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第十八話 火の取り扱いには十分注意しましょう

あらすじ 魔法を教えてもらってたらニーダさんがアーーー!以上

 



 とりあえず暴走したニーダさんは、モラセスに取り押さえられた。

 

 ちょっとフラフラしながらもモラセスが腕を掴むと大人しくしている。


 ちなみに先ほどの小さな地震はモラセスの魔法だって、本気になればもっと大きな揺れも起こせるらしい。あとは地層を調べたり、地割れなんかも出来るって。


 すごいね、モラセスの精霊が中級なら俺の精霊は火山噴火も可能じゃねえ?


 それはそうとして、マリとヨミが心配そうに俺に駆けつけた。


 「「光喜様、ご無事でしょうか?」」


 俺はニーダさんに乱された服を整え、疲れた笑顔で答え。


 「大丈夫、それよりニーダさんも大丈夫?」

 「「まあ、光喜様はなんて寛大なお方」」 


 マリとヨミは感激した様子で眼を輝かせた。


 絶対この双子姉妹は俺のこと「女神すごいぜフィルター」が掛かっていると思う。何をしても感心するし意味深にとる風潮があるのだろうな。


 「ニーダは大丈夫だ、ちょっと女神殿の魔力を注がれてオーバーヒートした結果の錯乱だからな」


 ニーダの腕を掴んでいるモラセスにニーダはもう大丈夫です。と言うとモラセスはニーダを離す。  


 「見苦しい真似をしてしもうた…申し上げる言葉もありません…女神さまどうかご慈悲を」


 ニーダさんが俺に膝をついて頭を下げる。俺は慌てて両手を振って答えた。


 「いいって!いいって!もう気にしてないから立ってよ。なんでああなったのか教えてくれ、それでいいから」


 ニーダは言いにくそうに、口を開く。


 彼女にとっては失態も失態、大失態だ、それも神である女神に欲情したのだ。


 これ以上の恥の上塗りはしたくなく仕方のない出来事だったとはいえ口にしたくはない話、だが彼女には拒否権はない。


 「はい、最初は女神さまに魔力を感じて頂こうと私の魔力を貴方様に注ぎました。しかし次第に魔力が逆に私に注がれて私には到底うけ止められない量の魔力ゆえに…」


 ふう、とニーダがため息をついた。まだ体が火照っている様子だ。頬が高揚していてとてもエロス。


 彼女も無論、最大限の抵抗はしたが津波の量で注がれる魔力の前にはニーダの抵抗など砂上の壁にすぎなかった。


 「私が理性を保ったままでは気がふれるほどの魔力に、自己防衛にて…先ほどの様です」


 つまり自分の理性が保てなくなって酒に悪酔いした状態になってしまうそうだ。


 実際、魔力を注ぎ悪酔いの状態になるのは珍しくない、ただ其れは注がれている一瞬の出来事の軽くテンションが高くなる程度。


 女神の光喜ほどの魔力は水にたとえると清水のように純度が高く、ナイル川級の量なので注ぎこまれた方は堪ったものではない。


 「ニーダを許してやってくれ、女神殿の魔力は量も質も桁外れに高い。それをまともに受けて正気ではいられないだろうな、流石の俺もニーダの二の舞になる。大丈夫なのはこの男ぐらいだ」


 モラセスは楽しそうにカラクを指差した。 


 カラクは前に魔力がまったくないとグリエの爺ちゃんが言ってたっけ。だから魔力を注いでもザルみたいに流れてしまうのだって。


 それよりも今後の課題に俺は不用意に魔力を他人に注がないってことだろう、思い返してみたらさっき魔力の流れを見るのが楽しくてついついニーダさんの体にぐいぐい魔力を押し込める感覚があったのは何となく分かった。


 原因は思いっきり俺じゃん…。


 「しかしながら、女神さまの魔力を吸収して私と私の精霊が数段に格があがりました」


 驚いたように自分の両手を見た。ニーダの体の中にある魔力がいつもの自分ではありえない力を感じた。何年もかけて高めた魔力が一瞬にして数倍になってしまっている。


 「俺の魔力を他人に注げば、精霊だけではなく人間にもレベルアップになるってこと?」


 まだ現実が信じられない様子で「その様です」とだけニーダは返答した。


 「こりゃ便利だ。流石に女神殿の魔力になれば「酔う」だけではなく、精霊のように注ぎ込むのも可能か…どうだ?俺の魔術師部隊を一気に注ぎ込んで強くしてくれんか?」


 俺は一瞬考えてみた、でも魔術師が何たるかはよく理解できないけど。一応兵士なんだろ?だったらむっさいオッサンばっかりでニーダさんみたいに「悪酔い」した何十人の姿を想像してみろ。


 まさに地獄絵図。


 むさ苦しいオッサンの群れが大量に発情したら、らめぇぇぇじゃ済まされんぞ。 


 考えてブルってしまった。


 「却下、だめ、絶対」


 恐ろしさの余り単語しか口から出ない光喜を見て、満足そうな顔でモラセスは「そうか」と返事をした。


 「光喜」


 カラクが俺に向かって筒を投げ渡し、俺はキャッチした。


 ん?どっかで見たなこれ……あっ!


