第十三話 あっ俺、帰るんだった
あらすじ 霧を神剣で浄化したぞ!爺ちゃんのオマケ付きだ、以上!
「その手ほどきは私がいたしましょうぞ、ランシッド」
精霊王グリエのアドバイスにニーダが妖艶な笑みで前に出てきた。ニーダが優雅に指を鳴らすとモラセスと同様魔方陣が現われ、彼女の横に大きなトカゲが出てきた。さながらコモドドラゴンを真っ赤にしてついでに体が熱を発している、お前の背中で焼肉をしてくれようとか思わせる熱量をだしていた。とてもエコに貢献できそうなトカゲだった。
トカゲは大きいこともあってとっても貫禄があります、めっさ迫力満点。追っかけてきたら夢に出そう、本人も精霊に自慢なのか自信がある様子。
<低級…じゃわい>
グリエが余計な一言、ニーダはそれに眉をピクリと動かす。
そりゃ精霊王からしたらニーダの精霊も格下だろう、実際にはモラセスよりも精霊としては上だった。
小さく咳払いをして気を取り直しニーダは続けた。
「幸い、私の属性は「火」、それ故女神の巫女殿たちより密接な手ほどきが出来ましょう?」
うん、ありがとう。でもこの隙に闇に葬るとかやめてね、愛する男を奪うドロボウ猫とかじゃないから?
ニーダを見ると笑みを深くした、でも俺には先入観から背筋をゾッとさせる。
イジメかっこ悪いよ、モラセスには何の興味がないと言ったら通じるのを祈るしかない。
何を言うかとニーダの進言に噛み付く双子姉妹。
「「ニーダ宰補様は政務で忙しい身の方、私たちが光喜様の修行につきます」」(んな美味しいの誰が譲るかババア)
「あら?巫女殿たちの属性は「水」と「風」ではないですか?女神様の精霊は精霊王であられる、繊細な力加減が必要であろう?それには同じ属性がよろしかろぅ」(引っ込め、小娘ども格が違うのじゃ)
光喜とモラセスとカラクには何故か副音声が聞こえた気がした。
ニーダVS双子姉妹…、穏便な顔をしつつどっちが光喜に指導する権利を争いは続いている。
笑顔だけどニーダと双子姉妹の背後からドッドッドッドッやらゴッゴッゴッゴッなんて擬音が聞こえてきそうな雰囲気。
カラクは我関せずを貫く姿勢。ぶっちゃけ面倒そう、お前は乳以外にもやる気を出そう円満な人間関係とかに!モラセスも期待できない笑っている。
俺が間にはいるしかないのね…。
「ああ…魔法やら魔力はニーダさんから教わるよ、ありがとうマリとヨミ」
相手の顔色を窺いながら決着をつけるために光喜が言う、それを聞いてニーダは勝ち誇り双子姉妹は涙目で唇を噛む。
うわー双子姉妹なんかメッチャ男心を刺激するキュンとさせる表情、勝気な彼女らのギャップでしょうか?(誰に聞いている?)
