第三十八話 バカンスにGO!
あらすじ 変な夢をみたけど、俺は元気です!!以上
昨晩の夢が嘘のように、光喜は寝台の上で腕を伸ばし背伸びをしてから寝台を降りる。
朝日が窓から覗き、輝かしい光りを光喜に降り注がせて気持ちがいい朝を演出してくれていた。
気持ちよく目覚め、朝餉を綺麗に平らげた光喜は、体だけでなく心もゆったりとした時間に満足そうに上機嫌に月見の宮の廊下をカラク同伴で歩く。
朝食の朝餉をカラクと一緒に食べたついでに、俺の警護もあって散歩につき合わせた。本当は朝のランニングもしたかったが、今日は我慢。
騎士が要所要所に立って俺の警備をしているのに、カラクはいつのも巨大な刀でなく騎士が使う大きな剣を腰に提げて歩いているから、爽やかさが半減だけど仕方が無い。
久しぶりにのんびりと俺が賓客の館から整いすぎて映画のセットかよ?と訪ねたくなる庭に散歩しに行こうとしていたら、庭の一歩手前でエーリオが石のイスとテーブルに資料らしい本を何冊も広げて唸っていた。
真剣に本を読んで、光喜は近づいても彼は気付かない。熱心なのはいいけど、俺の騎士としてはどうなの?
悪戯心でエーリオの頭に顎を乗せて、頭上からエーリオの手にある本を覗く。
「重いよ、光喜」
子供らしい行動に苦笑いをするエーリオを他所に、光喜は興味津々の顔でエーリオの書物を覗き訊ねてみる。
「何だ?それ」
本は難しい文字がビッシリかかれ、武器の絵が解説としてびっちりと描かれ載っていた。
武器のカタログ?
興味津々の様子な光喜にエーリオは笑い、本を見せてくれた。
「この本に描かれているのはガレット帝国で管理されている、魔術具だよ」
「エーリオ君、そう仰って俺に理解できると思うかね?」
エーリオは光喜の言葉に声を出して笑った。
もうマリとヨミと同じく、エーリオも光喜が異世界の住人だと説明しているので知っている。
最初はどうして物事をよく知らないのか女神という特別な存在だからだと結論をつけていたが、今は当然のことのように受け止められた。
ただ、光喜が以前の性別が男だというのを知っているのは、光喜を召喚した賢者ファーロウといつ間にかファーロウから教わっていたカラクぐらいだ。
今更…俺男でしたって言うのもどうかと思う、特に双子姉妹はお風呂まで一緒だったから気恥ずかしい。
男だったから双子姉妹とエーリオと嫌われるとか心配してないんだけどさ、それで「男から女にされて可哀相」と思われるのが嫌なんだ。
自然にばれるまで光喜は隠し事というつもりはないが、自分から喋るつもりはない。
エーリオの頭に顎を乗せたまま、光喜は彼の背中に張りついた。
「では、女神様。僕の説明をお聞きください」
本気で敬ってない声で、手にしていた書物を俺に見えやすいように広げてくれた。
光喜はエーリオの頭からのけて、彼の肩に顎を乗せるようにして書物を覗く。
「これは魔術具ってね、魔力を消費して戦う武器なんだ」
う~ん、ピンと来ない。
正直カラクの腰につけている魔法具と、普通に出回っている道具のカテゴリーすら曖昧なのに。
そのことを素直にエーリオに伝えると、エーリオは笑って答えた。
「気にする事ないよ。簡単に説明すると精霊と契約して魔法が使えるのは魔術師、その魔術師が魔力を込めて作ったのが魔法具で……」
いったん話を止めて、エーリオは手をかざす。光喜によって魔力を強化させてもらい呼び出せるようになった、自分の精霊である土の精霊キルッシュが現われた。
「キルッシュ!」
