第三十九話 太陽と俺とフラッシュバック
あらすじ 何とかお外へ出られるようになった!万歳俺!!以上
突然だが!俺は山育ちだ!!俺の町は四方を山で囲まれた大雨の日には土砂崩れがないか心配になるほど、山に囲まれた場所にある。
何年か前の大嵐にはリアルに、道路が土砂崩れで通行禁止になって大変だった。苦い思い出…。
でも俺の町は悪いことだらけじゃないよ?マイナスイオンは満載で、夏でも涼しくて空気のキレな……オイコラ!!誰だッ!!?要は田舎だろうって言ったやつ!!??正解だよ!!!!
そんでプラス俺んちは道場でありまして、仕事と家が密着しちゃったりする上に、親父と母さんは武道を広めるためにいろんな場所に行く。だから俺の家では家族旅行は貴重な思い出であり、海は普段構えない俺たちのために親が連れて行ってくれるサプライズだった。
最近は大きくなったから、そんなサプライズも少ないのだけども…今でさえ。
よし!海に行こうか?!
っと言われると心が躍る。川も十分冷たくて泳げるが、海の広さと深さはまた格別。ただ川は水が淡水なんで後のケアは楽だよな。
とにかく、夏休みの数日とかに連れて行ってもらえる場所、それが海なのだ!!
「いや~ほ~!!」
それを踏まえて俺が海を見た瞬間に、テンションが上がるのを誰が止められようか?
二日かけて、モラセスが統括する王宮からこの港町までやってきた。
女神がノア・レザンにいるってだけで、目的の街へ行くまでに立ち寄った町や村には活気と人々の笑顔が溢れていたのが印象だった。
心が腐りかけていた俺はノア・レザンに来てよかった。とかさ、思っちゃったりするわけ……てれちゃうね。
自分の存在がどうあろうと望まれていたり、期待をもってくれていると重いのが肩にかかる一方、ちゃんとしなきゃって気持ちも引き締まる。
でも、しっかりと遊びや休憩もとらないと。
俺の純白の髪を隠すために、毎度おなじみ頭に大きな帽子を被ってガレット帝国で一番王宮に近い港町へ到着した。
都市が近い分、とっても人が多くて繁栄しているのが遠くでも大きい街に見て取れる。街はエマルジョン、呼びにくい名前の街だよな。
観光とも貿易にも盛んで、今はお隣のお国が大変なのと女神……俺がガレット帝国に滞在している関係で人を運ぶ船は大分減ったが、毎日のように船がこの街へ来て、旅立つらしい。
旅の足となっているヒポグリフに俺とカラク、トンボの羽が生えた大蛇に双子姉妹、巨大なニワトリのコカトリスに乗っているエーリオ。
もう、御馴染みのメンバーになっちゃった、この五人で港町の上空から街を見下ろす。
目的はエーリオの魔法具とカラクの新しい刀を探すこと、今回カラクは普通の剣じゃ物足りないから魔法具の刀にするらしい。
エーリオは魔術具の補佐に魔法具を買いたいのだと、でも王宮のお抱えが造っていた魔法具が全て配布されて順番待ちの状態。
それならフリーの魔術具や魔法具を造る職人、魔具師の所へ行く。っていうのが最大の目的、俺は観光だけどね。
カラクとエーリオは具体的にどんな魔法具にするか、まだ決めてないらしく旅の途中に2人は俺を挟んで何度か話し合っていた。
まあ、実際の品物を見て決めるだろう、エーリオは皇帝のモラセスから貰える魔術具を書いてある巻物を何度も暇な時に読んでいた。熱心というか、流石は戦闘のプロというべきか。
本人は一生に一度の幸運って、呟いていた。なんかもう結婚の相手を探すほどの真剣さに俺は頑張れってエールを送るしかない。
さて、足の下には大きな街と港に大小様々な大きさの船たち。店の多く並んでいる通りにはたくさんの買い物をする人々は活気で溢れている、お祭りなんかの雰囲気が大好きな俺はワクワクしてしまいそうだ。
「早く降りようぜ?」
俺はやっとついた港町にウズウズとして、カラクを急かす。
カラクも無言のまま頷くと、魔獣が降りても大丈夫な広さと人気の無い場所を選んで下降していった。
