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第四十五話 捕らわれ花

あらすじ、吐いた気持ち悪い以上!!!

 酷く揺れる船の上で胃と食道にかけての不快感が多少薄れた光喜は呟く。


 「最悪……」

 「俺も不快指数が計り知れネェよ」


 海賊王……違った、こいつが某人気漫画の海賊のような冒険とロマンに溢れた人間ではない、超がつくほどの男前の色男ってだけで俺の敵だ。どいう定義で敵と判断した基準は、コイツが俺の理想とする色男の要素をふんだんに持っているから。


 色男を除いても、俺を皇帝モラセスの王宮から攫った海賊だ。俺は散々忠告されていたのにみんなの前で攫われたのが数時間前の出来事。


 海賊の船長らしき色男の名前はプラリネ、性格は女を見たらナンパしようの精神の持ち主。恋愛に慣れていそうで女の獲得率は外見からして高そうなのが憎い。


 顔はともかくプラリネも光喜の呟きに、眉を曲げて立ち上がった。


 帝国軍の魔術師部隊のローブみたいな軍服に光喜のリバースしたのがしっかりと染みこみ、張本人の光喜はすっぱい匂いが嫌なので一歩の距離だが離れた。


 しかめっ面で上半身の服を脱いで、広い河に捨てたプラリネは側にいる顔色の悪い光喜を、引き寄せて抱っこしたまま背中をさする。


 加速した船に光喜が酷く酔い、胃の物を出した光喜はこれ以上吐かなかったけど、気分が回復したわけじゃなく青い顔のままプラリネに背中をさすってもらう。


 たぶん普通の船だったら大丈夫でも、異常に早い船に光喜は酔うみたい。車に長時間乗っていても酔ったこと無いのに自分の意外な弱点を知ってしまった。


 でもこんなに気持ち悪いなら一生知らなくてもよかった。だって目的地に到着するまで、こうやって生き地獄を味わい続けるんだ。


 そろそろ勘弁して欲しい、俺はがんばったぞ。俺を誘拐した集団に助けを求めるくらい限界です。


 乗り物酔いがこんなに苦しいなんて小学の頃に遠足なんかで、バスに乗るとしょっちゅう車酔いしていた知り合いにもうちょっと優しくしてやればよかった。


 俺が酔う原因であるプラリネは、顔色の悪い光喜を気遣う。


 「辛いだろうが辛抱してくれ、まだ俺の船までは距離がある」


 一分一秒でも小船の高速移動をやめて欲しい光喜にとっては死刑予告と一緒だ、いっそ気を失えばいいのに。


 がっくり肩を落とす光喜にプラリネは背中を苦笑いしながらさすってやるしかない。


 頭上にある空だけが雲ひとつなく綺麗だった。


***


 その頃ガレット帝国の王宮の広場で皇帝モラセスと女神の守護者カラク、そして皇帝直属の帝国騎士の隊長カートンが多くの騎士と兵士を集め出発の準備が整った。


 カラクはいつも通りの服装、カートンは普段つけない目元だけ覗かせた兜を装着のほかはいつもの鎧を。


 そして普段はラフな薄着で過ごすモラセスは兜こそ装備していないが、一寸の肌を露出しない実用的な鎧を装着していた。権力者がよくやる見栄を重視した鎧ではなく、軽く動きやすさを追及しているのでモラセスの派手な顔には少々地味に映るが、濃い紫色を重点に使っているので目立つのは目立つだろう。


 モラセスは戦闘になると目立ってもらわなくては困る、敵からしたら首を取り易くなる危険性もでてくるのだけれども、味方からすると戦場で闘うお方。


 女神がいない今、最優先で身の安全を確保しないといけない立場にあるからだ。もっともそんな自体になる前にモラセスが敵をねじ伏せる現実なんだが。


 戦場の指揮官は何処にいても分かるようにしてもらいたい、その上でできるなら皇帝は後方で指揮をとってもらいたい。王族に忠義ある騎士達の進言をカートンは苦笑いで流すだけだった。