エーリオの精霊の名を叫んだ光喜は、光りの速さでエーリオから離れキルッシュに抱きつく。
長毛種のモルモット、耳だけだら~っと長く垂れ下がった羊くらいの大きさの精霊。
抱きつけばモフッと柔らかい毛皮にうずまる。
光喜の全身でキルッシュに抱きつく姿を見て、エーリオは笑いカラクはため息をつく。
「光喜、聞いている?」
余りにも嬉しそうに頬を擦り付けている光喜に一言声を掛けてみた。
「おうよ、続けて」
うずめた顔を上げ、今度は念願のキルッシュに乗ろうと、光喜が自分の精霊に跨る。
精霊の性格はバラバラだが、余り人間と馴れ合わないので、少しばかりエーリオは腰を浮かしかけた。
しかしキルッシュは、平然として嫌がるそぶりを見せない。実は契約相手のエーリオが触れるのさえよく思わないくらいに、他人の接触を嫌うキルッシュが大人しくしている。
心の中で女神だからかな…。と呟いたが、顔に出さずに魔術具の説明を続けた。
「精霊から造られるのが魔術具、素材が違うだけで造り方は殆ど一緒」
精霊にも命が尽きる日が来る、その日を精霊は感じるとノア・レザンに還る前に自分の魔力を結晶化して残す。まるで自分の子孫を残すかのように大切なものへ送るのだ。
大概は自分が暮らしていた森や湖など、場所に魔力の結晶を捧げて末永くその場所が豊かであるようにするのだが、人間との契約で契約相手やその一族に自分の結晶を託す場合もある。
それは人間と精霊の強い絆が合ってこその話、魔術師ならば誰でも授かれるものではない。
精霊の結晶は意思を持たない精霊といった具合で、純粋にエネルギーの魔力さえ注げば精霊が魔法を使ったと同様の効果が得られ、光喜たちのメンバーでは光喜の巫女であるマリが所有するスティレットも魔術具だ。
彼女のスティレットには、彼女の先祖と契約した水の精霊が残した結晶が入っている。同じ属性の精霊なのでマリにはとても使いやすい。
マリのスティレットは刺した部分を氷漬けにする効果があって、氷が這う規模は魔力の消費を惜しまなければ、何処までも広がっていく。
しかし魔力さえあればマリの妹であるヨミも、スティレットが使える。勿論、ただのナイフではない。
魔術具の醍醐味である魔法もつけて。
だが、ヨミの相性が一番いいのは風。だから水の属性と相性のいいマリよりもずっと魔力を消費してしまう。
賢者ファーロウのように全種類の精霊と契約できるならばともかく、ヨミにはマリよりも負担がかかる武器。
魔術具のメリットは、魔力を操れる者ならば魔術具の魔法の攻撃が可能であり、精霊との契約は不要。
逆にデミリットの方は、武器として使用するだけで魔力を消費してしまうという難点。
それさえ目をつぶれば、とても強力で便利な武器なので希少価値もとても高い。
持ち主がなくなった魔術具は高値で取引されるか、今の皇帝のように国が管理されている。
誰にでも使える強力な武器とは脅威にもなるからだ、因みにカラクが腰につけている筒は「魔法具」で「魔術具」ではない。
魔術具は何度も魔法が使えるのだけれども、魔法具は基本使い捨てタイプ。
カラクの筒は閉じ込めた魔法を一度はなったら空っぽになる。
それも魔法具と魔術具の大きな違いだ。
「それでさ」
光喜が一通り説明をエーリオから受け、今度は違う質問を彼に投げかけた。
「なんで魔術具が必要なわけ?」
前に一度、共に戦った時のエーリオは猛々しく戦ったのを光喜はちゃんと見ていた。十分に戦闘の戦力となっているのに何が不満なんだろうか?