魔獣は本来獰猛で肉食なんで人が集まっている場所にドンっと、降り立てば騒ぎになる。人が少なく広い場所に下りるのが一般的なマナーらしい。
そんなに魔獣を所有している人は少ないから、魔獣は早々にしっかりとした宿に預けて俺たちは街を探索することにした。魔獣は高価な移動手段で返り討ちにあうのは目に見えているけどさ、盗もうと纏わりつくヤツが現れるわけ。
魔獣も主以外には服従しない上に、本気で抵抗するので血の雨が降る。出来心がでちゃったヤツの身の安全も考えて、エーリオがコカトリスと泊まったことのある安全な中級クラスの宿を案内してもらった。
やっぱ魔獣は高価で、地球で言えばメチャ長いリムジンに乗っている感覚。
宿までの道のり、街の中を魔獣の手綱を引いて歩く俺たちご一行は、相当お金持ち集団に見えただろう。
それも宿に魔獣を預けちゃったら、関係ない。
宿は海のすぐ近く、ごみなんて落ちてない綺麗な砂浜と潮の香り。
う~ん、海に来たーーーーー!!!って実感するねぇ!!
皆が受付にいる中、光喜は早速ブーツを脱ぎ捨てると浜辺へ駆けていく。海にテンションが上がっていた光喜の行動は予想の範囲だったので皆は黙って光喜の後ろ姿を見つめる。
ダブンっと海の中にジャンプして飛び込んだ、全身じゃなくて足だけつけて。
「うわぁぁ!冷たい!!」
水着を持ってないので、ブーツを脱いだ足だけを海につけて海の感触と冷たさだけを楽しむ。ガレット帝国の季節はちょっと寒くなる頃らしい。日本とは真逆だな。
光喜は足を何度も足ふみをして海の水で遊ぶ。
「光喜さま、余りはしゃがれますと転んでしまいます」
数歩離れた場所から、マリが笑いながら俺に注意を促してきた。
「おう!でも気持ちいいな」
ノア・レザンの海は地球の海と大差ない。冷たくて潮の香りがして、しょっぱい。
少し静かに海を見ていると、魚も泳いでいる。太陽がキラキラ光り水面を反射して煌めきに光喜は目を細めた。
「ん?」
海の彼方の水平線を見ていた光喜は、目を凝らしてその先を見つめる。
「マリ」
「はい、光喜さま何か?」
後ろにいたマリへ振り返り光喜は訪ねた。
「あれは何?」
光喜は地平線へ向かって指をさした、指の先には島っぽいのが水平線にチョコンとある、遠すぎて光喜の眼には確認がとれなかった。
「ああ、サチネット島ですね。今日はよく晴れているので10の島まで眺められます」
「10の島?」
俺はまた頭に?が浮かぶ、前に五つの大陸と10の島がノア・レザンだって誰かが教えてくれたな。
「10の島は帝国に属さない少数民族が暮らす島です。大陸の助けがない分、帝国の支配を受けない独自の政治と文化を持つ独立した国…と申しましょうか?」
つまりは帝国ほど大きくないが、島の国って訳ね。
「ですが、ご安心を。10の島も女神であられる光喜さまを崇拝し、貴女様の僕ですので」
どの角度で安心しろと?別にさ、僕とか欲しくないのよ?俺。
ふ~んと相槌をうち、チラリと島を見る。
ポツンっとここから小さくあるけど、近くにいったらもっと広くて大きい島なのかも。
光喜が島に対して興味が満たされ、もう海から出ようと振り返った瞬間。
酷い眩暈にも似たフラッシュバックに襲われた。
頭の隅から光りの凝縮したものが突然はじけた。
羽の生えた魚 水 逆光で見えない男 黒い剣を持つ男に戦争の風景
それらが次々と光喜の頭に現れては、消えていく。そして俺の意識も一緒に消えた。
意識の向こう側には白い髪を持った女性が、笑っていた気がする。
「光喜!光喜ッ!!」
気がつけば、びっしょに濡れているカラクが目の前にいて太陽がカラクの後ろで輝く。俺の覚醒を促そうと上半身をやや起こされてゆすぶられる。
そんで焦っているカラクの顔。
「あれ?」
体中が冷たいのを、瞬時に感じて自分の体が全身海に浸かったのを理解した。
俺は倒れていた上半身を起こして、自分の状況を改めて見渡す。
全身びっしょり光喜は海と親交を深め、カラクは下半身が海に浸かり浸水状態。
どうなったの?俺?
