第二十話 光の女神と闇の神
あらすじ 犯人はお前だ!以上
よそ様の家の窓際に立っていた光喜は、青年の姿を見つけると飛び降り青年の肩に飛び乗った。
不意打ちにしかも強制肩車をさせられたら屈強な戦士でもない青年は、顔から前へ倒れ両手を出して地面を支え、地面と顔面を強打するのを防ぐ。
「この野郎!イタズラしましたゴメンナサイじゃすまないぞ!人が怪我したらどうするつもりだったんだよ!!」
四肢を地面について、何とか転倒を免れようとしている青年の髪を引っ張って怒っている。
グイグイと引っ張る髪の痛みと、少女にどこからともなく青年も怒りゲージが溜まっていく。
光喜を肩車したまま、体に力をググググっと入れて立ち上がった。
「うお?!」
青年が突然立ち上がった反動で光喜も体が揺れて今度は光喜が後方へ倒れそう、いや青年から落ちそうになった、バランスを取るために青年の髪を掴む手加減なしに。
「やられっぱなしでは終わらない!」
「いきなり何すんだよ!危ないだろ?!」
「俺の首の骨を折ろうとしたお前に言われたくない!!」
「勢いは大切だと思わないか?」
「勢いで骨を折られたら堪らんわ!!」
これが街の中心部で魔法を放ち、ノア・レザンの至高神の像を破壊した青年と女神である光喜の会話であろうか…。
「離れろ!!」
「嫌だ!!」
青年が光喜を振り落とそうと暴れるが、光喜はがっちり掴み離れない。
じたばた暴れる青年と断固として離れない光喜が暫し攻防を繰り返すが、とうとう青年が肩で息をして両手を膝に乗せて苦しそうな呼吸をする。
「もういい、そこで一生暮らせ」
やけになる青年に光喜は。
「諦めるな、諦めたら終わりだ」
どっかのスポーツ漫画の名台詞をちょっとパクった。
「じゃあ、降りてくれ降参だ。俺を帝国兵士に突き出せばいいさ」
心底疲れた青年の声にひょいと身軽な動作で、光喜は青年の肩から降りた。
「そりゃ悪いことしたから叱られないと」
はんっと鼻で笑う青年に、冗談で光喜が。
「兵士に突き出したらいいことある?俺、賞状でももらえんの?」
軽い光喜の言葉に青年は眉を顰めた。
「ああ、褒められるさ。闇の使徒一人を排除できるのだかならな」
「え?排除?」
「死刑だよ、とぼけなくていい」
唖然とした顔で青年を見る、建造物破損でこの国は死刑になるのか…モラセスはどんな恐怖政治をしているのだ。
「逃げよう」
がっちり青年の肩を掴んで、迫力ある顔で迫った。
「死刑は駄目、アンタは悪いことしたけど殺されるほどじゃないだろ!?なんなら協力するから真っ当な人生を歩め」
「お、おいっ」
光喜は青年の手を握り引っ張り始めた、遠くへ逃げるぞと言うと手を握ったまま走り出す。
何かのスイッチが入った光喜は、サスペンスものヨロシク逃亡を企てる。
当然手を握られている青年も少女について走るしかない。
本当は観念したふりをして少し隙を見せた所で、懐にある短剣を使い脅すなり逃げるなりするつもりだった。
今日は妙なことばかり起こる、服はそうでもないが労働などしたことない様な少女が追いかけてきたと思ったら、その少女は並ではない魔力の持ち主らしい。
精霊の強さはイコール契約している魔術師の強さのバラメーターでもある。
その前に精霊は誰にでも契約できるものではない、一定のレベルと才能がないと全ての人間が魔力を持って生まれていても、そこから精霊が気に入る程度の魔力の質と量を磨かなければ相手にされない。
そして精霊は気に入った相手と契約をして魔力を貰いながら強くなるのだ、だから精霊だって厳しい目で契約者を見極める。
魔術師が強大な力を求め、最初から高等精霊の契約を望んでも自分の強さ以上の精霊とは契約できない、だからあれほど少女が遠距離でもわざと怪我をさせぬ様に加減をしながら青年を追い込んだ繊細な技術レベルが帝国魔術師の軍師に少女が匹敵しているという証明だった。
正直な話…自分の魔法レベルでは手をひく小さな少女には適わない。そこらへんにいる冒険者や雇われ魔術師にはできない芸当だ。
先ほどの地面や壁が高温になったのは、強引な少女のものだと確証はないが状況だとそう推測してもいいと思う。