かなりエーリオの弓には助けられた。
「うん、僕が君の騎士になったから皇帝から魔術具を賜るんだ」
ふ~んと、光喜は相打ちをうつ。
「でもね、どれも凄い魔術具だから一つに絞れないんだよ」
エーリオは苦笑いよりも、情けないへらっとした笑顔を光喜に向けた。
魔術具は先祖の誇りでもある、精霊から結晶を託される人物は偉大な魔術師以外にはいない。お互いを尊重し、信頼しあった人間と精霊が二流なはずが無い。
偉大な魔術師の証が魔術具だ。
だから魔術具を手放したくないのだ、先祖代々引き継がれ家の者が守るので、めったに出回らない。あったとしても希少価値がとても高い魔術具を前に、選びたい放題なエーリオは幸せな悩みに頭を唸らせている。
「俺も新しい刀を新調しなければな」
面白くなさそうに、騎士の剣の柄をカラクが掴む。
十分に強そうな剣なんだけどさ、コイツは気に入らない。
「でも、カラクなら魔術具は無理だ」
エーリオは真面目な顔をしてキルッシュの上に乗っている光喜の隣に立つ、カラクを見る。
カラクが魔術具が扱えないのが、魔術具に込められた魔法を使うための魔力が全く無いという理由。
「そうだな、俺に馴染む刀がないならば魔法具の刀にでもするか」
カラクが魔力さえ操れれば、皇帝であるモラセスは何の問題もなくカラクに魔術具を差し出しただろう。実際、今カラクが腰にある剣だって名刀を揃えていたつもりだった。
当人のカラクは帝国で名を轟かせている刀匠だろうが、つまらなそうにしていた。
造った人が見たら泣くぞ?
光喜は体を前に倒して、全身でエーリオの精霊キルッシュを堪能しつつ心で呟く。
魔法具の武器は、ありえないくらい頑丈だったり威力を高めたり色々ある、魔法は使えないが違った方面で強力な武器になる。魔術具よりは安値なのは確かだけど、気楽に買える物じゃない。
光喜は目をつぶって、2人の会話に耳をすませていると。光喜が話題に飽きたのを察して2人は武器の話を2人だけで進めていく。
「君の武器はやっぱり大きいから、軽量に魔力を掛けた魔法具がいいかな?」
カラクはエーリオに首を振る。
「いや、どちらかというと刃こぼれが少ないか、頑丈に魔力を使って強化した魔法具がいい」
それもありだな、とエーリオが納得するが。指で顎を触れてから考える。
「う~ん、しかし直ぐには手に入らないね、今城にある魔法具は品切れなんだ。光喜の身を守るために信頼の置ける騎士たちに配布したから」
「ならば仕方が無い、単独でやっている魔具師を頼るしかないか」
魔具師?
光喜は2人の会話の内容は目をつぶりながらも、ちゃんと聞いていた。
話の連想からして、魔法具を作る職人さんかな?多分あっていると思う。
「ガレット帝国の中で名のある魔具師はやっぱり、ザーネ。彼女は外せない」
ん?彼女って事は…女の人?ちょっと萌えるね、女性の職人って。へへっマニアでサーセン。
「チッ、あの阿婆擦れの淫売か…」
カラクは嫌そうに舌打ち交じりに呟く。
つか、あば……。俺のハートがドキュンとする単語がカラクから出ませんでした?幻聴だった?
言葉は選ぼうな、カラク。阿婆擦れは一応「お転婆」って意味だけど、完全に淫売はNGキーワードだぞ?
「まあまあ、何者にも縛られない自由な女性って…表現したほうがいいよ」
俺は顔を伏せているので、カラクの顔は見れない。
ちょっと怖い顔しているのかもなアイツ、声が堅い。
しかし、あったことのない人を其処まで言えるっていうのはおかしい、きっと何処かでカラクが嫌がる女性との接点があったのか?
「今現在、ザーネは何処に住んでいるんだ?」
カラクが腕を組み、エーリオに聞いてみる。
魔具師ザーネはエーリオの言ったとおり、一つの場所に縛られずに放浪するクセがある。彼女の作る魔法具と魔術具は有名だから武器を扱うものには知っていた。
「ここから南に、二~三日もあれば着く海沿いの店を開いているって。大丈夫信頼のある情報屋からの情報だから」
テレビもネットもない世界では、情報屋から情報を買うのが一般的だ。勿論、情報屋も人気があって情報の正確さと信頼がなければやっていけない。
エーリオが贔屓にしている情報屋は、広い人脈と口の堅さを気に入り昔から欲しい情報を頼んでいる。
「で?いつ行く?」
光喜が突然顔を上げて、2人の会話に割り込む。カラクとエーリオは同時に光喜を見つめた。
そして、お前は馬鹿か?見たいな視線を特にカラクから遠慮なしに感じるのは被害妄想だろうか?