「大丈夫か?」
「何が起きた?」
質問に質問で返す光喜にため息をつき、カラクは俺を立たせると先ほどの経緯を説明する。
「突然お前が後ろへ倒れた。今の気分はどうだ?」
「へっちゃら、眩暈みたいなのが起きたけど……眩暈じゃないかも」
なるへそ、カラクは突如背後から海へダイブした俺を屈んで助けたから濡れたんだな。それよりも早いスライド写真みたいな映像は前に見た夢にそっくり。
予知夢らしき夢と今のフラッシュバックの関連性をつかめなくて、光喜は頭を傾けて海から上がる。
双子姉妹に病気かと散々心配をされて俺は、一度宿で着替えると今度こそ観光をしに街へ行く。
海で見たフラッシュバックは、軽く浴びたシャワーと一緒に流されてスペアの服を着なおすとすっかり記憶のすみに追いやられた。
そうそう、外見が18歳になった俺の新しい服は前の服を大きくしたデザインで前回と大差ない。着物みたいな袖にスパッツみたいなパンツと膝上まである白いブーツ。
俺が女神とばれたら、きっと白いブーツとか流行るんだろうな。俺が最先端の流行を作るとか考えると妙な気分。
夜店のように、たくさんの店が左右に並んで客を呼び込む声が盛んに飛び交う。飲食、衣服、雑貨、武器や防具と薬草らしき物など見慣れた商品から怪しいものまで。
キョロキョロ周りを見ながら歩くので、俺は何度かカラクやエーリオに後ろから押される。
「あんまり余所見をしていると、人にぶつかるよ?」
双子姉妹は俺の前を歩き、人の波を左右に分けてくれているが肝心の俺がフラフラ視線を動かしているので、それでも人とぶつかってしまいそうになる。
「悪い、でも楽しいな」
俺は旅行とか嫌いじゃない、知らない場所に行くのも好きなタイプだ。でないとノア・レザンまで来ない。
「本当に大丈夫かい?僕たちは魔具師のところへいくけど」
「おい、其処まで子供じゃないぞ?」
心配そうなエーリオに俺は眉を顰めるが、エーリオの隣にいるカラクは鼻で笑う。
「どうだか」
ムカッときちゃう俺だけど、ここで反抗すればコイツの想像したとおりになるだろうから、グッと我慢。
「俺はマリとヨミと観光するからさ、用事済ませればいいよ」
本当は魔具師にあってみたかった、でも何故かカラクとエーリオに全力で止められた。そんなにヤバイ人なのかな?