 騎士達の悲痛な叫びは置いといて、カラクとモラセスそして付き従うカートンの後ろには多種多様の種族の魔獣が並び、隣には騎士達が進軍を待っていた。


 目的地は光喜の巫女である双子姉妹と、カレット帝国で唯一女神の騎士に選ばれたエーリオが滞在している港町エマルジョンへ。


 必要最低限の兵士と騎士を置いて、光喜が攫われる可能異性がある場所に配属する。


 「俺の勘も含めて総合的に海が怪しいな……」


 皮で出来たガレット帝国の地図を開いてモラセスは指をさす。


 「お前の勘はともかく海岸に絞る理由は?」


 失敗は絶対に許されない状況で、いつも余裕のある冷静なカラクにほんの少しだけ焦りが窺えてモラセスは肩を揺らして笑った。


 「焦るなカラク、まず第一に女神殿が触られた後に王宮の空に飛行する魔獣の影はなし、同じく地上にも。その第二、ヤツの逃げた可能性の高い地下水路は、そこらの腕では「あの」滝は越えられないんだなぁ……報告では船が沈んでいる様子もなく腕のいい船乗りを雇ったとして」


 モラセスは一呼吸をしてカラクを見つめる、稀にしか拝めないカラクの真剣な顔に悪戯心が浮かんできたけど三枚におろされたくないから黙っておく。


 「はたして崇拝している民が女神に手を出すか?「お城から女神攫いたいんですが、雇われませんか?」と応募してみろ、必ずどこかで情報が漏れるに決まっている」


 女神信仰はノア・レザンの歴史といっても過言ではない、徹底的に生活レベルに女神信仰が組み込まれ、日本でもそうだが歌や舞いの起源は全て神への捧げものだった。


 歌から文字や高度な伝達基礎が生まれ、舞いから武道や作法など発展し現在に至る。


 つまりは文明自体が信仰であり、至高の神である女神は死後の世界にも関与しているしており死後の世界で永遠に苦しむ。


 光喜にとってはツッコミをいられずにはいられなくなるほど、女神の存在は良心の呵責が薄い者ですら信じていのだ。


 実際にガレット帝国の王宮に女神が降臨したと、光喜の存在がバレてしまい公言した今では世界中でガレットの王宮に女神がいると分かっている。


 一握りの金……いや人生を謳歌する金額を積まれても首を横にふるであろう。それだけで全世界の敵になりたくない。


 家族や一族を巻き込み、盲信している信者に嬲り殺されるのが目に見えてわかる結末。


 ならば元から長い付き合いがあって、プラリネが女神を攫う計画に神より仲間を優先したプラリネの部下と考えるのが容易い。そして船を操作する腕を持った部下がいるならば、プラリネ自身も海の生活をしていると思っていい。


 海でなく、近辺の河で集まった奴らなら帝国兵が目を光らせるはず。そのような不穏な動きがあれば。


 「闇の使徒や女神を妄信している一派の仕業でないと断言できるのか」

 「まあな、プラリネを調べていく内に面白い情報を掴んだ」


 全て憶測として考えていた事が、ある情報によって確信に変わった。プラリネは確実に孤立無援のガレット帝国から離れ海にでる。


 詳しいことは道中で、時間が勿体無い自分の魔獣を撫でカラクに視線を移すと、カラクも頷いた。


カラクの足となる魔獣は勿論、御馴染みのヒポグリフである。そしてガレット帝国皇帝陛下のモラセスを初め、無論カートンも魔獣を所有しており魔獣を乗りこなせる。


 魔獣の種族は多く、多種多様な飛び方なので馬や牛などよりもずっと乗りこなせるのは困難だ。魔獣が便利なのに所有者が多くない理由は捕まえるのに苦労するのと、せっかく捕まえて服従させても乗るのに難儀するのが欠点。


 それさえ何とかすれば、二度と馬で旅をしようと思わないだろうが。


 モラセスの魔獣はたかによく似た猛禽類の鳥のロックという鳥だ。それだけではカラクのヒポグリフにインパクトの面で見劣りするだろうが、そうではない。

 

 まず目を惹くのはロックの大きさ、地球の像ほどに巨大な体格に驚かされるだろう。気の弱いに人間ならばロックに睨みつけられると裸足で逃げ出すほどの迫力がある。


一方、騎士団長のカートンの魔獣は熊程度の体をし、体はわしでその上の顔が雄の獅子で構成されているズーと呼ばれる魔獣。首から下が鷲の翼を大きくズーが軽く翼を動かす、それだけで砂が周辺に舞う。