精霊だって契約している相手が気に入らなければ召喚されて姿まで現してまで力を貸そうともしない、その上にあれほど遠距離で魔法を使うのは魔法具がない以上は精霊自身が手を貸したに違いない。
精霊は契約者を気に入って自分から魔法や補助をしてくれることがある、それは長い付き合いだったり魔力の純度が高く精霊を惚れこませたり方法は様々だが魅力がないと利害関係以上にはなれない。
この小さな少女にはそれだけ精霊を引き付ける物まで持っているのか…。
シナモンは心で呟いた。
へんな女だ、だが妙に気味が悪いとは感じられない。まるであの子のようだと。
少女をみつめていた青年が一瞬少女の後ろ姿に懐かしい姿を重ね合わせ苦しそうに眉を顰め。
青年の手を引いて裏路地からでた、明るい日の光がさんさんと先ほどの騒動が嘘のように街は活気に溢れている。
中央部の広間から随分離れた場所にでたのだろう、気軽に食べれる飲食店より衣服などを取り扱う雑貨が並ぶ通りにでた。
「いいか?俺がこっそりお偉いさんに会わせて話しをしてやるから、二度とあんな危ない真似するなよ?」
グイグイ手を引っ張る青年はため息を一つついて呟いた。
「アンタは豪商の娘か貴族の娘なのか?」
「俺は女じゃない!!」
「じゃあ女装癖のある男か?」
「違う!!!」
「どっちなんだ…」
どっちでもないのをこの青年に言えるはずもない、ムスッとした顔で光喜が振り返ると青年も光喜を見ていた。
青年は街に違和感ない格好をしている、マントとか(カラク)局部を隠せばいい(ニーダさん)とかを見すぎているので個性のない服な?なんてとっても失礼な感想を持ってしまう。
顔だってカラクやモラセスみたいに美丈夫とはいかず未成年らしく、しかし顔の構造よりも頬にある一線をひいた大きな傷が印象的だった、野生児的な雰囲気を持っている。
髪は灰色をしていて肌は少し日に焼けて黒い、瞳は茶色をしてやや釣り目。
「とにかくあんな真似は絶対するなよ!」
(とにかくあんな真似は絶対しないの!)
叱る光喜に青年は再びデジャブを見てしまい、俯いた。名も知らない少女の手を強く握る。
口が悪くて態度も悪い可愛いだけの少女がなんでアイツにそっくりなんだよ…。
似ているのは身長と大きな瞳だけだ、正直アイツのほうが目の前にいる少女よりも可愛さでは劣っているし、ロングヘアーで俺と同じくらい肌が焼けがあって容姿の印象まで違う。
青年の世界が歪む、いや、世界は歪んでいない。歪んでいるのは青年が涙で前が見えないだけだった。
「どうした…?」
様子がおかしい青年に光喜は窺う、青年は泣きながら笑い、カッコ悪くて光喜には涙を隠す。
「すまん、ちょっとな…俺はシナモン。お前は?」
「俺は光喜、よろしく」
***
「で?」
皇帝の公務室でカラクは自分の愛刀の剣先をモラセスの喉元スレスレまで寄せ、地を這う声で続きを急かす。
心なしか少し後ろへ首を反らせ、両手を挙げて降参のポーズをモラセスはとった。
「だから俺が悪かった、ちょっと第三者としての俺の国を見て貰いたかっただけなんだ」
そして少しでもわが国ガレット帝国に愛着でも持ってくれれば御の字で、他の帝国へ渡っても便宜が図りやすく出来たら良いな~程度の下心はあったが。
「言い訳になるとでも」
ブラックモード突入カラク&双子姉妹。
双子姉妹の後ろでは彼女らの精霊がバッチ!スタンバイオッケーwの状態だ。
彼らから、もしかしたら原罪の霧が噴出すのでは?と思わせるほど黒い雰囲気だ。
我らが宰補ニーダなら少しは自分の宜しくない立場を弁護してくれる?なんて淡い期待をしてみたが、彼女の顔を見た一瞬で自分は干物決定な運命を悟った。凄い顔で睨んでいらっしゃる。
「悪かったて、兵士と騎士には女神を探すように指示は出した」
「「当然ですわ、破廉恥皇帝!疫病神!」」
マリとヨミのダブル攻撃。
「皇帝陛下の軽率な行動にはほとほと呆れ申した、無事女神さまが帰還なされたら公務室一週間監禁で許して差し上げます」
ニーダも容赦ない攻撃。無事じゃなかったらどうなるのでしょう?