 カラクの腰にぶら下がっている筒だ。


 「散々言われた通り、俺には魔力が無い。魔法を使う代わりにその魔法具に魔法を詰めて携帯している」


 原罪の霧に憑かれた鶏の足止めに使ったアレね。通りで凄い氷が収納されていた訳だ。


 「一度開けたらもう中は空だからな、それにお前の魔法を詰めてみてくれ」

 「うん、了解。戦力になるか分からないけどやってみる」

 

 マリとヨミは優秀な魔術師とはいえ水属性と風属性だと、せっかく魔法を閉じ込められるのに結構使いどころが偏る。


 彼女らは要所要所で魔法の変化させて応用ができるが、カラクはその時に閉じ込めた魔法しか出せないので中々困る。


 氷ではなくて水を出したくても、中身が氷なら氷以外はだせない。できるだけ威力のある様々な魔法の種類は有事を考えて多くあったほうがいいと考えていた。


 だがマリは簡単に精霊を使えば望みの魔法は自分で出せる、逆にカラクのメリットは魔力を精霊に渡し魔法を発動させるまでの時間だ、筒のほうが断然に蓋が開くだけなのでその分速い。


 説明は以上にして、カラクが両手に持って魔法を出すだけで勝手に筒に吸収されるそうだ。


 ニーダさん直伝の魔法を筒に吸わせてみよう。ニーダさんを酔わせて自分の魔法がどれぐらいが限界までの力が使えるのかは、まだ検証していなかった。


 戦闘ではまだ使わないらしいから薪に火ををつける程度でいいと、魔法の新人の俺のためにレベルは落としてくれた。俺が今できる限りの魔法を使ってみよう。


 「よーし」


 意気込み覚えたてホヤホヤの魔法を筒に詰め込んだ。




  バァァァァァァァンンン!!!!!




 乾いた音が光喜から発した。まるで大量のガスに火がついた状態だった。光喜の周囲にいた四人も慌てて距離をとるしかない、暢気にたっていたら光喜からでる凄まじい熱量とおびただしい炎が皆を燃やし尽くしそうな迫力で、近づくと無事ではすまされない。


 一番驚くのは光喜、どんどん魔法を筒に注がれていく。


 光喜の魔力を通して魔法を提供していた炎霊グリエが怒鳴る。


 ≪イカン!そろそろ筒か限界じゃわい!!筒が壊れ、外に魔法が漏れれば大爆発じゃわい!お主ら皆焼け死ぬぞ!!≫

 「どうやって止めたらいい!!爺ちゃん」


 やってみたのはいいが、これだけの炎が出せるとは思わなくて自分でも怖くなった。一度だした勢いは自転車の全力ダッシュした時と同じで一瞬で止まれない。


 しかも自転車のブレーキがぶっ壊れてたってオチつきで。 


 ≪ええい!初心者の分際で高等魔法を使うからじゃわい!!そこの守護者、炎からはワシが守ってやるわい!!さっさと魔法具を奪え!!≫


 光栄なるグリエのご指名にカラクは炎に包まれる光喜へ走り、躊躇いなく手を伸ばし炎の中の光喜から筒をもぎ取った。


 筒が手から離れたら光喜の出していた炎は瞬く間に消えた。


 「とってもサンキュウ、カラク」

 「お前は暫く一人で魔法を使うな」


 マジ顔のカラクに言われ素直に頷いた。コントロールがきかない。


 例えるなら壊れた蛇口、自分の必要な量をだそうと蛇口をひねったら勢いよく水が出てしまった感覚、火の玉程度なら大丈夫なんだが勢いがありすぎて先ほどのように大量に魔力を注ぎこんでしまう。


 俺の暴れ馬並に、言う事を聞かない魔力では力の微調節が難しいと実戦前でよかった。これが実戦だったらみんなもろとも燃やしちゃうんじゃない?