 「さて、女神殿の救出して皇帝……いいや男として汚名返上といってくるか」


 ロックにモラセスが乗り、手綱を片手で握りもう片手で剣の柄を握って笑みを深くする。久しぶりの戦場に若干の興奮が胸のうちから奮う。


 そこに宰補の妖艶なる美女のニーダがモラセスの魔獣ロックの足元へ近づいてきた。


 「我らが王宮を守りますゆえ女神様共々のご帰還を願っております、どうぞ御武運を」


 濃い紫色をした鎧いを着たモラセスに、ニーダは頭を下げた。


 「ああ、頼む」


 2人の間に恋愛という甘く切ない感情はないけれど、絶対の信頼を互いが感じられた。そしてモラセスは剣を鞘から抜き高々に掲げる。


 「行くぞ!栄誉ある帝国軍の諸君!!穢れた賊に死を与え忠誠を示せぇ!!我らには女神のご加護がある、恐れるな!!」

 「「「おおーーーー!!!」」」


 モラセスの声に反応して、魔獣に乗っている騎士と兵士から地を揺るがせるほどの声が返された。


 一斉に王宮の広場から数百匹の魔獣が空へ飛び立つ光景は圧巻の言葉以外、許さないほどの勇姿であった。


***


 プラリネに横抱きにされたまま、何度も問う質問をあえて光喜はもう一度した。


 「まだ?」


 もう誘拐した海賊のアジトでも何でもいい、この揺れから開放されたい。


 加速してからもう3~4時間はたったぞん、マジで助けてぇ。

 

 「もうつく、よくがんばったな」


 楽しそうにプラリネに腹が立つよりも、プラリネの発した言葉の意味の方が光喜には重要で光喜は顔を上げる。


 確かに耳にした!もうつくって、船酔いの苦しさからやっと開放される。


 そんな切実な光喜の願いが届いたのか、前方に大きな中世の清く正しく美しくファンタジー的な想像で思いつく賊船がそのまま現れた


 きっと船には三桁とは言わないが、それなりの人数が生活できる大きさ。それが人気の少ない森の影に存在していた。


 「あれだ、テクスチャー止めろ」


 自分の精霊の名前をプラリネが呼ぶと、スピードが段々と穏やかになっていく。


 ホッとする光喜にプラリネが男どもに声をかけた。


 「船にのる準備をしろ」


 声をかけたら光喜の顔を覗きこみ、お姫さま抱っこをして俺を起こした。


 「船に乗ったら酔い止めの薬を作ってやる、もう暫くの辛抱だ」

 「おう……死ね」


 弱っても悪態を忘れない光喜に、プラリネは声を出して笑った。


 海賊船の船には、船首像が取り付けられており白く美しい女性の像が剣を抱いた姿で飾られている。それを光喜は見上げていたが太陽が眩しく、目を細めた。


 「テクスチャー」


 プラリネが自分の精霊の名前を呼ぶ、すると河から飛沫を上げて羽の生えた魚が飛び出てきた。


 「俺とお姫様を船に運んでくれ、ご覧の通りお姫様は繊細なんで丁重に行くぞ」


 魚のヒレがついているところに生えた羽をゆっくり動かしプラリネと、プラリネがお姫様抱っこをしている光喜に近づく。

 

 テクスチャーがプラリネの足元に自分の背を寄せると、プラリネはテクスチャーの背中に足をのせてサーフィンのボートみたいに乗った。


 「コイツに乗って大丈夫か?」


 このまま背中に乗って空中を泳ぎ、船に乗るのかと不安そうに光喜はプラリネに尋ねた。テクスチャーが不安じゃない、乗ったのは良いがバランスを崩して河にドボンなんて、ただでさえ気分が悪いのに丁重にお断り願いたい。


 「問題ない、お姫様は情熱をもって俺に摑まってろよ」


 揺ぎ無い自信を見せて、魚の形をした水の精霊は契約者の要望どおりにゆったりとした動作で空を泳ぎ、巨大な海賊船の上に向かう。


 「よっと」


 プラリネと光喜を乗せたテクスチャーが船の甲板につき、軽い掛け声とともに船の上にテクスチャーからヒヨイっと降りる。


 光喜は先ほどの小船よりも安定性のある海賊船に乗れたのに内心少しだけホッとする、本当はほっとしちゃいけないんだけどね。この男が自分に危害を加えようとは思ってないのは何となく分かる。


 油断は禁物だけど、とりあえずは大丈夫な~んて能天気に構えていた。


 海賊船の甲板には数十人の海賊のこれまた正しい子分風の男が自分の持ち場で、光喜とプラリネを見ていた。

 