「光喜に何かあれば殺す」
ストレートにデット予告をしたカラク、片目だけの瞳は本気を伝えている。
怪我の一つでもしてきたら王宮の塔から逆さに吊り下げられるかもしれない。
はーっとため息をつく、モラセス。しかし実際にはかなりマズイ状況だ、それは言われずも分かっていた。
追いかけた青年がよりにもよって…光喜が女神だと知れたら飛んで火にいる夏の虫になるだろう。
無事青年から逃げおおせても他国の隠者が光喜を拉致するかもしれない。
その二つなら俺が皇帝としてなんとか出来るが、問題なのは光喜が魔法をぶっ放したり精霊王グリエが暴れないかとい心配だった。
やっと街の大掛かりな整備が終わったんだぞ?壊してくれるなよ女神殿。
は~ぁ、どっちかと言うと光喜の方が問題だったりする。
「状況は分かった、女神像を破壊した者はどんな相手だった?」
刀を降ろしたカラクがイラついている様子も隠さず、モラセスに問う。
「姿ははっきりと見ていないが雷の攻撃だったな、間違いなく相手は風の精霊を持っているはずだ」
「それ以外は?」
「何も」
カラクはモラセスを睨む。
「役立たずめ…」
「お前は昔から容赦がないな」
2人が溢した言葉にニーダは眉を顰める。
「御二人方は旧友でいらっしゃるのじゃろうか?」
カラクとモラセスへ問うと。
「まあな」
小さくモラセスは笑う、そして長い付き合いのあるニーダはこの事について彼が話す気はないという意図を感じ取り、それ以上の追及はしなかった。
「相手が魔術師であるならば戸籍に精霊をもった登録があるかもしれません、精霊の属性と年で絞れば何とかなりませんか?」
ヨミの提案にふむ、とモラセスは顎を指でさわり少し考える。
「その気になれば登録はしないで精霊は取得できるが…女神殿を闇雲に探すよりはましか」
精霊と魔術師が出会う場所は魔力の集まる磁場であることが多い。偶然に出会うよりも精霊が集まりやすい場所に契約をしに行った方がずっと楽だ、その場所は帝国が管理をしていて入るには登録が必要であり無事に契約すると戸籍に精霊の属性と名前を登録できる。
これは帝国が魔術師を管理するためにと、ついでに取得登録をしていると魔術師側も色々就職に有利になった。
つまり地球で言うところの資格みたいな感覚だ。登録があれば魔力を扱う職場につけるという得点もあり、ただいまモラセスが治めているガレット帝国では、精霊獲得までの援助金や精霊の属性から性格までも情報を提供している。
現在のガレット帝国軍は魔術師部隊を強化中、来たれ未来の魔術師!のポスターを貼るほど。
他の部隊よりも金と手間がかかるので先帝は敬遠していたが、モラセスは魔法の便利さを知っているので多少の投資など気にはしない。
そこまで優遇され精霊を欲しがる者ならば、まずは登録をするだろう。
「さて、迷子の女神殿は何処へいらっしゃるのやら」
小さくモラセスは呟く、カラクに「元凶が何を言うか」とお怒りのお言葉をいただいた。
***
「美味い!バターが甘いのに少し果物が酸味きいていて美味しい」
光喜は小麦粉をやわらかく溶き、鉄板でクレープみたいに伸ばしてフルーツと甘いバター液を包み巻いたお菓子を両手で持って、ハムスターよろしくモグモグ食べる。もちろんシナモンの奢り。
人ごみを避けて少し休憩、もし逃げたら大声で犯罪者がいますー!と青年を脅したついでに奢らせた。
イスがないので人影の少ない階段でお菓子を満喫中。
「お前は食わないの?」
光喜がお菓子をシナモンに差し出すが、シナモンは首を振った。
「甘いのは苦手だ、喉に残る気がする」
ふーん、と呟きながら光喜はまたお菓子にかぶりつく、バターは液状になっているから気をつけないと垂れる。