 ショッキングな出来事だったが、自分のノーコンさに気付けたのはよかった。


 「はあああ、びっくりした」


 気のぬけた顔で光喜は呟いた。


 モラセスが舞い上がり体についた埃を払いながら。


 「驚いたのはこっちだ全くっと…おい!女神殿ッ」


 軽い文句を言おうとすると光喜の体は崩れ、倒れそうになる瞬間にカラクに抱きとめられた。 


 「光喜、しっかりしろ」


 カラクが覗き込むと光喜は力が入らない顔でヘラっと笑い。「大丈夫」と答えた。


 ≪心配は無用じゃ。ただ急激に魔力を使ったからのう、新しい体にはちと追いつけないだけじゃわい≫


 グリエの言葉に一同がホッとする。特に双子姉妹は顔が真っ青になっていた。


 「眠い、寝る、運べ」


 炎が収まり安心した光喜に睡魔が優しく耳元で寝ろと囁く。それに屈服した光喜は単語を喋るのが今は精一杯だった。


 力が抜けた光喜を抱き上げたカラクは光喜の部屋に運ぼうとするとニーダが。


 「女神さま、魔力に浮されていたといえど私の心には嘘偽りはございません、どうかそれだけは覚えていてくださいまし」


 切なげな声、重い瞼の向こうには普段には見せない心もとない美しい人。


 俺にどんな想いを持っていても、例え応えられなくてもニーダさんを否定する権利はない。だから眠気と戦って頷いた。


 しかし、反応したのは双子姉妹の方。


 「「ニーダ宰補様!!お戯れはお止し下さい!!」」


 本日、第二グランドの鐘が鳴りました。


 「戯れではないぞ、もう伝えたからには遠慮はしませぬ。女神さまには覚悟していただきたいものじゃ」


 キーッと威嚇する双子姉妹、やんのか?小娘どもなんて言いたげな顔のニーダ。


 マングースVSハブにも見えなくも無い。あえてどちらがハブかマングースかはコメントを控えよう。


 別の意味で騒がしくなった室内訓練場に、カラクは露わになっている片目だけでチラリと双子姉妹とニーダを見る、今度は無言でモラセスに視線を向けて自分はさっさと出口へ歩き出した。


 (はいはい、俺が止めろって言いたいんだろ)


 ため息をつき双子姉妹とニーダが適度な所で仲裁に入るしかない、面倒な役目をカラクに押し付けられ、頭をボリボリとかいた。


 (要領のいいところは昔から変わらんな?デオロライド…)


 モラセスがはなった心の呟きは誰も知れずにカラクの背中へ向けられた。


***


 光喜はうっすらと瞳を開く、前にもあった感覚だ。でも前よりもずっと不思議に鮮明に世界が視える。


 ここは森だった、しかも鬱そうとしている深い森。そして空には満月が二つ浮いていた。


 夜であることで、ますます森が薄気味悪くさせ。最初は森を見下ろす感じで見ていたが、気がつくと森の中に立つ。


 ああ、俺はまた夢を見ている。


 これは俺の脳が見せている夢の世界だ。


 たわいも無いことを考えていると突然、枝影から一人の青年が光喜に向かって全力で走る。一般人ではない鎧を装備しているだがカラクほど逞しくなく、それでいてひ弱でない兵士としては細いが実践的な筋肉をつけた青年が暗さに顔まで窺えないのだけれど、雰囲気で血相を変えているのだけは分かった。


 「危ない!」


 俺は理由も分からないがとっさに叫んでしまった。


 青年はそれに応えるように倒れる。


 背中には一本の太い弓の矢がささり、青年の服を赤く染めていく。


 ああ、このままでは死んでしまう。


 夢であろうが目の前で人が傷ついたら助ける、これ俺の信条。それ以前に夢であるなんてすっかり忘れていた。


 俺は女神だろ?だったら何とかしろ!!


 光喜は駆け寄ろうと足を動かした瞬間。


 

 

 「ご機嫌麗しく、女神殿。ん?冷や汗かいているのか?」


 眼を覚ますと、でっかい天蓋と天蓋についているカーテンとモラセスの顔が眼に飛び込んだ。


 「ああ、夢みていた……なんでアンタがここにいるの?」

 

 上半身を起こし、落ち着いてみると色々疑問がわいた。この城の主であるモラセスが何で居る?


 「朝一番の食事を城下町で食おうと思ってな。ホラこれに着替えろ」


 よくモラセス見ると彼は普通の皇帝は着ない、王族にしてはリーズナブルなお値段そうな服とターバンを頭に巻いて光喜のベットに座っていた。そして差し出してきたのは服だった。


 女性物のこれまたそんなに高価ではなく、ごく一般の城下町に売ってある服だった。光喜の趣味をわかっているのか、さり気に男っぽいタイプでちゃんとズボンもついある。


 着替えるのはいい、城下町にも興味はある。


 でも。


 「ニーダさんにちゃんと許可はでたの?」

 「あるわけないだろ、ニーダにお前が城下町へ行きたいと漏らしてみろ、確実に盛大なパレードだぞ?」


 うわー嫌だ。恥ずかしい上に街が満喫できない。


 そしてもう一つ疑問なんだが、お前の仕事は?


 「俺には優秀な宰補が居て、ねえ?」


 だから、虫けら以下の…いや彼女の本音は知らない方がきっと彼のためだ。

もっと更新したいのですがうまく行かないですね、無理せず小説を書きたいのですみません。暫くこのペースになりそうです。

そしてたくさんのアクセスとお気に入り登録、本当にありがとうございます。

まさかこんなにも読んでくれているなんて思いもよりませんでした。

感謝感激にカラクの代わりに光喜の胸を揉ませて差し上げたいくらいです。(笑)

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