 光喜は船酔いで気分が最悪なのに更に、眉を顰める。周囲から「おっコレが女神か」みたいな雰囲気に。


 でたよ、久々の君は珍しいパンダですねじっくり観察しましょう的視線。


 「では、俺の部屋にご招待しましょうかお姫様」


 その視線に気付いたプラリネは、笑いながら光喜を抱き上げたまま船の大きな扉に入った。


 船は殆どの部分を木造で作られた年代モノの大型船、歩くとギシギシ木の軋む音が聞こえる。船の中でも豪勢な扉の飾りがされた部屋にプラリネが入った。


 まず目に飛び込んできたのは、床に固定された大きなテーブルと地図だ。きっと航海において針路の話し合いをしたりする多目的室なのかも。


 おくに続く扉を開くと、ちょっとまるで世界が変わった。豪華な部屋に所狭し戸飾られている美しい宝石に美術品。


 海賊らしく奪った宝かも、部屋に大きなベットと小柄ながらも小さく可愛い一人が揺り篭みたいにまどろむには最適なシェーズ・ロングがおいてあった。


 シェーズ・ロングは背もたれが緩やかについた長椅子で、ベットとソファが合体したような形をしている。座面が広く体全体を預けられるほど。


 シェーズ・ロングの造りも部屋に見劣りせず、豪華さよりは可愛らしさが現れた女性が好む趣向のソファだった。


 「お姫様の為に特注にしたぜ、なんせ野郎ばっかりの場所なんでな俺の部屋が一番安全なんだ、我慢してくれ」


 そういって本当のお姫様のようにソファに光喜を降ろす。


 しかし、とうの本人の光喜は感謝の顔一つみせずに相変わらずの憎まれ口。


 「そんなんどうでもいいから、薬寄越せぇ~腹の中が気持ち悪い」


 女の子が喜びそうなロココ調のソファがあったところで、船酔いが治るわけじゃない。気遣いをしてくれるならば光の速さで薬を持ってきてくれる方がありがたい。


 先ほどの小船から降りたとはいえ、まだ光喜の顔色は悪い。


 「大人しく待ってろ」


 そういうと、ソファの近くにあった紐を引く。紐は左右の厚いカーテンを括っていたものらしくソファにいる光喜を隠すようにカーテンが下りた。


 光喜からは向こうが窺えるのだけれども、カーテンから少し離れると光喜の姿は分からない程度。カーテンがソファを包むとまるで小さな個室のような感覚にさせる。


 起きるよりも何となく横になった、横になれば酔いが和らぐ気がして。


 広い個室でプラリネは壁に設置されている金属製の三角形のコップを掴んだと思うと、コップには金属製の蓋と其処にこれまた金属性のチューブみたく壁に繋がっているのを伸ばし大きめな声で言った。


 「ダクワーズ、急患だ。酔い止めの薬をもってきてくれ」


 金属のコップだと持っていたのは、どうやら伝声管(でんせいかん)という船内の通信機らしい。金属で作られたパイプで音が小さくなりにくく遠くに離れた場所でも声を届ける道具。


 「すぐに自慢の医者が薬持ってきてくれるからな」


 伝声管の蓋を直しているプラリネの声に、やっとホッとする光喜。この体調なら自慢の脳内ツッコミや毒舌が発揮できない。


 なんど心の中でツッコミをし損ねたことか、ノア・レザンに関わってから自慢のツッコミがとても冴える事。俺の常識を超えた行動を取るやつばっかりなんでね。


 自分のことは棚に上げる光喜だったが、第三者からしたら光喜も一般的からしたらかなり偏った行動をしている自覚のない、もと中学生男子だ。本人が決して一歩もゆずらないであろうが。