「お前は馬鹿か?連れて行かないに決まっているだろう」
あっ、被害妄想じゃなかった。
「やだ!退屈だ!!俺この一週間ずっとここにいるんだぞ!?いつまで軟禁されなきゃならないんだよ!!」
光喜はキルッシュから飛び降りて、2人に詰め寄る。カラクは面倒な視線を、エーリオは目をそらす。
前回の一件、たいした規模ではないと判断したヴァニーユの街の認識が大いに外れていた。
たった4人で危険な場所に向かわせてしまった教訓に、大幅な見直しと調査をただいまやっている最中。その間は光喜にとって暇な時間。
女神は原罪の霧を浄化できるからといって、「ほいっやれよ」と穢れし者の前に放り投げる扱いを受ける義理はない。
愛想が尽きれば、光喜はノア・レザンを去る選択もあるのを皇帝、いや帝国のお偉いさんたちは思っているのだから、必死だった。
モラセスは光喜の性格を把握しているので、酷い仕打ちを光喜にしなければ大丈夫と光喜の機嫌をとろうと右往左往している家臣を若干冷ややかに見ていた。
原罪の霧に関する情報を洗いなおしで大忙しな皇帝に反して、光喜はこの一週間とても暇すぎて死にそうになった。
離宮から一歩も外へは出してもらえない、俺が頼んでも危ないの一点張り。
離宮さえ出してもらえない光喜を、カラクたちが外へ出そうと思うか?……思うわけない。
「外は危ないよ?穢れし者よりも有る意味、人間が一番厄介にもなるんだ」
ほらキタ―――、いい子だからお留守番していてちょうだい攻撃。
完全に子供を宥めるモードになったエーリオに、光喜はムカッときた。
「退屈なんだよう。携帯ゲームのバッテリーは切れて出来ないし、こっちの世界には漫画ないし!」
だったら一度、地球に帰ろうとしたが、結局こっちの一時間は地球の一日。六時間後にまた光喜が来るとなると、たかが六時間後。
帰ったところで、現状はどうにもならない。
「退屈ならば、暇つぶしを見つけろ。お前が望むだけ与えられるのを知っているだろうが」
カラクは光喜を置いて行く気満々に、光喜に言い放つ。
「でも、こっちのゲームって難しい」
双子姉妹と暇つぶしに、この世界の囲碁というのか?そんな感じのゲームをやってみたけど。
俺がめちゃ弱い、敗北続けて何が楽しいんだ!!
双子姉妹は家の中で出来る定番の遊びがそれなので、小さい頃から何度もやっている。そりゃルール覚えたての光喜が適うはずもない。
さり気なく、双子姉妹が手加減をしようとしても、光喜が逆に怒るのでタチが悪い。
他の暇つぶしを求めてみたけど、貴族たちが同じ年頃の娘とかを連れてくるとか言い出しーの、献上品とかで沢山の貢物が届きーの。
それをすかさず、カラクとモラセスがディフェンスしーの。
献上品をモラセスとカラクが止めてくれなかったら、他国まで貢物が殺到して対応だけでも大変だという。
暇つぶしのために、各地からの美術品や書物を貴族たちがかき集めたんだとか。俺は特別に美術品を集めている訳じゃない、同じく俺の機嫌を取るだけに差し向けられたお嬢さんと楽しくお喋りするほど顔の皮は厚くないのでお断り申した。
カラクが言った通り、俺が望めばノア・レザンで手に入らない物は無いと思う、でも今の現状だったら貰うにもモラセスとニーダさん以外には裏を探ったりしなきゃならないって以前にエーリオから教えられたんでビビッている。
ほら、コレを受け取ったら何かでは断りにくいとかさ、かけ引きや策略とかそういう系は苦手。
だがしかし、ソレはソレ。コレはコレ。ただの観光するだけなら大丈夫だろ?