キュンキュンする顔を眺めていたいけど流石に引き金が俺なんでちょっと罪悪感もある。
「えーと、そうだ。マリとヨミも精霊と契約しているんだよね?見せて」
と強請ればマリとヨミは光喜に求められる嬉しさか、笑顔が戻る。
「「はい光喜様、お望みとあらばどんなことでも致します」」
双子姉妹が同時に魔方陣を呼び出した。
マリのほうはテニスボールほどのシャボン玉をいくつも重ね合わせた中央にリスかハムスターのような小動物の瞳が浮かぶ謎の物体。
ヨミはモス●だった。いや巨大な蛾であったバレーボールほどの大きさ、正面からみたらモ●ラのようだが体は緑色で触覚が鋭い、真上から見たらステルス戦闘機のような三角の羽を空中で停止しているので肉眼では確認できないほどの早さで動かす。
「私の属性は水です、そして水の精霊セックです光喜様」
「私の属性は風です、そして風の精霊ソルベです光喜様」
マリの精霊セックは名前を呼ばれると数回瞬きをして挨拶をしているつもりだろうか、加えてヨミの精霊ソルベはビタッとヨミの背にとまり背からはみ出る触覚をピクピク動かす、こっちは表情わからん。
「マリとヨミの精霊は小さいな?力が弱いとか関係しているの?」
マリとヨミは光喜の言葉に「あーそうくるか…」みたいな顔をした。ノア・レザンでは常識で、自然に理解するあえてわざわざ教える必要の無い事も光喜には未知の世界だ。
「余り関係ありません。よほどの上位、精霊王やそれに連なるほどの精霊でなければ姿形の変化はありません。弱いように見えて侮れない魔力を精霊は秘めています」
ふーんと相打ちを光喜がしていると、光喜の後ろからモラセスが抱きつき顎を頭に乗せる。180センチあるカラクとほぼ同等の大柄に乗っかられると重い。
「男に抱きつかれる趣味は無い!光の速さで退け」
「まあまあ、暴れなさんな。魔力の勉強も霧のことも追々勉強すれば良いさ、それよりホレ。家に帰るんだろ?」
光喜を抱きしめたまま体を違う方向へ動かす。強制的に変えられた視界にグリエの爺ちゃんがいたカップの奥に白い扉が見える。
「異世界に繋がっている扉?ってか…」
「いかにも、王家が代々女神の精霊と封玉と扉を守ってきたんだぜ?感謝しろよ」
それ以前に召喚さえされなければ光喜にとって万々歳です。
「巫女」
モラセスが顎で扉を指すと双子姉妹が頷き精霊の姿が消え、2人は扉の前まで歩いていく。残された3人と二匹はだまって姉妹の行動を見続けた。
マリとヨミが手をかざすと扉はゆっくりと開く、扉の向こうは色彩豊かなよく分からん空間が広がっている。
う~ん本当に大丈夫ですか?くぐったら地球とかじゃなくて謎の惑星とか冗談じゃないッスよ?
「「さあ、繋がりました。どうぞ光喜様」」
どうぞとか言われても、怖いな…。帰れるのはいいけど何か忘れてるような…。
そ・う・だ・っ・た!!
「俺の姿はあっちの世界でどうなる!!?」
俺は男だ、女神は女だ!いや、ちょっと待って。ええっと、この世界の女神としての姿は女の姿でこのまま帰っても謎の不審者が俺の家にいるだけじゃんかYOーーー!!先に俺を元の姿に戻せ!!
焦る俺をモラセスは猫のように抱き上げるとズンズン扉前まで歩き。
「しらん」
ぽいっ。
投げやがった俺を扉の謎空間に。
「化けて出てやる!!!」
数秒後見慣れたベットの上にホスト皇帝に投げられた勢いのままダイブした。
「うっぷ!」
顔から。
手をベットにつき顔を上げる、暫く回りを見渡すと間違いなく俺の部屋の中だった。
ノア・レザンにいたのはたったの一日と半分。
それなのに長い間あちらの世界に居た気分にさせられる、一日で沢山出来事がありすぎだからね。
俺は目をつぶってそ~と下に手を胸部に向ける。
ああ…ぷる~んとしてカラクが大好きな乳が付いている俺に…。
白いドレスも日本では銃刀法違反、光速でお縄になれる神剣も持っている。だから期待はしてなかった都合よく地球では男の姿に戻ってはいない。
どうしよう…これから。
お先真っ暗な予感にグスンと涙ぐんでしまった。だって俺が俺であるからして生活していけるんだよ?家族に「はーい俺、光喜!姿も性別も変わったちゃった」で受け入れてくれるか?
ぜってぇ無理だ。
落ち込む光喜に光喜の部屋のふすまがガラッと開く。
「食事の時間だ早く着替えて来い」
「うん、わかっ……何でお前がおるんじゃカラク!!」
ふすまの向こうは乳に情熱をかける変態剣士カラクだった。
ヨミの精霊の蛾はウンモウスズメがモデルです、かっこいい虫を探していたらヒット、一目ぼれしました(笑)皆さんも見てみてくださいカッコよかったですよ。
そしてやっと光喜の地球帰還、変態もついてきましたが。
そしてカラクなんか空気になってしまいました。