「でもさ、なんであんな物騒な事したんだ?シナモンは」
生地から溢れてきたフルーツを狙って食べている光喜は、先ほどから疑問に思っていた事を聞いてみた。
「言っただろ?俺は闇の使徒だって」
「悪いけどさ、俺は自慢したいほど全然まったく常識なんて知らない。闇の使徒だなんて初耳だ」
シナモンはwhy?と言いそうな顔。まさか此処で光喜も馬鹿正直に異世界からやってきたと言ってのける勇気はない。
俺が逆の立場なら絶対信じない。
「アー…うん、俺は事故にあって昔の記憶がないんだ」
苦しい…!もっと信憑性のある言い訳はできなかったのか?俺って本当に馬鹿。
「もしかして救済の霧に触れたのか?」
「へ?救済?」
原罪の霧の間違いじゃないのか?前に俺にとって霧は煙みたいだとグリエの爺ちゃんが言ったが他の人には霧に触るのも危ない訳?
「…ああ、救済だ、救済の霧に触れると様々な体に障害がでると言われている。偽りの神を信仰しているお前たちには「原罪の霧」って言っているが、俺たちは違う。世界を救うために霧があるんだ」
シナモンは力強い眼差しで俺を見る。
「ノア・レザンには光の神である女神と闇の神がいるんだ。俺は光の女神ではなく闇の神を信仰している。救済の霧に選ばれた者は破壊の限りをして一度世界を破壊するんだ」
光喜は眉をピクッと動かした、少なくとも精霊王グリエの爺ちゃんと出会った時に浄化した封玉の中に一緒に封じられた赤子は全く、そんなの望んでいなかった。
望んでいたのは300百年の間ただ両親だけ。
自らの手で殺してしまった両親を…ずっと会いたがっていた。
それをシナモンに伝えられるはずもなく、黙って話しを聞く。
どうやら女神が大変お嫌いらしい。俺としては皆がつくり上げた女神に興味は無く、他人事のように話を聞いていた。だから別にどんな批判をされようが何とも思わないが双子姉妹には絶対会わせられないな、きっと八つ裂きにされる。
「そして破壊の後、人間の罪が許され世界には皇帝も賢者も貴族もない平等な世界が創られ人々は幸せになれる、女神が創った世界は不完全で不平等に溢れている、その不完全な部分を再構築するんだよ…俺の話し分かるかな?」
熱心に自分の信仰する神に対して自分の都合のいい部分を強調して喋るのは誰にでもある。彼らからしたら女神は幸せにしてくれる神ではないらしい。
だから中心部に建っていた女神像を破壊したのか、女神をみていて思うところがあったと思う。
褒められる行動ではないのは確かだが。
シナモンは熱く語った後はっと我に返り周囲を見渡した。周りには丁度人はいなく誰にも聞かれずにすんだのをホッとした。
「そこまで警戒しなくてもいいんじゃないか?」
最後の一切れを口に放り込んだ光喜はシナモンに、女神像を破壊した中央部ではない此処はそこで周囲の視線を気にしなくてもいい気がした。
「馬鹿言うな闇の使徒は存在するだけで死刑だよ」
「お前こそ馬鹿言うな!!」
突然どなった光喜にシナモンはビクッと体を震わせ、不意打ちを食らって心底驚いた。
「なんで宗教が違うだけで死刑なんだ!どんな神様信仰しても本人の自由だろ!命軽すぎじゃないか!!」
自分のことの様に憤慨した光喜に、呆然と一瞬したがシナモンは泣きそうな顔で笑い。
光喜はガキだ、薄々感じていたが確信した。それゆえに穢れが無くて眩しい。
本当はどうにもならないって分かっているのに、何故か少しだけ気持ちが軽くなった。
「ありがとう、それだけで俺は十分だ」
と笑った。
全知全能の慈愛の女神、光の女神、素晴らしい絶対神は女神だけ。