 「俺は船の指示を出してくる、お姫様は休んでろよ」


 光喜がいるカーテンに軽く手を上げて、プラリネは自分のベットに投げていた厚めの上着を取ると肩にかけて部屋から出て行く。


 プラリネの存在がいなくなると、漸く一人だけのテリトリーに光喜はホッとした。


 もしかしたら気を使ってプラリネは部屋から出て行ったのかも、そうだとすればありがたい。俺も男、弱った姿を今が女の性別であろうが見せたくは無い。


 足元には清潔な柔らかい羊の毛で出来た毛布を見つけたので、無断拝借。きっと俺のための毛布だ、俺のためでなくても使うがね。


 毛布は上等な羊の毛なのかチクチクせずに、しっとりとした感触。ガレット帝国では羽毛だったのでまた違った感触に口元がほころぶ。


 十分暖かい毛布に満足して、体をソファに倒し目を閉じる。


 此処暫く一人の空間も時間も無かったな、ずっとカラクと旅をしていたし、その後にこの騒動。


 小船の異常な加速と違って、大型の海賊船の揺れは苦痛を感じさせない。特別プラリネのプライベートルームが清潔だったのもありがたい。


 汗臭くてきったない場所に閉じ込められたら、問答無用で魔法をぶっ放していたかも。


 波の揺れと船の軋み以外に視界を断った光喜には感じられない。返ってそれが心地いい、他人の気配にちょっと疲れたぁ。


 そのまま旅の疲れもあいまってそのまま眠りの世界へ足をかけそうな時、静かに扉が開き。一人の男が器を持って船長の個人室へ入ってた。


 「失礼します、医者のダクワーズです。女神さまにお薬をお届けいたしました」


 カーテンの側に人が近づく気配、そして待ち望んだ酔い止め薬がすぐ側に!光喜は眠気を蹴り飛ばして横にしていた体を起こした。


 多少休もうが光喜の自律神経の興奮は収まっていない、一般的に乗り物酔いの不快感は神経器官から得た情報(揺れや景色など)を脳みそが整理できなくてなるのが多い。光喜もこのパターンだ。


 よく自分で車を運転すると酔わなくて、助手席に座ったら酔う人がいる。自分で運転する分は情報を運転して整理できているけど他人の運転は自分で動かしてないから酔う。


 だから薬で興奮した自律神経を緩和してやる薬草を調合したのを医者であるダクワーズが、飲みやすいよう液体の飲み薬として持ってきた。


 カーテンの側に膝をついて頭をさげる。


 「このようなご無礼を働き我々が女神様にお慈悲を乞……「薬頂戴!!」」


 ばっとカーテンが突如オープン、驚いてダクワーズは顔を上げてしまった。


 一般的常識から上位の、特に女性は下位の者に姿を見せない。常に関わるのならばともかく、上位の者が親しく話しかけられるのは許可を貰わなければ無作法になるのに、絶対上位の女神は姿をあっけなく見せた。


 「く・す・りぃ!焦らしプレイだったら泣くぞ俺は!」

 「ただいま!」


 本気で泣きそうになる光喜に驚き、ダクワーズは伸ばした光喜の手に思わず薬を渡してしまった。


 優雅な動作とは程遠い飲みっぷりを披露する光喜に、ダクワーズは声も出ない。今の光喜の姿は汗だくで帰ってきたお父さんが仕事終わりのビールを飲む姿といい感じに重なるってくらいの飲みっぷり。


 味覚なんてどうでもいい、ただいのムカつきと三角器官の異常さを一刻も早く鎮めたい一心。


 「ぷわっ!結構さっぱりして飲み易い、ありがとう」


 そういって器をダクワーズに手渡しして返した、何から何までダクワーズには気安すぎる女神に口をぽかんと開けてしまった。しかし直ぐに顔を引き締めて頭を下げる。


 「女神様はお疲れのご様子、どうぞごゆっくりお休みください」

 「そうさせてもらう、つかめっちゃ眠たい……の前に顔を見せて」


 カラクが俺を迎えに来るまで俺の頼りはプラリネと、ダクワーズというお医者さんだけだろう。プラリネからは此処からあまり外へだしてくれないのが言葉の裏側から感じられた。


 俺だって女に飢えた船乗りの前にでたくない、女として見られるのもそうだけど血迷った男がいない断定なんぞ俺にはできないから。


 万が一アーッ♂な出来事と遭遇する確率があるならば、アホじゃないので安全地帯に陣取ります。


 「僭越ながら」


 顔を上げた男は、プラリネとそう変わらない歳の男、いかにも剣より本がにあうタイプな感じ。顔は優しそうで髪は髪留めを解いたカラクみたいに長くたらしている。


 そして。


 (またいい男だよ!イタリア系色男のプラリネと、インテリア系知的色男ときましたか!はじけろ)


 個人的なやっかみを壮大に抱く光喜に気づくはずも無く、ニッコリと笑うダクワーズ。


 雰囲気は先生が似合う、しかも安心できるオーラがあり悪いが海賊船の医者には勿体無い。


 何故か瞼がやけに重く感じる、そしてカクッと光喜は人と対面しているのに、眠りに落ちそうになった。


 「ご無理なさいますな、薬には睡眠効果のある薬草も合わせております」


 光喜の体質と調合した薬との相性がよく、旅疲れもあって効果が現れてきたようだ。


 「うん、眠い」


 精神的にも肉体的にも光喜は疲労している、カラクとのシナモンの件ですれ違い心が疲れて、休みをとったとはいえ数日の魔獣によって移動して地上に足をつければ攫われた挙句、船で大いに酔った。


