海賊さんはいなくなるから、お姫様はゆっくりしてろ」


 プラネリは出て行こうとする、数秒だけ躊躇ったが光喜は思い切って聞いてみた。


 「なんであんな真似したんだよ!俺が寝ている間に剥せばよかったじゃん」


 光喜は心の中ですっげえ恥かしかったと呟く、そんな内面を見透かしたようにプラネリはニンマリじ~つ~に嫌らしい顔で笑って。


 「俺が楽しいから」


 それを聞いた光喜は近くにある銀製の皿を掴んで投げた。


 でも俺の狙撃が命中する前にドアを閉めて出て行ったので、俺の暗殺は未遂に終わり。


 クソっと下品に悔しがると、テンションが徐々に下がり光喜は肩を落とす。光喜は疲れた溜息をつくと、とどめを刺すように後ろからグリエの爺ちゃんの声がする。


 「わしさっきのでもう出られんぞ?後は自分で身を守るんじゃな」


 俺は両手で顔を覆った。


 ***


 「バレた」


 大きな鳥の形をした魔獣に騎乗したモラセスは、手にしていた水晶の中の『羽』が死んだのを見て呟いた。


 「これ以上、光喜の足取りはつかめない……」


 皇帝モラセスの隣に垂直で飛んでいたカラクがモラセスの呟きに反応する。


 「ああ、けれど羽がどこで死んだのかまでは分かるはず、早い所女神の巫女と合流しない事には何も始まらない」


 羽による追跡による精度は対象をよく知ったもので、なおかつ風の精霊と相性がいいと更に増す。この場合は光喜の巫女であり風の精霊と契約しているヨミ以上に最適な人材はいない。


 「さて根性をみせろ、諸君」


 モラセスは手綱を強く握る、ほとんど不眠不休で移動していても誰からも不満不平は漏れない。カラクは勿論のこと錚々たる騎士の誰しもがこの戦に命を落としても女神を救出する使命に満ちていた。


 皇帝モラセスと女神の守護カラク、そして大小様々の魔獣を乗りこなす騎士たちが目的である双子巫女と帝国から選ばれた女神の騎士がいる港町には半日後についた。


その頃モラセス達が自分の為に行動を起こしている、そんな事は露も知らない光喜がプラネリのいない部屋で自分用のソファに座ろうとして立ち上がり、部屋に飾られている真っ黒な刀を見つけた。


 ジッと刀を見つめる、カラクが所有しそうな長くて丈夫そうな見事な一品、ただ黒い。これでもかってくらい黒いのだ。


 まるで姉貴が持っていた黒曜石って名前らしい石に近い、何故俺が石の名前を知っているかっていうと、姉貴の黒曜石アクセサリーの金具壊しちゃったから。


 般若みたいな顔になる姉貴に震えて声も出ない当時の俺はパワーリミッター封印を解除した姉貴に殺されるかと思ったぜ、だから石の事はよくない印象で残っていた。


 トラウマになった石よりも、もっと深い黒が微かな部屋の明かりに鈍く反射して光る。刀の柄が黒いだけではなくて刃も全てが黒で統一されて、俺はそっと刀に無意識に伸ばしていた。


 柄に指先を触れさせてみると、途端に俺の体から異常なほどの力が吸いとられていく。例えるなら一か所に溜められた埃のゴミを一網打尽にする掃除機だ。


 本能的にヤバいと感じた俺は手を離して、触れていた指を撫でる。


 身体に何も変化はないけれど、確かに俺の体から力が刀に吸いとられた。


 俺は怖くなってソファに慌てて駆けて戻り、カーテンを閉めて刀に視界へ映らないように遮断した。



どうも、長く放置ごめんなさい。更新をカメの速度ですが頑張ります、どうか見捨てないでくださいまし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