その中で闇の使徒は邪教徒だった。見つかれば命を狙われ、霧の被害者からはお前たちが霧を呼んだと罵倒され、差別されつづけた。
無理に認められようとはしない、だけど俺たちの神を馬鹿にされるのだけは許せない。
女神とは違って姿を模った石像もないが、王侯貴族の権力に対する象徴に利用される女神よりずっと清いではないか。
自分の親族ですら帝国兵士に通報して殺そうとしたくらいだ。
女神に対する信仰心はとてつもなく深く広いのが世間、俺たちは異端。
周囲の人間が聞いているかもしれない場所で堂々と言ってくれた彼女がとても眩しかった。
自分みたいにコソコソ女神像を破壊するような隠れた真似をせず言える、この少女が。
この強さが死んだ妹、アナナに似ているのだと。
随分昔に置いてきた懐かしさと愛しさを感じた。
***
ヒポグリフに跨り上空から城下街を見下ろし光喜を探すカラクだが、ガレット国首都は人が多すぎる。光喜に該当しない人の多さに辟易していた。
「……何処にいる?光喜」
女神像を破壊した者を探すために、暢気に精霊の登録書と睨めっこする気は起きない。
こんなに離れたのはノア・レザンでは始めてだ、しかも一緒にいる相手は闇の使徒。何が起きようが光喜と一緒にいていい人間じゃない。
カラクは一つため息をついて、極力…できるなら人生において二度と使いたくない…が。
「コレを使うしかないか」
すでに疲れた声で、眼帯をしている片目に手を伸ばした。
光喜に何か起きるくらいならまだマシと自分に言い聞かせ。
***
「うわ!!」
光喜はシナモンと会話をしている最中に胸が掻き毟られるほどの衝動を感じた。
痛みや嫌な気分でない、ドキドキして切なくて胸がキュンキュンするのにソワソワしてしまう。この衝動は…。
原罪の霧を前にしたときに感じる高揚感。
なんで?周囲を見渡すため顔を上げるが、次の瞬間すっかり収まった。
「どうした?大丈夫か」
心配そうに光喜を覗き込んできたシナモンに、笑いかけて大丈夫だと言うが。先ほどの衝動が本当に原罪の霧だったら大変だと。
光喜は立ち上がる、早くモラセスかニーダさんに知らせないと街中で暴れたら、どれだけの被害と損害がでるか検討もつかない。
「おい」
シナモンが様子のおかしい光喜の肩をつかもうとして、光喜の帽子に指が当たった。
タイミング悪く風が吹き少しの力で帽子は動き、帽子が落ちる。
あらわになる純白の髪。
世界にただ一人、女神だけが持つ純白の髪にシナモンは言葉を失った。
光喜も慌てて帽子を被りなおすが、もう遅い。
シナモンの顔は見る見る険しくなる、睨むとはちょっと違って悔しいって言っているよう。
「騙していたのかよ…」
シナモンから発せられた言葉に光喜の胸は締め付けられた。ギュッと唇を噛む。
騙したつもりもない、でもシナモンからしたら「つもり」って何だ?実際には自分が女神であると知った上で知らぬふりをしていたのだ。
「さぞかし、愉快だったろうな?俺の姿は滑稽で楽しかったか…?どうりで半端ない精霊を使役できるはずだ…」
光喜の隣に座っていたシナモンはゆらりと立ち上がり、懐から短剣を取り出すと光喜の服を掴み乱暴に壁に光喜を押し付けて、短剣を光喜の細い首に押し当てた。
「馬鹿にしやがって!!!」
罵倒よりシナモンの悲鳴に光喜は聞こえた。
少し時間が取れるようになりまして今回はちょっと長いですかな?早くドタバタにしたいので色々すっ飛ばしました。
そしてお気に入りにいれてくれました方々に感謝の気持ちで一杯です。
自分のお気に入りの数をみて二度見しました(笑)
これは本当に私の小説のお気に入りなのかと。
あと訂正とお詫び、モラセスの国の名前はガレットでした。間違えて違う名前で書いてしまいました。