「では、夜には戻るだろう。……問題を起こすなよ光喜」
踵を返す瞬間、俺に釘を刺すカラクに。俺は無音で舌をだして猫を追い払うようにシッシッと手でカラクを払う。
「じゃあね、お土産にプルルの実買って来てあげるね」
プルルの実は甘すっぱい果実、外見はメロンの色とキュウリの形をした光喜のお気に入りだった。
全くエーリオはお子様対応してくださる、ついでにエーリオにもカラクと同様に手で追い払ったら笑われた。
「じゃあ、どこから行こうか?」
俺が後ろにいる双子姉妹に振り返ると、双子姉妹はニッコリ笑って。
「「ご案内します、光喜さま」」
と返事をくれる。
***
「ここらだ」
カラクが途中に立ち寄った、ギルトから情報を買うと渡されたお粗末な地図を指先で掴み、エーリオと共に道を歩いていく。
「ずいぶん…な場所に住んでいるんだね」
昼間でも夜の匂いを香りさせる場所を2人は、人をのけながら進んでいた。
匂いは慣れない女性と香水と、本能をむき出しにした欲望の匂い。
長旅をした男を癒してくれる場所、といったら聞こえはいいだろうか?街にはいろんな所がある、しかしこの場所も人間の業やらドラマが集る場所だ。
一言で言えば遊郭―――気高い娼婦が働く店が並ぶ。
2人は帝国からの恩恵で一般市民よりは上等な服を着ている、例え旅用の服でもだ。それに加えてカラクは逞しい男前で、エーリオは俗世間にはいかにも「僕貴族です、おぼっちゃまです」と公言しているような爽やか系の美形。
ここで飢えを満たしに来た男たちとは異彩を放つ、決して女を求めにきた雰囲気ではない2人。
なのでカラクとエーリオは一時の夢を見せてくれる夜の妖精にちょっかいを掛けられていく。
カラクの逞しい腕にわざと、中々薄着の服を着た美女が意味ありげな視線と共に肩を猫の様に軽くぶつけてきたり、エーリオにいたっては純粋そうなのでからかい意味でもすれ違う瞬間、柔らかい指でエーリオの頬を撫でたり。
恋愛は純愛しかしなかったエーリオには少々刺激が強い、だから光喜と同行はさせなかった。双子姉妹は別の意味で大変な騒ぎを起こしそうなのもあるが。
カラクは妖精たちを終始徹底的な無視で流し、エーリオは少々手こずりながらも店と店の間にある人一人が通れる小道に着いた。
「恐らくこの奥か、まったく相変わらず気の触れた女だ」
カラクの呟きにエーリオは苦笑いをする、彼女の本職ならばここは似つかわしくない。本来ならどの帝国ですらお抱えの魔具師になれるほどの才能を持っているのに。
手にしていたお粗末な地図を捨てて、カラクは両側店に挟まれた小道を進む。カラクの後ろにエーリオも続く。
道を真っ直ぐ進んでいくと、建物に囲まれた薄暗く汚れている小屋よりは大きい一軒家を発見、ドアから中へ入る。
中は様々な金属を扱うための道具や薬品、見たことのない生物の切れ端に怪しいビンに入った薬らしき液体が棚や机に無造作に置かれていた。
百歩譲っても綺麗好きとは賞賛できない室内に、カラクは眉を顰めて足に物が引っかからないように歩く。
部屋の中は無人だった、ガレット帝国でも指折りの魔具師ザーネの姿は無い。
「留守…?」
エーリオは室内を見渡し、残念そうな声で囁いたがカラクはズンズン部屋の奥へ行き、寝室のドアを開く。
「ちょ…!」
流石に其処はプライベートルームだろう?と口を開いたが、カラクが手で止めたのでエーリオが黙った。
カラクはドアの向こうへ行くと、顔だけ振り返り。
「其処にいろ、異臭を嗅ぎたくなければな」
不機嫌そうな顔で言うので、エーリオはとりあえずカラクに任せようと頷く。
エーリオの返事を待たずに、カラクは部屋の大部分を占める真紅の天蓋つきのベットを睨む。
辛うじて、エーリオはカラクの背中越しに中の様子を窺っていた。
「寝たふりはよせ、淫売」
ベットに寝ている人物に向かって、カラクは罵倒ともいえる言葉を投げた。
「あ~らぁ、珍しいこと」
大きなベットからは1人の妖艶な美女が上半身を起こした。
外見は二十代から三十代に見える、ぱっと見て彼女の雰囲気が実際の年齢を感じさせないのだ、カラクも知らない。知りたいとも思わない。
腰の下まで流れる強くウェーブした濃い琥珀色の髪と、悪魔的な美しさの黒い瞳が怪しくカラクとエーリオを見る。