 起こした上半身をソファに倒す、手で毛布を体にかけなおした。ダクワーズも光喜が手を伸ばした時に広がったカーテンを直して光りを遮って寝るのに心地いい環境を整える。


 そして懐から乾燥した木の一部を慣れた手つきで、部屋にある道具を使い焚く。


 焚いた木の欠片を専用の穴が空いている器に入れて、船の振動に倒れてしまわないように壁に取り付けられたフックに引っ掛け、無言のうちに再びカーテンに向かい一礼すると音も無く出て行く。


 夢と現実の狭間で光喜の鼻に良い香りを捕らえ、王宮の香木より好きだなぁ…と呟き深い眠りについた。


 主がいない部屋で女神が穏やかに眠る、その眠りを壁に飾られた黒い刀だけが守っていた。無言のまま。


***


 〈許さない……許さない……許さない……許さない……〉


 呪詛を呟く声に光喜は振り返る、ここは何処で何時か何て頭になくて。酷く寒気のする声が気になった。


 しかし、振り向いた瞬間。


 視界は真っ黒に。


 駄目だ、一人にしてしまう。意外と寂しがるんだよアイツ。


 心は落ち着いているのに、悲しくてしょうがない。泣きそうになる、こんな選択しか出来なかった俺たちの……。


***


 「お姫様、おい」


 プラリネに体を揺すられて、光喜が目を覚ました。


 「大丈夫か?って俺が言っていい台詞じゃないが」

 「は?」


 いやに真剣な顔をしたプラリネに、光喜は怪訝そうに顔をゆがめた。


 「ベット以外では女を目のまで泣かせる主義じゃないんだ俺は」


 そっとプラリネが光喜の眼元を拭う。そこで自分が泣いているのに気がついた。


 「馬鹿か?よく覚えてねーけど、そんなんじゃねーよぉ!」


 近い顔の距離のプラリネに枕代わりにしていたクッションをぶつける、けど寸前で避けやがった。


 「べっつにアンタに攫われて泣いていた訳じゃないんだよ、俺は昔からたまに夢で泣く癖があるだけだ」


 でもちょっと俺の寝癖、空気嫁って突っ込みたい。かっこ悪いな……もう。


 「そうかならいい…で、気分は?」

 「爽快、嘘みたいに全快」


 光喜に投げられたクッションをソファに戻し、プラリネは笑い立ち上がった。


 「そりゃそうだろう、お姫様は丸一日寝ていらっしゃった」

 「うっそ!」


 驚いた俺にプラリネは「嘘ついてどうなる?」と逆質問されて、俺は信じられないがそうなのかと受け止めた。


 「お姫様も目が覚められたからには、やる事をやらんとな」


 呟くプラリネ、そんな呟き聞いちゃいない光喜は寝すぎて瞼が微妙に重たい。だけどプラリネは海賊船に乗った時同様、お姫様抱っこして起こす。


 「おい!やめれ!」


 誰が好き好んで男にお姫様抱っこされんとならんのじゃ!俺が可愛い子にしてやるんだよ!男に戻って……二~三年後くらいに、できる男になってんだ!!(予定)


 プラリネが使っている大きなベットに光喜は暴れるので、少々雑に降ろされた。


 光喜が起き上がる前にプラリネもベットに上がり、光喜の両手を自分の両手で拘束する。


 「ベットなら存分に泣いてもいいんだぜ?」


 顔をひきつかせる光喜にニヒルに笑い、プラリネはベットの天蓋のカーテンを括っている太い紐を光喜の両手に巻きつけ縛った。


 背中でもなく頭上でもなく、単純に手首に紐を縛られて普段の光喜なら反撃を即実行しているはずだが、展開についていけず魚のように口をパクパク開くだけ。


 過去に自分の魔力で酔わせたニーダさんやエーリオに性の対象にされたけど、今度のプラリネは2人とは違う。あれは酔っていたから、でもプラリネは。


 頭が真っ白になって光喜が硬直していると、着物に似た構造の上着を着た光喜の襟の部分を掴みプラリネは光喜の白い肌と鎖骨が現れるほど引き下げた。


 「女神も知らない天国教えてやる」


 海賊らしい、笑みを深くしたプラリネに光喜は悲鳴すら出せずに呆然と茶色をしたプラリネの眼に映る、まるで生娘の自分を無心で見つめた。



今回は長くなりました、お待たせした分(笑)

言い訳は掲示板でさせてもらいますぅうううう!!!ゴメンなさーい待ってくれた人たちありがたいです。

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