前にモラセスと一緒に城下街までいったけど、あんまり観光できなかった。今こそリベンジの時。
「だからさ、ちょっとは俺もどっかに行きたい」
「断る」
数秒の空白も入れず、否定をするカラクに光喜は唸った。
「ちゃんと言う事聞くって」
「聞いた試しがない」
「ムチャもしない」
「お前に信用があると思っているのか?」
光喜の必死なしがみつきも、カラクが端から叩き落としていく。
カラクの言い分がもっともだ、一度街にでてシナモン……闇の使徒に襲われかけていたのを今でもチネチネと、突っついてくる。
エーリオは2人を眺めて兄弟みたいに仲がいいなと、ほほえましく思った。
同じような言い合いをしていた光喜だったが、カラクを睨んで口を開く。
「こうなったら最終兵器だ!!」
カラクとエーリオは一瞬顔には出さなかったのだけど、「はあ?」みたいな心境になってしまう。
2人をおいて、光喜は走り出すと庭の真ん中に立った。
奇妙な光喜の行動に、訝しげに後姿を見つめ、注目の的な光喜は大きく息を吸う。
「この国つまんねぇーーー呪われろ!!」
腹から声を出す光喜、呆然とする後ろの2人。
再び息を吸って、何かを叫ぼうとした光喜の口をエーリオは血相を変えて押さえた。
首を捻ってエーリオの顔を窺うと、予想通りに顔が青い。
「何言ってんだ!君の影響力ってものを考えなさい!!」
おっ完全に保護者モードに突入したエーリオだ。
俺が使っている離宮、月見の宮の庭園付近の見張りをしている騎士たちが、俺の声に反応して覗きに遠くで集ってきた。
彼らは女神の異変がないのか、見に来た。ギャラリーの集りようにエーリオは更に焦る。
天地創造の女神が名指しで、ガレット帝国を呪われろー!何て言っているのが噂になれば大変だ。
女神の騎士としてガレット帝国代表であるエーリオは、首が飛ぶ騒ぎではない。本当に首を刎ねられる。
「本当に止めてくれ」
俺に頼み込むようにしてから、エーリオは口から手を放す。
「だったら連れて行け」
「だ~か~ら」
エーリオが「それは無理だって…」と続く言葉を遮るように。
「いいじゃないか、行って来い」
第三者の声が割り込む、光喜を初めカラクとエーリオが声の方向を向けば、ホスト皇帝モラセスが笑いながら立っていた。
「やっほーい!」
光喜は分かりやすく喜ぶ、エーリオは「陛下!」と抗議するが、モラセスは余裕の態度を崩さない。
「ここで腐っているより、開放的な海に行くのはいいものだぞ?たまには新鮮な海の幸も悪くないだろう?」
ガレットの都市は大陸の真ん中、ガレットは国土の半分は草原に囲まれている。
モラセスの言うように、新鮮な海の幸を堪能するには海の側に行かないと出来ない。
完全な追い風の光喜に、不満…いや不安が募るエーリオだったが、皇帝モラセスと目が合う一瞬だけ、彼がウィンクをしたので黙った。
一つため息をついて、エーリオは光喜に言う。
「しょうがないね、じゃぁ…マリさんとヨミさんにも伝えなきゃ、光喜も一緒に来てくれる?ぼくだけ「外に連れ出すのか!」って2人の批難を浴びたくない」
お兄さんの顔になっているエーリオに、光喜は頷き。はしゃいだ様子で建物の中に向かって歩き出した。
2人が建物に消えたのを確認すると、カラクがモラセスを見た。モラセスはお見通しみたない顔をしているカラクに小さく笑って言う。
「どうやら隠者が王宮に入り込んでいるらしい、暫く女神殿を王宮から出している間には埃掃除をしておく」
「どの程度分かっている?」
モラセスは肩をすくめて、苦笑いをした。
「さあな、報告を受けたのは今日の朝だ。なに女神殿には埃が降りかからないようにするさ」
王宮に隠者が紛れているという、報告があり。まだ細部のことは分かっていない。
光喜が城に戻るまでに、探し出し、捕まえて企みを白状させてから隠者を処分しなければ。
「ぬかるな」
一言だけ言い残すと、カラクも光喜のいる建物の中に向かって歩き始めた。
モラセスはカラクのいいように、どちらが王なんだか……と呟き。逆の方向へ歩き出した。
こんにちは、こんばんわ。
長毛種の猫でございます。
今日はついていない日です。仕事先で車は故障してそのお陰で、連休は無くなる…。
唯一の救いは早退したので早く帰れれ、セカンドライフを更新している事でしょうか?
アレ?涙が……。