長い足をベットから下ろし、カーペットが敷かれている床に美女が立った。全裸で。
エーリオはサッと視線を逸らす、カラクはどうでもいい様に美女を見つめているが、顔には早く用件を済ませて帰りたいとデカデカと書いてあった。
美女は娼婦のような、かえって神聖さまで感じさせる肉体をモデル歩きでゆっくりとカラクの前に立ち。
「お久しぶり、デオロライド」
まるでベットの中で甘い関係のような声で言う、しかしカラクの眉間にはこれまでにないほどの深い皺が刻まれ、殺意すら感じる眼光で美女―――魔具師ザーネをにらみつけた。
「この名で呼ぶのは止せ、二度とだ」
怒りを押し殺したようなカラクに、エーリオは怪訝そうな顔をした。至近距離でカラクとザーネは話をしているので会話は聞こえないが穏便な雰囲気をザーネが崩しているのは感じられる。
「あら、相変わらず無愛想ね?今日は私を買いにきたの?歓迎するわよ、そこのボウヤもまとめて可愛がってあげるわ」
薄く口を開けて、かさついてもないのに舌舐めずりをして唇を潤す、それすら男を挑発する動作だ。
「頼まれても御免こうむる、俺たちは魔法具を求めてやってきた」
ノア・レザンの通貨が入っている、銀色のパフが大量にはいった皮袋をザーネにカラクが押し付けた。チラッと自分の胸に押し付けられた袋をザーネは見たが、邪魔そうに掃う。
床に散らばるマッチ棒の形をした、ノア・レザンの通貨が蒔かれるが誰一人として視線を逸らさずに相手と見つめあう。ロマンチックな状態じゃないのが惜しまれるが、カラクにはどうでもいいことだった。
「私の商品はオーダー製なの、作り置きをしたそこらの粗悪品とは訳が違うのをご存知でしょう?」
カラクの腰にゆっくりと手を伸ばして、カラクのベルトにつけてある八つの管を指でなぞる。
「いつ頃できる?」
カラクの問いに、ザーネは笑う。
「さあ数時間後か数日後か数年、かかるんじゃない?主に私の気分しだいで」
「ふざけるな、こちらは武器が無い状態でいるつもりは無い」
更に面白そうにザーネが笑う、カラクをからかって楽しんでいる余裕すらある。実際にはからかっているのだろう。
「それこそ私には何の関係ないわ、魔法具を造るのに協力もしてくれないくせに」
面倒な顔をしてカラクは、長いため息をこぼす。後ろで聞いていたエーリオは。
「協力をすれば早く魔法具が出来るのですか?」
と訪ねると、ザーネは微笑を深くして、カラクの横を通りエーリオの前まで歩いてきた。
顔を赤くし、ザーネの体を視界から外したエーリオに女の色香をもったザーネが、エーリオの首に腕を回して耳に囁いた。
「そうよ、こうやってね」
突然エーリオの唇にザーネが唇を合わせ、驚いたエーリオはザーネを跳ね除ける。
女性に強く、突っぱねた罪悪感がかすかに胸を横切ったが、それ以上に驚いたので手で自分の唇を押さえた。
「私は依頼客と一晩共にするの。そうすると相手の属性からクセまで私に情報が流れ込んで、最高の魔法具が造れるわけよ?」
可愛くウィンクをして、エーリオに背を抜けるとベットに向かって戻っていく。
「今日は帰って頂戴、昨日の客は疲れる相手だったわ。まだ新しい魔法具を造る気になれないの」
カラクは、顔をしかめると体を動かし入ってきたドアへ足を動かそうとすると、ベットからザーネの声だけが届いた。
「昔の誼で剣だけは貸してあげる、ドアの柱にあるわ」
そういってザーネはベットに完全に体を預けて、目をつぶった。
カラクは無言のままドアの扉を支える柱まで歩き、柱を観察して手で触ると、柱の一部がフライドして中から一本の刀が出てきた。
無言で柱から取り出すと、鞘に収まっている大きな刀を持ってエーリオと共に家から出て行く。
こんにちは、毎度更新をもっとしたいとほざいているに、一向によくならない長毛種の猫です。
本当は七月中にもう一回は更新したかったです。そして今回の魔具師ザーネは本当はもっとぶっ飛んだキャラだったのですが、自粛しました(笑)
実はエーリオはキスされただけではなく、あの場面でディープキスをするつもりでしたが、我に返ってやめました。
とにかく、中途半端な所で切れたので、もう一つの作品を書き上げてから続きを書きたいですので、見捨てないでほしいです。